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188.中等部昇格試験9

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「みんな、一旦、後方へ引く。
おそらくあの一匹目のオークは
冒険者をここへ釣り出すか、
ここに釘付けにするための餌だったんだ。
先頭は、ヴェル。
最後尾は、ラムデール。
急いで、みんな」
誠一は、素早く指示を出すが、
指示されることにあまり慣れていない
ファブリッツィオだけ反応が遅れた。

「ファブリッツィオおおおぉー。
さっさとヴェルに続けやぁー」
シエンナの絶叫に4人が一瞬、固まったが、
次の瞬間、4人は人形のように動き始めた。
 
 断続的に現れるオークのために
倒しても解体作業が一向に進まないアルたちであった。

「こりゃあ、結構、難儀するな」
ヴェルが一息ついて、周囲を見渡した。

「ああ、これでは解体作業に
集中できそうにないな、どうするんだ、アル?」
ラムデールが周囲を警戒しながら、
誠一に意見を求めた。

さて、どうしたものかと思案するが、
特に妙案も浮かばず、洞窟で上を見上げた。
するとその誠一の行動へ
合わせたかのように突然、回復薬、毒消し草、
そして松明が彼の頭上に落ちて来た。

「わっわわあぁ」
誠一の驚きの声に他の4人は、
一斉に誠一の方を振り向いた。

「おい、アルフレート。
貴様は一体、何を考えているんだ。
ここは洞窟だぞ。
アイテムを放り出してどうする!」
誠一がアイテムを放り出したと思い、
ファブリッツィオは、呆れていた。

「おおっ、これは。
アル、神様からの贈り物か!
相変わらず、愛されているな」
ヴェルは、神へのお礼のつもりか、
頭を下げた。

「アル、さっさとしまえ。
神からの贈り物を粗末に扱うな」
ラムデールは、アイテムに向かって
黙礼をすると、集め始めた。

シエンナ、膝を折り、神に向かって、
真摯な表情で祈り始めた。

誠一は上の方を見上げていた。

全く彼らの行動が理解できずに
ファブリッツィオは、彼等に胡散臭い視線を
送っていた。

「おい、これはどういうことだ!」
一人理解できぬことへ苛立ちを感じて、
声を荒げるファブリッツィオ。
思いの他、上擦った声が洞窟に響いた。

「啓示をアルが受けているんだ。静かにしろ」
ヴェルが鋭い視線でファブリッツィオを睨みつけた。

ファブリッツィオとヴェルの声に呼応したように
オークの一団が洞窟の奥より現れた。
現れた瞬間、大量の氷塊によって、
ぐちゃぐちゃの肉塊となっていた。

祈りを妨げられたシエンナの激怒に触れて、
オークの一団は、一瞬で死骸と化していた。
「この下種共が!アルの神との対話を妨げやがって」
シエンナの普段の言葉遣いからは、
考えられないような言葉遣いであった。

その傍で、誠一は少し顎を上げて、瞳を閉じていた。
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