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44.初依頼、色々
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冒険者ギルドを退出すると、
リシェーヌが背中を伸ばした。
顔を真上に上げたため、眩しそうに目を瞑っていた。
「あーあーもう、薬草かー。
明日、迎えに来てね。
教会の方が城門を出るのに近いから、よい?」
いまいち、釈然としない誠一であったが、
問い詰めても答えそうな雰囲気でないために一先ず頷いた。
翌日、二人は森で腰を下ろして、
薬草と言う名の草をひっきりなしに
引っこ抜いていた。
あまりに地味な作業に誠一は、
3時間もすると飽きてしまった。
手を休めて、リシェーヌの方に目を向けると、
ひっきりなしに草を抜いていた。
「アル、地味で単調なのはわかるけど、
受けた以上、しっかりやって。
それとも貴族様には無理だったかな」
誠一は集めた草の量を確認すると、
リシェーヌに反論した。
「いやいや、もう終わっているから。
依頼票に記載された量は集めているよ」
リシェーヌはため息をついた。
「ふううぅーこれだから、お金持ちの貴族様には
困ったものね。
報酬だけじゃ、足が出るでしょ。
だから、簡単な薬草採取の依頼では、
市場に売るための薬草も集めるの。
ついでに売れそうな実やキノコとかもね。
そもそも低ランクの依頼は、
新人に学ばせるために
ギルド自体が発行していることも多いから」
ゲームではそこまで考えることなく依頼を達成する。
そのため、リシェーヌの意見は新鮮であった。
と思ったが、鬱蒼と茂る草木と日中の暑さ、
じめじめした空気が誠一のやる気を削いでいた。
「理解はしたけど、そろそろ、休憩して、
食事を取ろう。
リシェーヌ、森では何が起きるか
分からないから、体力を
なるべく消耗しないように努めよう」
誠一が最もらいしことを
最もらしい表情で言うと、
リシェーヌは笑いを押さえることが
できなかったようだった。
「うん、食事にしよう」
周りを整理すると、誠一の隣に座って、
お弁当を広げた。
誠一もお弁当を広げると、右肘が彼女にぶつかった。
「ごめん、少し近かったかな?」
「だっ大丈夫。気にしなくていいよ」
そう言って、ほのかに頬を
紅く染めるリシェーヌだった。
お互い微妙な雰囲気のまま、
食事を終わらせると、リシェーヌが
ちょっと一人で薬草を探すと言い出し、
移動しようとした。
誠一は、移動しようとした
リシェーヌの右手を掴み、それを止めた。
「駄目だ。何が起こるか分からないから、
探したいものがあるなら、同行する」
「いいってば!ほんの少し向こうに行くだけだから。
危なかったら、声を出すよ」
リシェーヌが頑なに拒否した。
誠一は、絶対に譲らず、掴んだ手を更に強く握り締めた。
もじもじしながら、リシェーヌも譲らなかった。
「痛いよ、アル。離して」
押し問答を繰り返して、3分程経過すると、
誠一は諦めたように手を離した。
「リシェーヌ、15分だけだからね。
それが譲れる限界。
僕はここでまた、草摘みをしているから、
目的の物が手に入ったら、極力早く戻って来て。いいね」
「わかったから。何度も念押ししないで」
言うや否やリシェーヌは、
足早に道なき森の奥に向かった。
誠一はリシェーヌの落ち着きのない挙動で
心配になり、こっそりと後を追った。
リシェーヌがきょろきょろと周囲を
観察していた。
恐らく目的の物が見つかったのだろう。
誠一は少し離れたところから、
リシェーヌを観察していた。
森林の独特の生臭い匂いが誠一の臭いをかき消し、
木々の枝や葉が誠一の姿を隠していた。
しかし、気配自体を消すことはできていなかった。
妙だな、普段のリシェーヌだったら、
誠一の気配を察知して、恐らく発見するはずであった。
余程、レアな薬草か何かを見つけて、
興奮しているのだろう。
周囲への注意力が散漫になり、
その場に立ち尽くしているように誠一には見えた。
誠一はリシェーヌを注視した。
リシェーヌが腰回りに手をかけて何かを
している。
そして、腰回りの防具等を取り外して、
ズボンを下ろして、屈み始めた。
あっやばい、これ、見ちゃいけない奴だ。
咄嗟にそう判断すると、リシェーヌから視線を外して、
移動しようとした。
しかし、誠一は動揺していた。
そのため、足元への注意力が散漫になっていた。
やばっ、誠一は足を取られて、盛大に転んでしまった。
誠一は顔を上げた。
見上げた先には、屈んでいるリシェーヌがいた。
リシェーヌを下から覗き込むような形で視線が交錯した。
二人とも顔が真っ青であった。
誠一は何も見ていないと示すために
大袈裟に両腕で自分の目を覆った。
その姿を見て、リシェーヌは、急ぎ、
下着とズボンを履き、防具を取り付けた。
「さっきの所に戻ろう」
リシェーヌがぽつりと呟き、動き始めた。
誠一は、無言でリシェーヌの後を追った。
それから3時間ほど二人は無言で
薬草や希少植物等々を採取して、街に戻った。
二人の間に微妙な雰囲気が流れており、
ほとんど会話が無かった。
別れ際にリシェーヌが誠一に伝えた。
「ギルドへの報告は明日。
