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87.策謀の果てに2

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「あーめんどくせーな。
ファウスティノ、もういいだろ。
扉を破壊する。うおらー真空刃斬」
フリッツが大剣を振り下ろした。
直後、扉は粉々になっていた。
あり得ない威力であったが、フリッツは
訝し気にその先を睨みつけていた。

「おいおい、危ないだろうが、
屋敷には力なき女子供がいるんだぞおー」
間延びした声で真紅の大剣を右肩で担ぎなら、
一人の男が屋敷から出て来た。

「ぬかせ、既にお前らが殺傷済みだろうよ。この屑どもが」
珍しくフリッツが剣を構えた。
そして、襲いかからずに軽口を叩くに留めていた。

「くはっ、少しは成長したようだな。
だが、それだけだ。
俺だけに注視してもしかたないだろうよ」

真紅の鎧の男の後方から、気弾が数十発飛んできた。
フリッツは動けなかった。
眼前の男から目を離せば、死ぬ。
そう感じ取っていたからだった。

気弾は、全て杖という名のメイスにより
弾かれていた。
「ちっ、ファウスティノか!流石に厄介だな」
布の服を着た筋肉隆々たる男が舌打ちをした。

「バルフォード、お主がダンブルたちの貴族至上主義や
レア度至上主義に賛同するとは思えぬがのう」
ファウスティノは杖を構えて、警戒しながら、
バルフォードに話しかけた。

「よく言うわ。お前らが推し進めた改革だって、
同じだろう。
結局は、能力によるものか持って生まれたモノに
よるかの違いだろう。
くだらないことをして、弱者に夢を与えるな。」
バルフォードは拳を握った。
そして、正拳突きを打てる姿勢を取った。
「ナサレノ、手を出すなよ。
こいつは俺がここで打ちのめす」

「ふーむ、努力した者にチャンスを
与えるがなぜ悪いのかのう。
能力を磨くことを怠り、家柄を振りかざすだけの者に
国の行く末を任せるには、ちと不安に思わぬか?」
ファウスティノは構えを解き、再度、語り掛けた。

「それで何百年も上手く回っていただろうが!
いたずらに国を弄ぶな。話は終わりだ。死ね」

ファウスティノに向かって正拳突きが繰り出された。
まさに見本となるような綺麗な突きであった。
動作に淀みなく、その所作は美しく、
人を破壊するような力を内包しているようには
見えなかった。
一突き、二突き、三突き、四突きと
繰り出される左右の腕から繰り出された正拳突きは、
ファウスティノの身体を捉えることはできなかったが、
杖を破壊し、拳圧がファウスティノを傷つけた。
 ナサレノとバルフォードの後方から
死人がわらわらと現れた。
先ほど、ダンブルの騎士団により
殺された使用人たちであった。
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