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80.策謀1

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誠一とボーリスがそんなしょうもない
押し問答をしている時、デスサイスを片手に
教会兼孤児院にリシェーヌは到着していた。
若干、ボーリスと誠一の会話が気になったが、
盗み聞きする訳にもいかず、さっさと帰宅した。

 何だろ、教会の前にバルドロと誰かが
言い争っている声が聞えてきた。
「てめーの話は聞いてねえ。
リシェーヌが決めることだ。
おまえは首を縦に振るだけでいいんだよ。
ああん?潰すぞ、コラ」

「ふん、口汚い勇者様だな。
やれるならやってみろ。
俺は倒せても司祭は無理だろうが」
随分と物騒なことになっている気がする。

時節、リシェーヌをどうこうと
聞こえることから、恐らく自分のことで
揉めているのだろう。
嫌な気がするが、ここに立っていても
仕方ないために二人の方へ向かった。

「おう、リシェーヌ。何年ぶりだ。
まだまだ、ガキだな。
おまえに話がある。聞け、そして頷け」

いつまで経っても天啓を受けず、
レア度も他の候補より低いため、
勇者の称号を得る可能性が低いと
教えてくれた人だった。
それが理由で次第に足が遠のいていった人が
久しぶりに尋ねて来ていた。

「頷くにしても内容を説明して貰わないと」
懐かしさなどなかった。
親兄弟のない私の唯一の希望を
粉々にした人だった。
絶対に頷いてやるものかと思いつつも
鋭い眼光で一睨みされると、その迫力に
委縮してしまった。

「リシェーヌ、必要ないぞ。
体よく、利用しようとしているだけだからな。
こいつの意に沿わない回答で、
こいつが暴発したら、
俺と婆が止めるから気にするな」
バルドロは戦闘体勢に入っていた。
以前の訓練場での雰囲気とは全く違っていた。

「てめー、一人でこいや。
虎の威を借りる狐が!
おい、リシェーヌ、ナーシャが
お前の助けを必要としている。
それでも首を横に振るか?」
相変わらず何が目的なのかはっきりしないが、
リシェーヌは、ナーシャ様が必要としているなら、
頷くべきだと思った。

「おい、ちゃんと説明しろ。
それじゃ全く分からないだろう。
できないなら、俺が説明する」
流石にナーシャの名前を聞き、
無条件にリシェーヌが頷きそうなために
バルドロが慌てて、遮った。

「おう、頼む。じゃ、応接室に行くぞ。
バルドロ、茶をくれ。怒鳴って喉が渇いた」
あっさりと納得するフリッツ。

「3時間も怒鳴り合うからだろっ。
おまえが話を変なふうに拗らせるのが悪い。
まあいい、茶は用意するが、説明の前に
勝手に話をすすめるな。いいな」
バルドロはそう言うと、助祭を呼び、
何事か指示を出して、二人で移動した。
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