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150.遠征9

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「先生、ご無事でしょうか?
もうすぐ、キャロリーヌさんや
シエンナたちも到着します」

狂いそうなほど高揚する感情を抑えつつ、
誠一はふらついている剣豪の側に駆け寄った。

「戦場での命令違反は厳罰ですよ。
それとあなたの目は節穴ですか?
この状況で無事に見えますか?」
衣服はぼろぼろ、身体はふらふら、
そんな状態を見ても誠一は剣豪が
深刻なダメージを負っている様には
思えなかった。
ぼろぼろの割には、出血や打ち身等の怪我は
見受けられず、ふらふらなのは技の影響だと判断した。
回復薬を飲めばすぐにでも復活しそうであった。

魔物たちは威嚇しながら、誠一と剣豪を囲った。

「ふむ、風よけくらいにはなりそうですな。
さて、アルフレート様、何かここを脱する
良き策をお持ちですか?」

誠一は一つ回復薬を取り出した。
失礼、そう言うと、剣豪を押さえつけて、
無理やり飲ませた。
吐き出しそうな雰囲気の剣豪に誠一は、
追加で水を大量に飲ませた。

なんだろう剣豪の表情を見ると感情が物凄く高揚した。

「これが私の最善策です」

「ゲロゲロー、なんてものを飲ませるんですか!」
剣豪があまりのまずさに眉間に皺を寄せながら、
咳き込んでいた。

それを見た魔人は、あの男が絶望の淵に
落ちたと思い、底意地の悪い表情で笑った。

「さて、そろそろ戦を再開しますかな。
あの男にとって、十分な隙が出来たでしょう。
魔人相手にアルフレート様、
思いっきり暴れちゃってください。
能力が破格に底上げされている
今、目の前の魔物などは、
大したことありませんでしょう」

誠一は頷くと、7面メイスを
片手に魔物たちの群れへ突っ込んだ。
力任せにメイスを振り回す誠一。
その様はまるで悪鬼羅刹のようであった。
ホブゴブリンなどは一撃で倒され、
動作のとろいトロルやオークは、
格好の標的となっていた。
かろうじてオーガのみが誠一と
互角の戦いをしているように見えた。

後方からは雨あられの様に矢が飛来し、
魔物の戦闘能力を奪っていった。

バタバタと倒される魔物に
魔人の顔が怒りで歪んでいた。
あのメイスを振るう小僧を
屠るために魔人は立ち上がった。

背中側の右肩口に短剣が刺さっていた。
後方に目をやると、一人の男がいた。
視線が合うと、男はその場から消えた。
まるでそこには最初から
誰もいなかったかのようだった。
お互いに一言も交わさず、
短剣だけが刺さっていた。

ごぶっ、魔人は口から血を吐いた。
二度、三度と血を吐き、その場に片膝をついた。

 いつの間にか剣豪の側にスターリッジが立っていた。
「おい、やることはやった。
さっさと止めを刺せ。
あれほどの致死量の毒をもってしても
意識を失わずにいる。
あれは下級の魔人じゃねえ」

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