164 / 901
164.色褪せぬ思い3
しおりを挟む
「その際はよろしくお願いいたします。
ところで、何故、先生は魔術院にいらしているのですか?」
誠一もあまり直前の件には触れたくないために
話題を転じた。
「ファウスティノとは昔からの顔見知りなので、
仕事を斡旋して貰ったのですよ。
騎士養成学校にも口を聞いて貰って、
仕事を斡旋して貰う予定です。
あなたとラムデールを学院でも鍛えようと思いましてね。
その上、給与が貰えるという。副業のようなものです」
にんまりとする剣豪であった。
テルトリアでの夜の街での豪遊の噂は
誠一も聞き及んでいた。
王都でも遊ぶ金欲しさに色々と動いているのだろう。
所詮は冒険者、S級であろうと、
依頼をこなさねば、金を得ることは出来ない。
月給、日給が保証されている訳ではなかった。
「ふーむ、アルフレート様は、面白い。
まっこと、面白い。
まっとうな貴族、否、平民であっても中々、
あのようなことは、できることではござらぬ。
この恋路の事の顚末まで見届けたくなりますな」
ふと、誠一はそれなりに長く生きているだろう剣豪に
神々の寵愛を受けし者たちについて質問した。
「むっその件をここで尋ねますか。
正直、胡散臭いと思っております。
このようなことを言ったことが広がれば、
とんでもないことになるのは自明の理ですので
内緒にてお願いします。
大きく分けて、二通りの者たちに
大別されると思っております。
分かりやすく言うと、ファウスティノや
フリッツのような者と
アルフレート様のような者です。
アルフレート様のような方にも
いままで何度かお目にかかったことがあります」
剣豪の話によると、天啓を受ける前は、
どの人物もアルフレートのように
品行方正、明朗活発で絵に描いたように
優秀であったようだった。
しかし、剣豪に言わせると人として
軽いというより、ひととなりがどれも
同じに思えて、気味が悪かったようだった。
何かの契機に様変わりしたように
人格が一変し、大半は意味の分からない言葉を
吐き続けて、闇に落ちる様だった。
「それはあたかも魂を持たぬ人形の器に
魂が宿ったようでござる。
アルフレート様、あなたにもそう感じます」
大半の話は、ファウスティノと同じであった。
恐らく自分のような転生者を受けいれるための
器が用意されているのだろう。
そして、転生者がこちらの世界で
いきなり路頭に迷わないために
知識として知ることができるように
器にこの世界の理を学ばせているのだと推測した。
プレイヤーが操作するためのキャラクターは、
この世界の住民となった転生者と
元々の世界の住人を引き当てるような仕組みに
なっているのだろう。
何となくこのゲームの世界のありようが
理解できたような気がした。
「聡いアルフレート様なら、
既に疑問に感じていると思いますが、
我々が探索できるエリアが年々、
広がっています。
偉大なる魔導士が世界を守るために
構築したとされる城壁が次第に消えています。
作為的なのか恣意的なのかはわりませぬが、
世界は私が子供の頃に教わった時より
遥かに広い」
剣豪の言葉は、おそらくゲームで言うところの
新エリアの開放を意味しているのだろう。
一体、どのくらいのエリアが用意されているか
想像もつかなかった。
それと異世界なのかVRの世界なのかいまだに
判断つかなかったが、仮にVRだとしたら、
誠一にとって最悪であった。
ゲームの提供は永遠ではない。
過疎化して、収益が見込めなくなったら、
即サービス停止でこの世界は消去されるだろう。
そのとき、誠一も抹消されて、
その存在が完全に消え去るはずだった。
それは明日かもしれないし、1年後かもしれない。
なんの前触れもなくやってくるものであった。
既に自分がプレイをしていた時、過疎化気味であった。
リシェーヌを助けるにしろ、この世界を抜け出すにしろ、
あまりのんびりとしていられないと思った。
剣豪を前にして、色々と面白くないことを
想像してしまい、表情に出ていたのだろう。
「むっ、いかがなされたのですか?」
「いや、ちょっと考え事です。
それよりそろそろ、戻りませんか?」
誠一の提案に剣豪も賛成し、
転送陣の方へ二人は向かった。
歩きながら、変態行為に興じてしまったが、
迷宮攻略のための強力な協力者を得ることが
できたと思うと悪くないと自分の行為に納得した。
クリスタルの森には二人の足音だけが響いていた。
その響きはここへ残る者の心に寂しく響いたであろう。
彼らが転送陣でこの地を去ると、
静寂が生ある者の心を蝕んだ。
ところで、何故、先生は魔術院にいらしているのですか?」
誠一もあまり直前の件には触れたくないために
話題を転じた。
「ファウスティノとは昔からの顔見知りなので、
仕事を斡旋して貰ったのですよ。
騎士養成学校にも口を聞いて貰って、
仕事を斡旋して貰う予定です。
あなたとラムデールを学院でも鍛えようと思いましてね。
その上、給与が貰えるという。副業のようなものです」
にんまりとする剣豪であった。
テルトリアでの夜の街での豪遊の噂は
誠一も聞き及んでいた。
王都でも遊ぶ金欲しさに色々と動いているのだろう。
所詮は冒険者、S級であろうと、
依頼をこなさねば、金を得ることは出来ない。
月給、日給が保証されている訳ではなかった。
「ふーむ、アルフレート様は、面白い。
まっこと、面白い。
まっとうな貴族、否、平民であっても中々、
あのようなことは、できることではござらぬ。
この恋路の事の顚末まで見届けたくなりますな」
ふと、誠一はそれなりに長く生きているだろう剣豪に
神々の寵愛を受けし者たちについて質問した。
「むっその件をここで尋ねますか。
正直、胡散臭いと思っております。
このようなことを言ったことが広がれば、
とんでもないことになるのは自明の理ですので
内緒にてお願いします。
大きく分けて、二通りの者たちに
大別されると思っております。
分かりやすく言うと、ファウスティノや
フリッツのような者と
アルフレート様のような者です。
アルフレート様のような方にも
いままで何度かお目にかかったことがあります」
剣豪の話によると、天啓を受ける前は、
どの人物もアルフレートのように
品行方正、明朗活発で絵に描いたように
優秀であったようだった。
しかし、剣豪に言わせると人として
軽いというより、ひととなりがどれも
同じに思えて、気味が悪かったようだった。
何かの契機に様変わりしたように
人格が一変し、大半は意味の分からない言葉を
吐き続けて、闇に落ちる様だった。
「それはあたかも魂を持たぬ人形の器に
魂が宿ったようでござる。
アルフレート様、あなたにもそう感じます」
大半の話は、ファウスティノと同じであった。
恐らく自分のような転生者を受けいれるための
器が用意されているのだろう。
そして、転生者がこちらの世界で
いきなり路頭に迷わないために
知識として知ることができるように
器にこの世界の理を学ばせているのだと推測した。
プレイヤーが操作するためのキャラクターは、
この世界の住民となった転生者と
元々の世界の住人を引き当てるような仕組みに
なっているのだろう。
何となくこのゲームの世界のありようが
理解できたような気がした。
「聡いアルフレート様なら、
既に疑問に感じていると思いますが、
我々が探索できるエリアが年々、
広がっています。
偉大なる魔導士が世界を守るために
構築したとされる城壁が次第に消えています。
作為的なのか恣意的なのかはわりませぬが、
世界は私が子供の頃に教わった時より
遥かに広い」
剣豪の言葉は、おそらくゲームで言うところの
新エリアの開放を意味しているのだろう。
一体、どのくらいのエリアが用意されているか
想像もつかなかった。
それと異世界なのかVRの世界なのかいまだに
判断つかなかったが、仮にVRだとしたら、
誠一にとって最悪であった。
ゲームの提供は永遠ではない。
過疎化して、収益が見込めなくなったら、
即サービス停止でこの世界は消去されるだろう。
そのとき、誠一も抹消されて、
その存在が完全に消え去るはずだった。
それは明日かもしれないし、1年後かもしれない。
なんの前触れもなくやってくるものであった。
既に自分がプレイをしていた時、過疎化気味であった。
リシェーヌを助けるにしろ、この世界を抜け出すにしろ、
あまりのんびりとしていられないと思った。
剣豪を前にして、色々と面白くないことを
想像してしまい、表情に出ていたのだろう。
「むっ、いかがなされたのですか?」
「いや、ちょっと考え事です。
それよりそろそろ、戻りませんか?」
誠一の提案に剣豪も賛成し、
転送陣の方へ二人は向かった。
歩きながら、変態行為に興じてしまったが、
迷宮攻略のための強力な協力者を得ることが
できたと思うと悪くないと自分の行為に納得した。
クリスタルの森には二人の足音だけが響いていた。
その響きはここへ残る者の心に寂しく響いたであろう。
彼らが転送陣でこの地を去ると、
静寂が生ある者の心を蝕んだ。
0
お気に入りに追加
164
あなたにおすすめの小説

