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154.遠征13

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「ふむ、その答えに到達しましたか!
まあ、合格点ですが、あくまで今回の状況が
可能にしていることを忘れてはいけません」
突然、ひょっこりと現れた剣豪が注釈を入れた。

「まあ、他の3人の強者を頼るのも一興ですが、
その強者が力を貸すかどうかが問題ですね。
とんでもないことを吹っ掛けられるかもしれませんよ。
それこそ死んだ方がましのようなね」
からからと笑う剣豪の表情は醜悪に歪んでいた。

「先生、そう下手な芝居は今、必要ありません」
誠一が冷たく言った。

周囲の寒さも相まって、剣豪はくしゃみを何度かした。
「ふむ、アルフレート様の案も良いですが、
ここは寒すぎます。
さっさと戻ってお茶と美女で身体を温めたいものです。
極めた先には、称号などといった良く分からぬものが
全く意味をなさぬことをお見せしましょう」

誠一は若干の余裕ができたため、
鑑定眼であの魔人を観察した。
全てを閲覧することはできなかったが、
そのスペックは非常に稀なものであった。

クラスSSR、斬撃耐性・打突耐性・衝撃耐性・
耐火・耐水・耐空・耐土・耐雷・異常耐性・
物理耐性・武器耐性・怪力・鈍重・硬化・
回復・上位魔人etc.

先天的に持っていた称号かそれとも後天的に
得たものか分からないが、恐らく物理的な攻撃では
倒せないことは、十分に理解できた。

誠一たちの前で剣豪は構えた。
普段の飄々とした雰囲気とは
全く異なるひりつくような雰囲気であった。

誠一たちは、触れる空気が痛い、
そう感じるほどであった。
背中の大太刀と腰に差していた極薄の刀は
地に置かれていた。

剣豪は腰元に残した一振りの刀を引き抜き、
正眼に構えた。

「刀を振りて、幾万、幾億。
刀と過ごして、幾星霜」

正眼の構えから、下段の構えに移り、
そして、上段に構えた。
その所作は、恐ろしく自然で美しかった。

誠一たちはその後にある魔人の死ということを
忘れて、見惚れていた。

流れるような足の運びで魔人に近づき、
当たり前の様に魔人の拳を避け、振り下ろされた刀。
そこへ何も無かったかのように刀は、半弧を描いた。
刀の軌跡は夜空の三日月のような残影を残し、
正眼の位置にあった。
刃紋に全く曇りなく、何かを斬ったとは
思えないほどであった。

地面には真っ二つになった魔人が倒れていた。
無論、血が噴き出し、誠一の理解の及ばない臓物が
溢れ出ていた。

 剣豪の技に圧倒された誠一たちは呆然としていた。

剣豪は、刀を鞘に納めると、魔人の核である魔石を
回収した。その表情は非常にうれしそうであった。
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