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164.色褪せぬ思い3
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「その際はよろしくお願いいたします。
ところで、何故、先生は魔術院にいらしているのですか?」
誠一もあまり直前の件には触れたくないために
話題を転じた。
「ファウスティノとは昔からの顔見知りなので、
仕事を斡旋して貰ったのですよ。
騎士養成学校にも口を聞いて貰って、
仕事を斡旋して貰う予定です。
あなたとラムデールを学院でも鍛えようと思いましてね。
その上、給与が貰えるという。副業のようなものです」
にんまりとする剣豪であった。
テルトリアでの夜の街での豪遊の噂は
誠一も聞き及んでいた。
王都でも遊ぶ金欲しさに色々と動いているのだろう。
所詮は冒険者、S級であろうと、
依頼をこなさねば、金を得ることは出来ない。
月給、日給が保証されている訳ではなかった。
「ふーむ、アルフレート様は、面白い。
まっこと、面白い。
まっとうな貴族、否、平民であっても中々、
あのようなことは、できることではござらぬ。
この恋路の事の顚末まで見届けたくなりますな」
ふと、誠一はそれなりに長く生きているだろう剣豪に
神々の寵愛を受けし者たちについて質問した。
「むっその件をここで尋ねますか。
正直、胡散臭いと思っております。
このようなことを言ったことが広がれば、
とんでもないことになるのは自明の理ですので
内緒にてお願いします。
大きく分けて、二通りの者たちに
大別されると思っております。
分かりやすく言うと、ファウスティノや
フリッツのような者と
アルフレート様のような者です。
アルフレート様のような方にも
いままで何度かお目にかかったことがあります」
剣豪の話によると、天啓を受ける前は、
どの人物もアルフレートのように
品行方正、明朗活発で絵に描いたように
優秀であったようだった。
しかし、剣豪に言わせると人として
軽いというより、ひととなりがどれも
同じに思えて、気味が悪かったようだった。
何かの契機に様変わりしたように
人格が一変し、大半は意味の分からない言葉を
吐き続けて、闇に落ちる様だった。
「それはあたかも魂を持たぬ人形の器に
魂が宿ったようでござる。
アルフレート様、あなたにもそう感じます」
大半の話は、ファウスティノと同じであった。
恐らく自分のような転生者を受けいれるための
器が用意されているのだろう。
そして、転生者がこちらの世界で
いきなり路頭に迷わないために
知識として知ることができるように
器にこの世界の理を学ばせているのだと推測した。
プレイヤーが操作するためのキャラクターは、
この世界の住民となった転生者と
元々の世界の住人を引き当てるような仕組みに
なっているのだろう。
何となくこのゲームの世界のありようが
理解できたような気がした。
「聡いアルフレート様なら、
既に疑問に感じていると思いますが、
我々が探索できるエリアが年々、
広がっています。
偉大なる魔導士が世界を守るために
構築したとされる城壁が次第に消えています。
作為的なのか恣意的なのかはわりませぬが、
世界は私が子供の頃に教わった時より
遥かに広い」
剣豪の言葉は、おそらくゲームで言うところの
新エリアの開放を意味しているのだろう。
一体、どのくらいのエリアが用意されているか
想像もつかなかった。
それと異世界なのかVRの世界なのかいまだに
判断つかなかったが、仮にVRだとしたら、
誠一にとって最悪であった。
ゲームの提供は永遠ではない。
過疎化して、収益が見込めなくなったら、
即サービス停止でこの世界は消去されるだろう。
そのとき、誠一も抹消されて、
その存在が完全に消え去るはずだった。
それは明日かもしれないし、1年後かもしれない。
なんの前触れもなくやってくるものであった。
既に自分がプレイをしていた時、過疎化気味であった。
リシェーヌを助けるにしろ、この世界を抜け出すにしろ、
あまりのんびりとしていられないと思った。
剣豪を前にして、色々と面白くないことを
想像してしまい、表情に出ていたのだろう。
「むっ、いかがなされたのですか?」
「いや、ちょっと考え事です。
それよりそろそろ、戻りませんか?」
誠一の提案に剣豪も賛成し、
転送陣の方へ二人は向かった。
歩きながら、変態行為に興じてしまったが、
迷宮攻略のための強力な協力者を得ることが
できたと思うと悪くないと自分の行為に納得した。
クリスタルの森には二人の足音だけが響いていた。
その響きはここへ残る者の心に寂しく響いたであろう。
