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256.宴2
しおりを挟む「違うって。荷物を運ぼうと思って。
おそらく部屋は余ってるからさ。場所を変えよう」
「嘘、嘘だ。あいつらも最初はそう言って、
啓示で動きを縛って無理やり。
嘘ばっかり!神の言葉なんて」
暴れるサリナを無理やり押さえつけた誠一だった。
するとサリナの目は死んだように光を失い、身体は脱力した。
「ここでやればいいでしょ。さっさと済ませて」
何も感じさせない瞳に逆に誠一は恐怖を感じてしまった。
サリナは誠一に背を向けるとカチャカチャと服を脱ぎ始めた。
誠一のまえに露わになった尻に身体が正直に反応してしまった。
理性が飛びそうになるのを懸命に抑えて、下着とズボンを引き上げた。
そして、無理やりだったが、彼女を振り向かせた。彼女は震えていた。
「さっさと荷物を引き払おう」
「怖い。あいつらの部屋に行くのは、怖いよう」
彼女の置かれていた状況を正確に理解した誠一だった。
「大丈夫。酒盛りに夢中で部屋には誰もいない。鍵は持ってる?」
「うん」
動こうとしない彼女の手を優しく握り、
歩き始めると、トボトボと彼女は誠一の後について来た。
部屋に向かう途中の大広間では、冒険者たちによって
大きな輪が出来ていた。
その中央では冒険者のパーティがやりあっているようだった。
周りを囲む冒険者たちは、酒の注がれたジョッキを
片手に好き放題に野次を飛ばしていた。
誠一は関りを避けるために素通りしようとしたが、
野次に交じって聞こえる名前に憶えがあるために
立ち止まってしまった。
「すみません、前を通して貰えませんか?」
人ごみを掻き分けて進む誠一の視界に輪の中央の状況が
目に入った。
片膝を床につき、右肩を脚で踏みつけられているロジェ。
片腕を握られて、今にも抱かれそうになっているキャロリーヌ。
その二人の姿を見た瞬間、誠一の理性が吹き飛び、
騒ぎに飛び込もうとしたが、腕を引っ張られた。
「あっあいつらよ。あなたじゃ、相手にならないわよ」
サリナに引き留められて、冷静さを取り戻した誠一であったが、
結局、やることは変らずに飛び出した。
「その手をキャロリーヌから離せ」
激しい語気を浴びせると同時にキャロリーヌの腕を
掴んでいる戦士に殴りかかった。
戦士は難なくその一撃を躱すと、逆に誠一の腹部へ
強烈な膝蹴りを加えた。
「ぐううっ」
その場で呻く誠一だった。呻く誠一の背にはサリナがいた。
「ちょっと、アル君。大丈夫?」
助けに割って入って、逆にキャロリーヌに心配される誠一だった。
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