上 下
216 / 846

218.輜重隊出征7

しおりを挟む
「魔物だ、来たぞ。距離が近い。
魔術師、補助魔術のサポートに切り替えろ。
盾を構えて、敵の勢いを削げ」
カリバーは、突撃するより
受けて立つことを選択した。
しかし、最前線は、魔物の勢いを
押し返すことが出来ずにそのまま、
乱戦となってしまった。

最前線の本職の騎士隊は、騎士見習いの学生たちを
サポートするどころの話では無かった。
既に見習い騎士たちも乱戦の中で戦っていた。
カリバーは、彼等の状況を気にはしていたが、
どうすることもできなかった。
戦死者でも出ようものなら、遺族から
どのような嫌がらせを受けるか、
戦場真っ只中にも関わらず、カリバーは
憂鬱になってしまった。

「うおおおっーアル。チャンスだ!
ここで一発かませば。
一番槍の功を超えるぞ。
行くぞ、フレイムチャージ」

「待て!それは魔術師の職分じゃないって!
命令違反になるから、ヴェル、落ち着いて」
ヴェルの暴走を何とか止めようと尽力したが、
その努力をあざ笑うかのように槍を模したような炎の塊が
魔物の群れに向かって突撃した。

「くそっ。無茶ぶりだ。エアチャージー」
誠一は叫び、ヴェルの後に続いた。
魔物は数だけは多かったが、難敵はいないように見えた。
しかし、流石に一人で敵陣奥深くに突っ込めば、
何か不測の事態が起こるかもしれない。
そう思い、急ぎ、ヴェルの後を追った。

 ヴェルの技は、魔物の群れを更に混乱に陥れた。
元々、後方の炎に加えて、前方から迫りくる炎の塊が
無秩序な状況に更に拍車をかけた。

魔物の群れの中央付近で、
ハルバートを振り回し、
魔物をなぎ倒すヴェルであった。

「うおおおぅー経験の稼ぎ時じゃー。
アル、背中は預けた」

「ヴェル、それは前に聞いたし、
シエンナにまた、突っ込まれるぞ。
新ネタを頼む」
追い付いた誠一は、シエンナが
いないために代わりに突っ込んだ。

「うるへーこれしか知らないんだよ。
とにかくアル、頼んだ」
そんな話をしつつもメイスを両手で掴み
手当たり次第に魔物を叩き潰す誠一だった。

この二人の光景を遠目から騎士たちは目撃していた。
「魔術師見習いどもに後れを取るな、行くぞおー」

「くそがぁ、勝手なことしやがって。
ここからが騎士団の本領発揮だ」

「雑魚を倒して、調子にのってる奴らに
本職の力を見せてやれ」

どうやら、士気は大いにあがってるようであったが、
カリバーは二人の魔術師が気味悪かった。
ありえない、あの歳でこれほど生物を
殺し慣れているなどありえない。
自分に置き換えてみれば、あのくらいの頃は、
ゴブリン一匹ですら、苦戦していたし、
魔物をコロスことを忌避することはなかったが、
躊躇はしていた。
普通の家庭に育てば、それが当たり前であった。

日常生活の一部の様に当たりに切り刻み、
叩き潰す二人がカリバーの眼には異常に映っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた
ファンタジー
 起きると、そこは森の中。パニックになって、 周りを見渡すと暗くてなんも見えない。  特殊能力も付与されず、原生林でどうするの。 誰か助けて。 遠くから、獣の遠吠えが聞こえてくる。 これって、やばいんじゃない。

引きこもりが乙女ゲームに転生したら

おもち
ファンタジー
小中学校で信頼していた人々に裏切られ すっかり引きこもりになってしまった 女子高生マナ ある日目が覚めると大好きだった乙女ゲームの世界に転生していて⁉︎ 心機一転「こんどこそ明るい人生を!」と意気込むものの‥ 転生したキャラが思いもよらぬ人物で-- 「前世であったことに比べればなんとかなる!」前世で培った強すぎるメンタルで 男装して乙女ゲームの物語無視して突き進む これは人を信じることを諦めた少女 の突飛な行動でまわりを巻き込み愛されていく物語

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

処理中です...