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265.宴11

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 毒瓶を持つヴェルは、試しにとガイダロフを蹴り上げた。
避ける様子もなくその蹴りを受けて、涼しい顔をしていた。
逆、ヴェルが脚を抑えて痛がっていた。
「っあ、固いっ!こいつ、あの魔人並みだ」

ノルマンとグレームを叩きのめしたロジェが
ガイダロフの背中に向かってパワーシフトで
体当たりをかましたが、微動だにしなかった。

「ん?なんかしたか?お坊ちゃんは、何か試さなくていいのか?
何もしないなら、こちらから行くぞ」

防御魔術を前面に展開したが、ガイダロフは苦も無く破壊して、
大きく口を開けて叫びながら、誠一に突進してきた。
下りながら、エアパレットを連射し、
ガイダロフの両目と口に向けて放った。
突進の速度は少し落ち、誠一は躱すことができたが、
彼の両目は潰れる事無く、口内には何の傷跡もなかった。

「おまえ、いいな。その容赦なさ。いいな」

水だ、水でガイダロフの顔を覆って、窒息させるしかない。
シエンナほど水の魔術に長けてはいなかったが、
顔を覆うくらいのウォーターボールの魔術を展開することは
可能だった。

「ロジェさん、ヴェル。ガイダロフの動きを牽制してください」

「羽虫共がチョロチョロ纏わりつくな」
固い両腕を振り回し、ロジェとヴェルを追い払うガイダロフだった。

その隙に誠一は魔術を展開した。ガイダロフの頭部が水で覆われた。
ごぼごぼ、湖で溺れるように空気の泡が口から溢れて出ていた。
その状況に置いて尚、ガイダロフの目は誠一を捕らえて離さなかった。
この期に及んで一体何が出来るというのだろうか、
誠一には予想がつかなかった。
ゴクリ、ごくりと2度3度、ガイダロフの喉が鳴った。
そして、頭部を覆う水がみるみる減っていった。
飲み切れる訳ないと高を括っている誠一をよそに
水はみるみるうちに減っていった。

「ヴェル!」

「あいよ!」
阿吽の呼吸でヴェルが最大最速で動いた。
ガイダロフも誠一の意図に気づいたのだろう。
近づけさせまいと腕を振り、蹴りを繰り出した。
ロジェが上手くサポートすると、ついにヴェルは、
ガイダロフの攻撃を掻い潜り、頭部を覆う水に
毒瓶の中身である痒み薬をぶちまけた。
水に溶け込み体内に侵入する痒み薬。
瞬間、凄まじいくしゃみでガイダロフは、頭部を覆う水を
周囲に飛散させた。

誠一とキャロリーヌは、難を逃れたが、
不幸にも冒険者の幾人かとヴェルはその水がかかってしまった。

「ぐうあああーかゆいかゆい。があああ」
ガイダロフは、頭部全体と鼻孔と口から喉へ感じる痒みに
喉を掻きむしるが痒みは止まらない。

「痒い、痒い。水だ水!水をくれ」

「ううっ、痒い痒い」

幾人かの冒険者も痒みに苦しんでいた。
薬を洗い流そうにも水などあるはずもなく、
酒で洗い落としていた。
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