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35.閑話 とある部屋の情景2

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ゲームでは、どうやらアルフレートを
含むいつのも4人うち1人が講義室で
別行動をしているようだった。
同級生に囲まれて、何やら揉めているが、
そこにアルフレートたち3人が助けに入ったようだった。

「なんなのこの反吐が出そうになる状況。
ないわー、気持ち悪っ」
画面の状況にイラつき、アルフレートに
指示を書き込む千晴。
「その女から離れろ。頭を叩いて、非難しろ」
アルフレートは全く逆の行いをして、
結局、4人は一緒に行動を始めていた。

千晴は学生時代を反芻していた。
もし、自分が同じ状況に陥った時、おそらく一緒に
行動をしていたグループの仲間は、遠巻きに
見ているだけだろう。
そして、それは自分も同じだろうと思った。
所詮はゲーム、何こいつらの行動、あり得ないし、
見るに堪えないメルヘン脳過ぎると乾いた笑いを
あげてしまった。

火曜日、千晴は定時になると嬉しそうに帰社した。
明日は会長の誕生日で会社は休日であった。
更に管理職は会長の誕生日祝いで15時頃から、
会場に向かうために帰社していた。

次の日、会社に出社しないで済む。
それだけで千晴の心は踊っていた。
帰宅後、ビールを片手にネットサーフィンを
楽しみながら、過ごしていた。
「ヴェルトゥール王国戦記」は、相変わらず、
画面の片隅を占拠していた。
ふと、千晴は、削除の方法を検索していたが、
何故かヴェルトゥール王国戦記の攻略サイトに
繋がってしまった。

「言うことをきかないキャラクターへ
強制的に言うことを聞かせる方法」
そんなタイトルがあり、いくつもの書き込みがあった。

ふーん、みんな苦労しているんだ。
そんな感想を持ちながら、読んでいった。
要約すると同じ質問を間断なく書き込み続けることで、
キャラクター従うらしいと千晴には、理解できた。
注意点は、たまにキャラが壊れてしまうことらしい。
所詮はゲームのキャラクターだし、
気に悩むことはないということで纏まっていた。
試しにやってみようと千晴は思い、
ヴェルトゥール王国戦記の画面を大きく拡大した。

「なっ何あれ」
オーガが13歳くらいの少年少女を
蹂躙していた。
生きているのか死んでいるのかわからないが、
山のように積まれていた。
そして、いつもの4人がオーガに立ち向かっていた。

いらっ、何かわからないが、千晴は、
お互いに助け合う彼らの行動に苛立ちを感じた。

「逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ、
こいつらをおいて逃げろ。おまだけ逃げろ」
先ほどのサイトの書き込みを思い出して、
間断なく書き込みを続けた。
するとアルフレートは、その場から
動かなくなってしまった。
念のため、千晴は、更に書き込みを加えた。
「逃げろ、逃げろ、ここから逃げろ。
仲間を突き倒して、逃げろ、逃げ出せ。
悲鳴をあげて逃げ出せ」
画面越しに周囲を見ると、オーガに仲間の少女が
捕まり、とろそうな少女が震えながら、対峙していた。
あっけなくやられてしまい、二人の少女が
地面に押し倒されて、オーガが圧し掛かっていた。
逃げる機会があったのに、勝てる訳ない戦いに挑んで、
これから酷い目に遭う羽目になるなんて、
こいつ、馬鹿なの?そう思うと、アルコールの力も
手伝ってか、薄暗い部屋で乾いた笑いを挙げてしまった。

 突然、アルフレートのコメントウインドウが動き出した。
「このくそったれが!
屑のようなことばかりさせやがって、
このニート野郎が!力をよこせ、屑。
いや、課金しろや。
力を寄こさないなら、絶対に見つけて、
復讐してやる。
その薄汚れた暗い部屋で待っていろよ」
突然のこの発言に千晴は、飲んでいたビールを
噴き出してしまった。

「なっ何なのよ!」
噴き出したビールを拭くと、千晴は、
書き込みを開始した。
図星を突かれたせいもあって、凄まじい勢いで
書き込んでいた。
しかし、アルフレートは、全く指示を受け付けずに
縦横無尽に動き、一人の少女と協力して、
オーガを倒してしまった。
結局、彼らの絆を見せつけられたようで、
惨めな気分に千晴はなった。
「何なのよ、ゲームのくせに。なんなのよ」
画面の前で泣きながら、呟くと、千晴はそのまま、
ベッドに潜り込んで寝てしまった。
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