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253.出陣3
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誠一は剣豪の方に目を向けると、いつの間にか嬉々として、
高価な魔石を有する魔物を屠っては、魔石をえぐり出していた。
そのあまりの手際の良さに一瞬、置かれた状況を忘れて、
感心してしまった。
「おい、アルって!アル!先生は放っておけよ。
遊ぶ金を集めるのに必死になっちゃっているから、
期待は出来ないぞ。
それより実力も人数も俺らより上のあいつらじゃ、
相手にならないよな。
かといってシエンナを差し出す訳にもいかないし」
ハルバートを構え、誠一と娘を守るように立つヴェルだった。
「当たり前でしょ!それに何なのよ。
あいつら、本当に神より啓示が降されたの?
あり得ないくらいの態度でしょ。
悪魔付きか何かの間違えに決まってるわ」
杖を構え、悪態をつくシエンナだった。
誠一は娘を地面に座らせた。
あまり使いたくない手ではあったが、
エスターライヒ家の名をもって、彼等に引いて貰うように
説得しようと思いを巡らせた。
「冗談だろ!やり合う気かよ。
その整ったお顔に傷がつくぜ。
女、置いてさっさと小物の魔石でも漁ってな」
淀み始めた空を誠一は見上げた。
プレーヤーが強力な魔術の記憶されたスクロールでも
送ってくれないか期待してしまった。
戦場で空を見上げる。
敵からしたら、間抜けな男にしか映らなかっただろう。
案の定、彼等の爆笑を誘っていた。
「アル。毎度、神様の慈悲を期待するのは甘いぞ」
ヴェルは覚悟を決めて、己に補助魔術をかけ始めた。
それを見た冒険者たちは、笑いを止めた。
「小僧、名は?」
「俺か!俺はヴェルナーエンゲルス。
エンゲルス家の三男だ。
おまえらに下げる頭は持ち合わせてないっ!」
冒険者たちはヴェルの家名を聞くとざわついた。
そして、リーダーと魔術師の男が囁きあっていた。
「おい、小僧。お前の名とそこの女の名前を言え」
名指しされた誠一は一瞬、戸惑ってしまった。
その隙にシエンナが答えた。
「シエンナ・モリス。
ヴェルトール王国魔術院中等部2年。この二人も同じよ」
またしても冒険者たちはシエンナの家名を聞くとざわついた。
「アルフレート・フォン・エスターライヒ。
エスターライヒ家の長子だ」
「おいおい。おまえの名は、さっきの騎士団の歓声で
連呼されてたじゃねーかよ。
それにさっきの貴族様の息子じゃねーか」
冒険者たちは誠一たち3人に手を出すことが
得策でないと判断したようだった。
「ちっ、おまえら家名に助けられたな。
いくぞ、そこそこのランクの魔物の魔石を集めるぞ」
誠一たちから離れると冒険者たちは、手頃な魔物を倒して、
剣豪と同じように魔石を漁り始めていた。
「助かったのかな」
誠一がぽつりと言うと、ヴェルが釈然としない表情で
ハルバートを振り回しながら、答えた。
「ああ!助かったさ。
情けないことに親兄弟の実績と名声によってな。
ダサ過ぎだろう」
そこら辺にいる魔犬にハルバートを
無作為に突き刺しては、「くそっ、くそう」
と連呼するヴェルだった。
「うーんうーん。実力不足ってことだけど、
釈然としないよね。
利用できるものは利用すべきだと思うけど、
何かこうすっきりない気分ね。
あーあー何かこう言うのって、かっこ悪いのかな」
心にかかったもやもやを振り払うように
魔術を手当たり次第に魔物に向けて放つシエンナだった。
高価な魔石を有する魔物を屠っては、魔石をえぐり出していた。
そのあまりの手際の良さに一瞬、置かれた状況を忘れて、
感心してしまった。
「おい、アルって!アル!先生は放っておけよ。
遊ぶ金を集めるのに必死になっちゃっているから、
期待は出来ないぞ。
それより実力も人数も俺らより上のあいつらじゃ、
相手にならないよな。
かといってシエンナを差し出す訳にもいかないし」
ハルバートを構え、誠一と娘を守るように立つヴェルだった。
「当たり前でしょ!それに何なのよ。
あいつら、本当に神より啓示が降されたの?
あり得ないくらいの態度でしょ。
悪魔付きか何かの間違えに決まってるわ」
杖を構え、悪態をつくシエンナだった。
誠一は娘を地面に座らせた。
あまり使いたくない手ではあったが、
エスターライヒ家の名をもって、彼等に引いて貰うように
説得しようと思いを巡らせた。
「冗談だろ!やり合う気かよ。
その整ったお顔に傷がつくぜ。
女、置いてさっさと小物の魔石でも漁ってな」
淀み始めた空を誠一は見上げた。
プレーヤーが強力な魔術の記憶されたスクロールでも
送ってくれないか期待してしまった。
戦場で空を見上げる。
敵からしたら、間抜けな男にしか映らなかっただろう。
案の定、彼等の爆笑を誘っていた。
「アル。毎度、神様の慈悲を期待するのは甘いぞ」
ヴェルは覚悟を決めて、己に補助魔術をかけ始めた。
それを見た冒険者たちは、笑いを止めた。
「小僧、名は?」
「俺か!俺はヴェルナーエンゲルス。
エンゲルス家の三男だ。
おまえらに下げる頭は持ち合わせてないっ!」
冒険者たちはヴェルの家名を聞くとざわついた。
そして、リーダーと魔術師の男が囁きあっていた。
「おい、小僧。お前の名とそこの女の名前を言え」
名指しされた誠一は一瞬、戸惑ってしまった。
その隙にシエンナが答えた。
「シエンナ・モリス。
ヴェルトール王国魔術院中等部2年。この二人も同じよ」
またしても冒険者たちはシエンナの家名を聞くとざわついた。
「アルフレート・フォン・エスターライヒ。
エスターライヒ家の長子だ」
「おいおい。おまえの名は、さっきの騎士団の歓声で
連呼されてたじゃねーかよ。
それにさっきの貴族様の息子じゃねーか」
冒険者たちは誠一たち3人に手を出すことが
得策でないと判断したようだった。
「ちっ、おまえら家名に助けられたな。
いくぞ、そこそこのランクの魔物の魔石を集めるぞ」
誠一たちから離れると冒険者たちは、手頃な魔物を倒して、
剣豪と同じように魔石を漁り始めていた。
「助かったのかな」
誠一がぽつりと言うと、ヴェルが釈然としない表情で
ハルバートを振り回しながら、答えた。
「ああ!助かったさ。
情けないことに親兄弟の実績と名声によってな。
ダサ過ぎだろう」
そこら辺にいる魔犬にハルバートを
無作為に突き刺しては、「くそっ、くそう」
と連呼するヴェルだった。
「うーんうーん。実力不足ってことだけど、
釈然としないよね。
利用できるものは利用すべきだと思うけど、
何かこうすっきりない気分ね。
あーあー何かこう言うのって、かっこ悪いのかな」
心にかかったもやもやを振り払うように
魔術を手当たり次第に魔物に向けて放つシエンナだった。
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