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115.帰郷7

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「さてと、アルフレート君。
阿呆共の動きも止まったことだし、
弟と話に行ってみてはどうかな?」
ロジェに促されて、誠一は馬車に向かって、
ゆっくりと歩き出した。

その様子を見ていたリゲルが馭者に
馬車を出す様に言った瞬間、馭者が倒れた。

「むむっ、逃がさないわよー」
キャロリーヌが射倒したようだった。

「ディリアム、ロムデール、殺せ。奴を殺せー。
ラムデール、何をしてる!奴を殺せ。
先生、奴はこの地を害する屑です、やっちゃってください」
馬車から喚き散らすリゲルであった。

「危機的な状況に限って、先生呼ばわりですか。
困ったものですね。
しかし、アーロン殿には多大な恩義あります。
リゲル様、毎日、心を入れ替えて剣術の訓練を受けますか?」

「するする、するから、奴をどうにかしろぅ。
女どもは捕らえて、屋敷へ連れてこい」

先生と呼ばれた剣士は、ため息をつくと、素早く指示を出した。
「彼らは殺す気はないですな。
悪くて重傷程度です。
ディリアム、ロムデールたちは、
あの女性たちを捕らえなさい。
魔術と弓なら、犠牲を恐れずに
リゲル様の言う通りに数で押せば、
然したる苦労なく捕らえられます。
ラムデール、あそこで奇妙な槍を構える男を
抑えなさい。
若造と侮るなかれ、初撃から全力でいきなさい。
まー殺さない程度に加減してもいいですが、
任せます。では、散会!」

剣士は剣を抜き、構えた。
ロジェと誠一の二人を相手取るつもりなのだろう。
誠一もメイスを構えた。
ロジェは剣を振り上げると、無言で剣士に
向かって振り下ろした。
剣士は、ロジェの一撃を受け流し、
腹部に向かって蹴りを飛ばした。
かろうじて避けるロジェ。
「おいおい、随分と手癖の悪い先生だよな。
さて、どうしたものかな」

ヴェルはハルバートのリーチを生かして、
ラムデールの接近を防いでいた。
しかし、打ち合って、ほんのわずかな時間であったが、
汗まみれになっていた。
訓練と違い、受け損なえば、大けが、
最悪、死亡であった。
その重圧が彼に圧し掛かっていた。
そして、逆に彼にハルバートが刺されば、
相手も同じことであった。
人を武器で傷つけたことのないヴェルにとって、
そのことが更にプレッシャーとなっていた。

ラムデールが後方へ下って、距離をおいた。
「いい太刀筋だ。
アルフレートと共に学んでいるだけはあるが、
君も魔術院の学生なのだろう。
なぜ、槍をそこまで扱えるんだい?」

「おい、戦いの最中だろ!
まっいいか、そんなの決まってるじゃん。
魔法戦士は、皆、剣を持っている。
俺は、同じことはしないっ!
このハルバート共に魔法戦士としての高みを目指す」
一呼吸おいて、ヴェルは尋ねた。
「お前の名は?」

「ラムデール・エスターライヒ。
エスターライヒ家に連なる者だ」

「俺はヴェルナー・エンゲルス。
お前の実力に敬意を評して、
俺の持てる最強の技で貴様を倒そう」

ヴェルは素早く後退し、ハルバートを
寒空に向けて振り上げた。
ハルバートの先端に魔力が籠り、紅く輝きだした。
ラムデールには、それがくすんだ空を
照らす太陽のように見えた。
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