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199.選択肢2

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レドリアンは、言うべきことは言ったのだろう。
降壇して、席に腰を下ろした。

新たに講師が登壇し、レドリアンの後を引き継いだ。
「今、レドリアン導師が仰せられたように
君たちは、名誉ある故国の守護者の1人として、
北伐に出征して貰う。
勿論、乱が鎮圧された暁には、
学院に戻って魔術の研鑽を続けるのもの良し、
王国で然るべきポジションにつくのも良し。
ヴェルトール王国は、君たちが戦場で
大いに活躍することを期待する」
壇上の講師は、拳を振り上げ、
声高からかに景気の良いことを捲し立てていた。
高等部の幾人かの学生は、非常に厳しい表情で
眉間に皺を寄せていた。
幾人かの学生は、煽られたのか、
上気した表情で大きく頷いていた。
壇上から聞こえる景気の良い話は続いていたが、
誠一は、床を見つめながら、物思いに耽っていた。

「殺せるのか、人を。
いや、その前に人を容赦なく殴りつけられるのか」
誠一の独り言であった。
左隣では、シエンナの表情が強張っていた。
右隣のヴェルも同様であった。
よく見れば、盛り上がっている連中の表情も
どことなく強張っていた。
無理をして、勇んでいるようにもとれなくはなかった。

 幾人かの講師からの事務的な通達が終わると、
解散となった。
学院長ファウスティノは、一度も瞳を開かず、
一度も話をしなかった。
高等部の学生の一部は、大講堂を出る際に
侮蔑の視線を学院長に送っていた。
そして、聞こえよがしに学院長を非難していた。

「国の走狗に成り下がりやがって」

「権力者に一生、媚びてろ」

「何が在野の最強魔術師だ!賢者の出来損ないが」

優秀な成績を収めている学生ほど、
ファウスティノへの失望とも愚痴とも
言える言葉を投げつけて、大講堂を後にしていた。

 最後の1人が退室するまで、
ファウスティノの態度は変わることはなかった。

誠一たちは中等部2年の講義室に戻り、
出征についての資料を受け取り、
再度、説明を受けていた。
普段は、静かな講義室であったが、
今日は、至る所でざわめきが起きていた。
講師はそれを咎めることも無く、
淡々と説明を進めていた。

「アル、これって、拒否権なしだよね」
誠一の袖をひっぱるシエンナだった。

「そうだね。拒否すれば、
まあ、どうなるんだろうね。何とも言えない」

「アル、おまえ、大丈夫なのかよ。
正直、魔物を殺すのとは話が違うぞ」
ヴェルの声は上擦っていた。

誠一にはヴェルの言わんとしていることが
理解できた。
テルトリアでは、ロジェやキャロリーヌが
上手く対応していたことと実力差から、
人を殺すようなことには至らなかったが、
戦場ではそのようにはいかないことは
分かりきっていた。

 突きつけられた命題に誠一は自然、
拳を握っていた。
握った拳は少し汗をかいていた。
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