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95.策謀の果てに10

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「ふん、魔術の研鑽をおろそかにした愚者の末路だな」
高笑いをするデルガドの表情が歪んだ。

黒い球体に亀裂が入っていた。

亀裂から眩い光が漏れていた。

黒い球体はガラスの様に割れてしまった。

そして、その中心に稲妻を
纏ったファウスティノが立っていた。
「ふむ、どうやら、この杖を使うまでもなかったようだな。
魔術それ自体は素晴らしい出来栄えであったが、
如何せん込められた魔力が少なすぎるのう。
それでは張りぼてと同じじゃ」

口をぱくぱくと動かすだけで、
言葉にならないデルガドであった。
流石に防御結界だけは何とか展開したが、
ファウスティノの一撃で粉砕されてしまった。
接近を許したデルガドに最早、
対抗すべき手立てはなかった。
一方的に殴られる選択肢しか残っていなかった。
単純な暴力に対抗する手段を持ちえぬデルガドは、
これからのことを想像して、恐怖に陥った。

「この結界は、始まりの迷宮に
張られたものと同じじゃのう。
後輩を手にかけるとは、いただけないのう」

デルガドは助けを求めて、バルフォードを見ると、
司祭に押さえ付けられて、地面に這いつくばっていた。
ナサレノは、いまだに体力が回復していないのか、
膝をついて、立ち上がれずにいた。

デルガドは助けを求めて、喚いた。
「ボルザレフ、何とかしろ。
ダンブルは既にここから、撤退しただろ。
報酬分は働いたはずだ」

「おや、ボルザレフがおるのかい。
そいつはここで始末しておかないとねぇ」
司祭は、バルフォードのみぞおちに
鋭い一撃を入れると、すぐさま、屋敷内に向かった。
ファウスティノは、残された3人の挙動を見張った。

暗い屋敷の中で、デルガドの喚き声を
聞いたボルザレフは、舌打ちをした。
あの化け物二人組に敵う筈がない。
ダンブルを逃がした後で金目の物をかき集めて
逃亡するつもりだったが、喚き声のせいで、
目算が大きく狂ってしまった。
 命あっての物種と咄嗟に判断し、
離脱の魔石を発動させた。
幸にして、魔術を阻害する結界はないようであった。
外でへばっている連中が上手くこの場を逃れて逆恨みを
買うのも億劫だったために
奴らの分の離脱の魔石も同時に発動させた。
外の三人と屋敷内に潜む3人が
光の粒子となって、どこかに離脱した。

 残された者たちは、ダンブル麾下の精鋭の騎士団と
雇われた冒険者たちだけであった。
ボルザレフに説得されたダンブルは
秘密の通路を通って、領地へ逃亡。
最強を謳われた者たちは、離脱の魔石で
戦場からどこかへ撤退。
事情を知った上で加担した騎士団と冒険者たちは
降伏しようとも大逆の罪は重く、死刑。

 彼らはダンブルの領地に向かおうと活路を
見出すため、各々、手薄な場所から逃亡を試みた。
何人かの逃亡を許したが、大半の者が死亡、
または捕まり、ダンブルによる王都での反乱は
未然に防がれた。
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