彼らが転送陣でこの地を去ると、
静寂が生ある者の心を蝕んだ。
ところで、何故、先生は魔術院にいらしているのですか?」
誠一もあまり直前の件には触れたくないために
話題を転じた。
「ファウスティノとは昔からの顔見知りなので、
仕事を斡旋して貰ったのですよ。
騎士養成学校にも口を聞いて貰って、
仕事を斡旋して貰う予定です。
あなたとラムデールを学院でも鍛えようと思いましてね。
その上、給与が貰えるという。副業のようなものです」
にんまりとする剣豪であった。
テルトリアでの夜の街での豪遊の噂は
誠一も聞き及んでいた。
王都でも遊ぶ金欲しさに色々と動いているのだろう。
所詮は冒険者、S級であろうと、
依頼をこなさねば、金を得ることは出来ない。
月給、日給が保証されている訳ではなかった。
「ふーむ、アルフレート様は、面白い。
まっこと、面白い。
まっとうな貴族、否、平民であっても中々、
あのようなことは、できることではござらぬ。
この恋路の事の顚末まで見届けたくなりますな」
ふと、誠一はそれなりに長く生きているだろう剣豪に
神々の寵愛を受けし者たちについて質問した。
「むっその件をここで尋ねますか。
正直、胡散臭いと思っております。
このようなことを言ったことが広がれば、
とんでもないことになるのは自明の理ですので
内緒にてお願いします。
大きく分けて、二通りの者たちに
大別されると思っております。
分かりやすく言うと、ファウスティノや
フリッツのような者と
アルフレート様のような者です。
アルフレート様のような方にも
いままで何度かお目にかかったことがあります」
剣豪の話によると、天啓を受ける前は、
どの人物もアルフレートのように
品行方正、明朗活発で絵に描いたように
優秀であったようだった。
しかし、剣豪に言わせると人として
軽いというより、ひととなりがどれも
同じに思えて、気味が悪かったようだった。
何かの契機に様変わりしたように
人格が一変し、大半は意味の分からない言葉を
吐き続けて、闇に落ちる様だった。
「それはあたかも魂を持たぬ人形の器に
魂が宿ったようでござる。
アルフレート様、あなたにもそう感じます」
大半の話は、ファウスティノと同じであった。
恐らく自分のような転生者を受けいれるための
器が用意されているのだろう。
そして、転生者がこちらの世界で
いきなり路頭に迷わないために
知識として知ることができるように
器にこの世界の理を学ばせているのだと推測した。
プレイヤーが操作するためのキャラクターは、
この世界の住民となった転生者と
元々の世界の住人を引き当てるような仕組みに
なっているのだろう。
何となくこのゲームの世界のありようが
理解できたような気がした。
「聡いアルフレート様なら、
既に疑問に感じていると思いますが、
我々が探索できるエリアが年々、
広がっています。
偉大なる魔導士が世界を守るために
構築したとされる城壁が次第に消えています。
作為的なのか恣意的なのかはわりませぬが、
世界は私が子供の頃に教わった時より
遥かに広い」
剣豪の言葉は、おそらくゲームで言うところの
新エリアの開放を意味しているのだろう。
一体、どのくらいのエリアが用意されているか
想像もつかなかった。
それと異世界なのかVRの世界なのかいまだに
判断つかなかったが、仮にVRだとしたら、
誠一にとって最悪であった。
ゲームの提供は永遠ではない。
過疎化して、収益が見込めなくなったら、
即サービス停止でこの世界は消去されるだろう。
そのとき、誠一も抹消されて、
その存在が完全に消え去るはずだった。
それは明日かもしれないし、1年後かもしれない。
なんの前触れもなくやってくるものであった。
既に自分がプレイをしていた時、過疎化気味であった。
リシェーヌを助けるにしろ、この世界を抜け出すにしろ、
あまりのんびりとしていられないと思った。
剣豪を前にして、色々と面白くないことを
想像してしまい、表情に出ていたのだろう。
「むっ、いかがなされたのですか?」
「いや、ちょっと考え事です。
それよりそろそろ、戻りませんか?」
誠一の提案に剣豪も賛成し、
転送陣の方へ二人は向かった。
歩きながら、変態行為に興じてしまったが、
迷宮攻略のための強力な協力者を得ることが
できたと思うと悪くないと自分の行為に納得した。
クリスタルの森には二人の足音だけが響いていた。
その響きはここへ残る者の心に寂しく響いたであろう。
彼らが転送陣でこの地を去ると、
静寂が生ある者の心を蝕んだ。
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