上 下
75 / 830

75.とある居酒屋での情景2

しおりを挟む
「ちょっと、清涼。
何、女性のコンピューターを覗こうとしているのよ」
莉々子が清涼を窘めた。
そして、徐に自分のパッドを二人に見せた。
「清涼はもう、既に何度も見ているでしょ。
千晴、これが私のキャラよ。
今、ソルテールで大きなイベントが告知されているから、
そっちに移動中よ。清涼もそうでしょ?」
6名ほどの冒険者風のキャラが街道を
馬車と馬で移動していた。

「おーあのイベントか!
俺のクランからも一応、10名程を向かわせている。
魔術院の小イベ、進級試験から派生したイベだろ。
王国の騎士団も動くから結構、大きなイベントに
なりそうだしな。佐藤さんは参加するの?」
そう言えば、アルフレートはソルテールに
向かっていた気がした。

千晴は、彼らに教えて貰いながら、
パッドからヴェルトゥール王国戦記を起動させた。
彼らを見ている限りでは画面が残りっぱなしになることは
無さそうだったからだ。

「これはまた、随分と刺激的なシーンだね」
清涼がアルフレートを見て、呟いた。
「あちゃー浮気現場に出くわしちゃったね。
千晴、指示ださないの?」
莉々子は画面上に映るアルフレートと
リシェーヌの濃厚なキスシーンを眺めていた。
千晴は、二人の情事が終わり、殺人蜂と
交戦している画面を見つめながら、
現在の事情を清涼と莉々子に説明した。

「いや、あり得ない、あり得ない。
この年齢、このゲームの期間で
『神々への反逆者』の称号を得るとか。
佐藤さん、どんだけおかしな命令をしたのさ。
しかもこのメンバー構成。
勇者には絶対になり得ないけど、
勇者候補のNPCリシェーヌ、
モリス商会、エンゲルス冒険一家と
グリーンシティのNPCでプレーヤーが
欲しがるキャラばかりじゃん」

「しかし、これだともうロムるしかないんじゃない。
結構、レアな能力あるけど、操作出来ないんじゃ
面白くないでしょう」

ふと、千晴は気になることがあり、清涼に尋ねた。
「このリシェーヌが勇者になれないのは
何か理由があるの?
それと『神々への反逆者』って解除不能なやつなの?」

「当代の勇者フリッツは、確かレジェンドレアだった。
そして、前代も前前代もレジェンドレアらしい。
NPCのウルトラレア勇者候補は、本命の当て馬みたいなもんさ。
魔神イベントのどこかで死ぬだろうね。毎回、そうだと思う」
清涼がネットを検索して、自分の情報に上乗せして説明した。

「というか何でこの子たち、適正が違うのに
魔術院に通っているの?
あっ、でもファウスティノが学院長のあそこかー。
基礎能力の底上げのためかな。
本職の魔術師を目指すなら、魔法都市に行くしね。
千晴は始めたばかりだから、間違えちゃったのかな」
莉々子がアルフレートたちのステータスを見ながら、
感想を述べた。
そもそも憂さ晴らしから、始めた千晴は、
見当違いな二人の感想にどう答えていいかわからず、
適当に相槌を打っていた。

 ゲーム談話に花を咲かせつつ、だらだらと3時間ほど
過ごして、おひらきとなった。
お互いにゲーム上でやり取りできるように
ID交換をして、各々、帰途についた。

 どうでもいいゲームの話ばかりであったが、
久々に外で呑むお酒はおいしく、酔いが
程よくまわっていた。
一人暗い部屋でアルフレートと
リシェーヌの濃厚なキスシーンを見ていたら、
また、暗い感情に支配されていたと思ったが、
今日はませたガキが背伸びしている程度に
みんなで笑いながら過ごせた。
ゲームには全く興味が無かったが、
千晴は、少し本腰を入れて、プレイする気になっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。 全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。 もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。 貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。 思いつきで適当に書いてます。 不定期更新です。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...