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189.中等部昇格試験10

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誠一は、プレーヤーと他愛のない会話を続けていた。
アイテムは有難かったが、それ以上にプレーヤーと
親密になることを心がけていた。
プレーヤーから、外の世界の情報が欲しかったが、
誠一は慎重に慎重を重ねていた。
最近はおかしなことを言わなくなったが、
最初の頃の鬼畜な指示を考えれば、
心の底から、信用すべきでないと考えていた。
いつ、裏切られるかわかったものではなかった。

 ありきたりな会話に終始して、
最後にプレーヤーからの励ましをうけて、
会話を終了した。

「アル、アル!それで、神様は何と?」
シエンナは、真摯な表情で誠一を見つめていた。

「気を付けて攻略を進めてくださいとのことです。
まあ、シーフがいないので、みんなのことを
心配していました」

「アル、本当にお前の神は、俺たちのことを
思ってくれてるよな」
ヴェルが再度、一礼していた。

「よしっ!神のお言葉も頂きましたし、
攻略、がんばりますか!」
シエンナが気合を入れ直した。

「神も見守っているんだな、アル」
ラムデールは淡々としているが、力強い目で洞窟の奥を
睨みつけていた。

「おっ俺のことは何か言っていなかったか?」
ファブリッツィオは気にしない風を装おうとして、
失敗していた。

誠一は、ファブリッツィオの挙動を見て、
改めて、この世界における神の啓示の重要さを感じていた。

 適当なことを言えば、ファブリッツィオが
意気消沈してしまい、戦力にならないと思い、
多少の脚色を加えて伝えた。
「イケメンが増えたとお喜びだった。
今後も仲間を助けよ・頼れとのことだった」

「おおっ、神よ。我が働きをご覧ください」
ファブリッツィオは、感動して、
右腕を胸の前で直角にして右拳を心臓部に当てて、
敬礼をした。

主に魂を捧げる。

そんな意味を込めているヴェルトール王国の
騎士たる者の敬礼だった。

顔をあげると、ファブリッツィオが洞窟内に
己が意思を響き渡せた。
「おおおっー神よ、神よ!
我が騎士道をしかとご覧ください」

ヴェルも何故か負けじと吠えた。
「ぬおおおっー俺だって、アルを仲間を助け続ける」

言い終えたヴェルは、ラムデールを見た。
「くそおう、こういうのは苦手なんだよ。
アルフレート、お前の目的に付き合ってやる」

シエンナが珍しく慌てていた。
今の雰囲気を読めないほど、愚鈍ではなかった。
「ったくもー。洞窟攻略中なのに!
アル、あなたの宿願に力を貸すわ。
それは私の願いと同じこと。
そして、賢者になるっ」

4人は、誠一の方に顔を向けた。

なっなんだ、一体、こののりは一体なんだ。
啓示というか他愛ないプレーヤーとの
会話とアイテムの授与からおかしな方向に
向かってしまった。
プレーヤーの言葉の重みを左程に
考えていない誠一は混乱してしまった。
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