朝の9時にギルドの正門に集合。以上」
そう言って、足早に去っていった。
リシェーヌが背中を伸ばした。
顔を真上に上げたため、眩しそうに目を瞑っていた。
「あーあーもう、薬草かー。
明日、迎えに来てね。
教会の方が城門を出るのに近いから、よい?」
いまいち、釈然としない誠一であったが、
問い詰めても答えそうな雰囲気でないために一先ず頷いた。
翌日、二人は森で腰を下ろして、
薬草と言う名の草をひっきりなしに
引っこ抜いていた。
あまりに地味な作業に誠一は、
3時間もすると飽きてしまった。
手を休めて、リシェーヌの方に目を向けると、
ひっきりなしに草を抜いていた。
「アル、地味で単調なのはわかるけど、
受けた以上、しっかりやって。
それとも貴族様には無理だったかな」
誠一は集めた草の量を確認すると、
リシェーヌに反論した。
「いやいや、もう終わっているから。
依頼票に記載された量は集めているよ」
リシェーヌはため息をついた。
「ふううぅーこれだから、お金持ちの貴族様には
困ったものね。
報酬だけじゃ、足が出るでしょ。
だから、簡単な薬草採取の依頼では、
市場に売るための薬草も集めるの。
ついでに売れそうな実やキノコとかもね。
そもそも低ランクの依頼は、
新人に学ばせるために
ギルド自体が発行していることも多いから」
ゲームではそこまで考えることなく依頼を達成する。
そのため、リシェーヌの意見は新鮮であった。
と思ったが、鬱蒼と茂る草木と日中の暑さ、
じめじめした空気が誠一のやる気を削いでいた。
「理解はしたけど、そろそろ、休憩して、
食事を取ろう。
リシェーヌ、森では何が起きるか
分からないから、体力を
なるべく消耗しないように努めよう」
誠一が最もらいしことを
最もらしい表情で言うと、
リシェーヌは笑いを押さえることが
できなかったようだった。
「うん、食事にしよう」
周りを整理すると、誠一の隣に座って、
お弁当を広げた。
誠一もお弁当を広げると、右肘が彼女にぶつかった。
「ごめん、少し近かったかな?」
「だっ大丈夫。気にしなくていいよ」
そう言って、ほのかに頬を
紅く染めるリシェーヌだった。
お互い微妙な雰囲気のまま、
食事を終わらせると、リシェーヌが
ちょっと一人で薬草を探すと言い出し、
移動しようとした。
誠一は、移動しようとした
リシェーヌの右手を掴み、それを止めた。
「駄目だ。何が起こるか分からないから、
探したいものがあるなら、同行する」
「いいってば!ほんの少し向こうに行くだけだから。
危なかったら、声を出すよ」
リシェーヌが頑なに拒否した。
誠一は、絶対に譲らず、掴んだ手を更に強く握り締めた。
もじもじしながら、リシェーヌも譲らなかった。
「痛いよ、アル。離して」
押し問答を繰り返して、3分程経過すると、
誠一は諦めたように手を離した。
「リシェーヌ、15分だけだからね。
それが譲れる限界。
僕はここでまた、草摘みをしているから、
目的の物が手に入ったら、極力早く戻って来て。いいね」
「わかったから。何度も念押ししないで」
言うや否やリシェーヌは、
足早に道なき森の奥に向かった。
誠一はリシェーヌの落ち着きのない挙動で
心配になり、こっそりと後を追った。
リシェーヌがきょろきょろと周囲を
観察していた。
恐らく目的の物が見つかったのだろう。
誠一は少し離れたところから、
リシェーヌを観察していた。
森林の独特の生臭い匂いが誠一の臭いをかき消し、
木々の枝や葉が誠一の姿を隠していた。
しかし、気配自体を消すことはできていなかった。
妙だな、普段のリシェーヌだったら、
誠一の気配を察知して、恐らく発見するはずであった。
余程、レアな薬草か何かを見つけて、
興奮しているのだろう。
周囲への注意力が散漫になり、
その場に立ち尽くしているように誠一には見えた。
誠一はリシェーヌを注視した。
リシェーヌが腰回りに手をかけて何かを
している。
そして、腰回りの防具等を取り外して、
ズボンを下ろして、屈み始めた。
あっやばい、これ、見ちゃいけない奴だ。
咄嗟にそう判断すると、リシェーヌから視線を外して、
移動しようとした。
しかし、誠一は動揺していた。
そのため、足元への注意力が散漫になっていた。
やばっ、誠一は足を取られて、盛大に転んでしまった。
誠一は顔を上げた。
見上げた先には、屈んでいるリシェーヌがいた。
リシェーヌを下から覗き込むような形で視線が交錯した。
二人とも顔が真っ青であった。
誠一は何も見ていないと示すために
大袈裟に両腕で自分の目を覆った。
その姿を見て、リシェーヌは、急ぎ、
下着とズボンを履き、防具を取り付けた。
「さっきの所に戻ろう」
リシェーヌがぽつりと呟き、動き始めた。
誠一は、無言でリシェーヌの後を追った。
それから3時間ほど二人は無言で
薬草や希少植物等々を採取して、街に戻った。
二人の間に微妙な雰囲気が流れており、
ほとんど会話が無かった。
別れ際にリシェーヌが誠一に伝えた。
「ギルドへの報告は明日。
朝の9時にギルドの正門に集合。以上」
そう言って、足早に去っていった。
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