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179.悩み事5
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ヴェルとシエンナは顔を見合わせた。
そして、お互いの思いは同じであった。
これは失敗だなと。
「怪し過ぎる。あんなのアルじゃねー」
そう評するヴぇるであったが、
ファブリッツィオの表情は真剣そのものであった。
「あーあーまったく、おぼっちゃんは、
どうやら詐欺師の話術にああやって、
ころっと引っ掛かるんだね」
呆れるシエンナであったが、
あれほど犬猿の仲であった二人が真剣に
話し合っていた。
主に誠一が語り、虚ろな表情のファブリッツィオが
頷いていた。
突然、ひょっこりと剣豪が講堂に現れた。
「いやはや、アルフレート様にあのような民衆を
扇動できる才能がおありだとは。
いや、あれは、詐欺師かな」
物騒なことをにやにやとしながら、
シエンナとヴェルに話かけた。
「先生、あれでいいんですか?」
シエンナが問い詰めた。
「最終的にチームに加入して貰えば、
お互いに得るところは多いでしょう。
うーん、まさかの展開ですわ」
剣豪は二人に近づき、話に加わったようだった。
二人は会話を止めて、剣豪の話に耳を傾けていた。
虚ろな目をしていたファブリッツィオは、
狐につままれたような表情で頷いていた。
どうやら話は纏まったようだった。
「おい、そこの二人。
俺もチームに加入することにした。
足を引っ張るなよ」
そう言い残し、ファブリッツィオは、講堂を後にした。
何となく釈然としない二人だったが、
剣豪の与えた餌について、聞くと納得した。
どうやら、剣豪は、リシェーヌの行方に
関する情報を一部、提供したようだった。
ダンブルを中心とする反乱勢力による北方戦役に
おけるリシェーヌの情報のようであった。
決して誠一の甘言に乗せられた訳では
なかったようだった。
ヴェルとシエンナは剣豪の話を
真に受けているようで、自分たちにも
その情報を教える様に迫っていた。
誠一は剣豪が自然体であれほどの嘘を
並べられることに驚いていた。
詐欺師の才とは、こういう事を
言うんだなと納得していた。
剣豪が去ると、ヴェルは、誠一に
ファブリッツィオの加入について質問した。
「おそらくですが、幾つか理由があります。
まずは、門地、人脈、情報、そして資金。
それに前線での壁役でしょうかね」
誠一の話の後半から表情が険しくなるヴェルであった。
魔道槍兵としての称号を持つ男として、
最前線での己の働き不足を指摘されたと思ったのだろう。
誠一は言葉を足した。
「魔道槍兵は、最前線での貫通力がその真骨頂だろ。
前線での突貫力という点では、今後もヴェルに
期待しているさ。
しかし、前線の維持と言った防衛面には
不向きな称号だろ。
無論、ヴェルが逃げない男なのは
知っているけどさ。能力と性格は別だよ」
「それなら、ラムデールがいるだろ。
それでいいじゃん」
納得しているようなしていないようなヴェルが
誠一に反論した。
「あのねぇ、先生は戦力を増やそうとしてるんでしょ。
おそらく、アルの将来に布石を打っているんでしょうね。
伯爵家は絶対に継げないし、クランでも
立ち上げさせるつもりじゃないの」
シエンナが議論に飽きたとばかりに
遠い将来の話を始めて、ヴェルを煙に巻こうとした。
そして、その話に乗っかってしまうヴェルであった。
「そっそうか!先生はそのクランの顧問の位置で
給金を巻き上げる気だな。納得だな、アル!」
シエンナはどうしてそうなるかなという
感じで肩を落として歩き始めた。
最上級の迷宮や遺跡の攻略は、
チームでは不可能であった。
クランを立ち上げ、挑まねば到底、
不可能なことであった。
果たしてそこまで見越して、剣豪が動いているのか、
今の誠一には分からなかった。
そして、お互いの思いは同じであった。
これは失敗だなと。
「怪し過ぎる。あんなのアルじゃねー」
そう評するヴぇるであったが、
ファブリッツィオの表情は真剣そのものであった。
「あーあーまったく、おぼっちゃんは、
どうやら詐欺師の話術にああやって、
ころっと引っ掛かるんだね」
呆れるシエンナであったが、
あれほど犬猿の仲であった二人が真剣に
話し合っていた。
主に誠一が語り、虚ろな表情のファブリッツィオが
頷いていた。
突然、ひょっこりと剣豪が講堂に現れた。
「いやはや、アルフレート様にあのような民衆を
扇動できる才能がおありだとは。
いや、あれは、詐欺師かな」
物騒なことをにやにやとしながら、
シエンナとヴェルに話かけた。
「先生、あれでいいんですか?」
シエンナが問い詰めた。
「最終的にチームに加入して貰えば、
お互いに得るところは多いでしょう。
うーん、まさかの展開ですわ」
剣豪は二人に近づき、話に加わったようだった。
二人は会話を止めて、剣豪の話に耳を傾けていた。
虚ろな目をしていたファブリッツィオは、
狐につままれたような表情で頷いていた。
どうやら話は纏まったようだった。
「おい、そこの二人。
俺もチームに加入することにした。
足を引っ張るなよ」
そう言い残し、ファブリッツィオは、講堂を後にした。
何となく釈然としない二人だったが、
剣豪の与えた餌について、聞くと納得した。
どうやら、剣豪は、リシェーヌの行方に
関する情報を一部、提供したようだった。
ダンブルを中心とする反乱勢力による北方戦役に
おけるリシェーヌの情報のようであった。
決して誠一の甘言に乗せられた訳では
なかったようだった。
ヴェルとシエンナは剣豪の話を
真に受けているようで、自分たちにも
その情報を教える様に迫っていた。
誠一は剣豪が自然体であれほどの嘘を
並べられることに驚いていた。
詐欺師の才とは、こういう事を
言うんだなと納得していた。
剣豪が去ると、ヴェルは、誠一に
ファブリッツィオの加入について質問した。
「おそらくですが、幾つか理由があります。
まずは、門地、人脈、情報、そして資金。
それに前線での壁役でしょうかね」
誠一の話の後半から表情が険しくなるヴェルであった。
魔道槍兵としての称号を持つ男として、
最前線での己の働き不足を指摘されたと思ったのだろう。
誠一は言葉を足した。
「魔道槍兵は、最前線での貫通力がその真骨頂だろ。
前線での突貫力という点では、今後もヴェルに
期待しているさ。
しかし、前線の維持と言った防衛面には
不向きな称号だろ。
無論、ヴェルが逃げない男なのは
知っているけどさ。能力と性格は別だよ」
「それなら、ラムデールがいるだろ。
それでいいじゃん」
納得しているようなしていないようなヴェルが
誠一に反論した。
「あのねぇ、先生は戦力を増やそうとしてるんでしょ。
おそらく、アルの将来に布石を打っているんでしょうね。
伯爵家は絶対に継げないし、クランでも
立ち上げさせるつもりじゃないの」
シエンナが議論に飽きたとばかりに
遠い将来の話を始めて、ヴェルを煙に巻こうとした。
そして、その話に乗っかってしまうヴェルであった。
「そっそうか!先生はそのクランの顧問の位置で
給金を巻き上げる気だな。納得だな、アル!」
シエンナはどうしてそうなるかなという
感じで肩を落として歩き始めた。
最上級の迷宮や遺跡の攻略は、
チームでは不可能であった。
クランを立ち上げ、挑まねば到底、
不可能なことであった。
果たしてそこまで見越して、剣豪が動いているのか、
今の誠一には分からなかった。
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