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51.チーム戦5
しおりを挟む「おい、ロジェ。小僧は助けたのに
リシェーヌは助けないのか?
あの二人が相手だと流石に分が悪いだろうよ」
ロジェとキャロリーヌと対峙して、
動けずにいるティモールが彼らの隙を
作ろうと話かけた。
「ふっ、小僧と言ったり、餓鬼と言ったり、
忙しい奴だな。
危うくなったらバルドロが助けに入るだろうよ。
それにアルフレート君がどんな状態・状況で
あろうとも彼女を助けに向かうだろう。
さて、そろそろ睨み合いにも飽きてきたところだ。
剣を交えようじゃないか」
そう言うと愛用のバスターソードを
振り上げて、ティモールに打ちかかった。
「ほざけ、貴様らのような下賤な者が調子にのるなよ」
ティモールは愛用の魔術の付与されている剣で
ロジェの一撃を受けた。
そしてそのまま鍔迫り合いが始まった。
「ぐっ」
とティモールが気合を入れ、
押し込むが、ロジェも負けずと押し返した。
お互いに引かず、力と力のぶつかり合いであった。
「うーん、これって邪魔しちゃ悪いのかな。
でもまあ、チーム戦だしね。
えいっ、幾万と降る雫よ、敵を穿て、五月雨討ちー」
キャロリーヌが矢を打ち上げ、矢が降下すると
同時にロジェとティモールの周りに
数え切れないほどの矢が飛来した。
「馬鹿者、俺は味方だぞ」
「ぐっ、卑怯だぞ、ロジェ。
妹の力を借りないと勝負できぬとはな。
下賤な者は、正々堂々と言う言葉を
知らないようだ」
「おいおい、俺も戦線離脱だぞ!」
「はいはい、私も気力・体力が
限界だから、離脱ね。
バルドロはなんか稽古つけてるわね。
アルはふらついているけど、
まだ、少しは行けそうかな。
じゃーあとはリシェーヌの
頑張り次第ってことかー」
そう言って、キャロリーヌは、
リシェーヌの戦いぶりに注視した。
二人の男たちも毒気を抜かれたのか、
同じ方へ目を向けた。
「おいおい、おまえ、本当に魔術院の学生なのか。
あり得ないだろうが、この速度についてくるとかよ」
全速力にはほど遠いが、それなりの速さで
動いている盗賊であった。
魔術の研鑽を主とする魔術師風情が
この速さについて来る。
そのことに盗賊は、驚きを隠せなかった。
「もっと早く動けるでしょ。
あんまり余裕を見せていると足元を
すくわれる」
リシェーヌにもまだ、余裕があるのか
減らず口をたたいた。
「ぬかせ、小娘。ならば、ついて来い。
この速さに!」
致命的な一撃は受けないが、その速さに
ついていけずに傷が増えるリシェーヌだった。
両者、無言で交わされる攻防のやり取り、
リシェーヌの足音が時節、響くだけであった。
短剣の柄による強烈な一撃が
リシェーヌのみぞおちに入った。
「ぐっ」
呻き声をあげるが、リシェーヌの左手が
がっちりと盗賊の服を掴むと、右手の杖を離し、
上空へ振り上げた。
「風の精霊ヨ、ここに顕現せよ。
私に纏い、踊りなさい。風の踊り子」
誠一の知識で言えば、シルフという
低級の精霊になるであろう。
しかし、呼び出された精霊は、数えるのが
馬鹿らしいほどであった。
「その歳でそれかよ、この化け物が。
参った、降参だ」
「最初から本気出してたら、私が死んでたでしょ。
それにみぞおちの一撃も柄じゃなくて、
刃なら、魔術を展開するまでもなく、即死でしょ。
次は勝つから」
努めて、淡々と語ろうとしているが、
彼女の表情は悔しさを雄弁に語っていた。
「あほう、訓練だから、当たり前だろう。
またはないな。
お前が相手だと、本気で殺し合いになりそうで、
恐ろしいわ。
さっさとあの小僧とあのでかぶつを倒してこい」
余裕をもって短剣を回収すると、
訓練場の端に移動する盗賊であった。
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