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

Retry 異世界生活記
ダース
ファンタジー
突然異世界に転生してしまった男の物語。
とある鉄工所で働いていた佐藤宗則。
しかし、弱小企業であった会社は年々業績が悪化。
ある日宗則が出社したら、会社をたたむと社長が宣言。
途方に暮れた宗則は手持ちのお金でビールと少しのつまみを買い家に帰るが、何者かに殺されてしまう。
・・・その後目覚めるとなんと異世界!?
新たな生を受けたその先にはどんなことが!?
ほのぼの異世界ファンタジーを目指します。
ぬるぬる進めます。
だんだんと成長するような感じです。
モフモフお付き合いおねがいします。
主人公は普通からスタートするのでゆっくり進行です。
大きな内容修正や投稿ペースの変動などがある場合は近況ボードに投稿しています。
よろしくお願いします。

妹と歩く、異世界探訪記
東郷 珠
ファンタジー
ひょんなことから異世界を訪れた兄妹。
そんな兄妹を、数々の難題が襲う。
旅の中で増えていく仲間達。
戦い続ける兄妹は、世界を、仲間を守る事が出来るのか。
天才だけど何処か抜けてる、兄が大好きな妹ペスカ。
「お兄ちゃんを傷つけるやつは、私が絶対許さない!」
妹が大好きで、超過保護な兄冬也。
「兄ちゃんに任せろ。お前は絶対に俺が守るからな!」
どんなトラブルも、兄妹の力で乗り越えていく!
兄妹の愛溢れる冒険記がはじまる。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる