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21.休日の予定1
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ヴェルが帰ると、誠一は、リシェーヌの帰省先である
ルメディア教会に向かった。
少し肌寒いが心地よい風が吹く街中を歩きながら、
ルメディア教会について、アルフレートの記憶の
ページをめくっていた。
大陸創世期に活躍した現人神の1人、
英雄ルメディアを祀る教団であり、権力より
民衆に寄り添う姿勢が強かった。
そのためか、他の宗派に比べて、資金力では劣るが、
信徒の数は大陸有数の規模であった。
誠一が教会に近づくと、笑い声や楽しそうな悲鳴が聞えて来た。
「寒い中、元気だな」
誠一は自然と元気な声につられて、微笑んでしまった。
「誠一、みんなを見て、にやにやし過ぎ。
変質者と間違えられる」
誠一の幸せな気分をぶち壊すような
冷たい言葉が突然、かけられた。
「いやいや、大して変わらない年齢でしょ。
この子たち!おかしくないはず」
必死の勢いで抗弁する誠一に対して、
リシェーヌは、どこ吹く風というような感じだった。
「その黄金の髪を風で靡かせながら、
良い顔を崩してニヤニヤしている姿は、気味が悪い」
「リシェーヌ、いい加減におし。
客人に対して失礼ではありませんか。
この子は、あなたが戻ってからよく話題に
するアルフレート君ですね」
リシェーヌの後方から、ルメディア教の法衣を
纏った上品そうな老婆がリシェーヌを窘めた。
「あっ司祭様」
珍しく慌てるリシェーヌ。
そんな珍しい姿にまたしても誠一は、微笑んでしまった。
「むっ、ところでアル、今日は何しに来たの?」
ふくれっ面のリシェーヌをよそに誠一は、
司祭に如才なく挨拶をして、用件を話した。
司祭は目を細めて、話を聞いていたが、
誠一には、観察されている様に感じられた。
「リシェーヌ、どうだい、参加するかい?許可はするよ。
エンゲルスのところの坊やたちが指導につくなら、
よっぽどのことはないだろうしねぇ」
司祭の言葉が終わるや否やリシェーヌは間髪を入れずに答えた。
「参加いたします。ご許可を頂き、ありがとうございます」
「では話は決まったね。
リシェーヌ、明後日から探索に向かうなら、
その分、仕事をしないとね」
リシェーヌがここから離れることを司祭が促した。
リシェーヌはアルフレートともう少し話したい様子であったが、
司祭に言葉に素直に従って、畑の方に向かった。
誠一は、そくささと帰ろうとしたが、司祭に捕まった。
「さて、エスターライヒ家の坊ちゃん。
君は本当にアルフレート君なのかな?
随分と大人びているように感じるけど」
誠一の嫌な予感が的中した。
そのため、急いでここを離れようとしたが、
流石に年の功のなせる業か、上手く会話を
繋げられてしまった。
「おっしゃることが分かりかねますが、
アルフレート本人ですよ。
それ以外に話しようがありません」
如才なく誠一は答えた。
「ふん、リシェーヌも歳の割には大人びているが、
あくまでも13歳にしてはだ。
それに引き換え、君はいわゆる大人だね。
誤魔化そうとも会話の節々にそれがにじみ出ているわ。
さて、君はどう説明する?」
先ほどの上品そうな雰囲気から、
一転して、司祭は、1000年の刻を
過ごしたような魔女の様相となっていた。
何を言っても見透かされそうで、誠一は黙り込んでしまった。
「ふん、小才は働くようだね。
沈黙して語らずかい。
ある意味、それは、正解だろう。
まあ、ここからは婆やの独り言さ。
教団に神々の啓示を受けた者にたまにある症状、
人品見識が著しく変わる者たちが報告されている。
そういった者の多くは、悪しき啓示に囁かれ、
どうも悪い方に向かう者が多いのも事実。
リシェーヌから聞いている。君は抗ったのだろう。
なかなか珍しい例だ。たまには教会に祈りに来なさい。
筋肉魔術師程度には力になれるだろうよ」
ニヤリとして、司祭は寄進せよという感じで
右手を差し出した。
誠一は、深くお辞儀をして、教会を後にした。
ルメディア教会に向かった。
少し肌寒いが心地よい風が吹く街中を歩きながら、
ルメディア教会について、アルフレートの記憶の
ページをめくっていた。
大陸創世期に活躍した現人神の1人、
英雄ルメディアを祀る教団であり、権力より
民衆に寄り添う姿勢が強かった。
そのためか、他の宗派に比べて、資金力では劣るが、
信徒の数は大陸有数の規模であった。
誠一が教会に近づくと、笑い声や楽しそうな悲鳴が聞えて来た。
「寒い中、元気だな」
誠一は自然と元気な声につられて、微笑んでしまった。
「誠一、みんなを見て、にやにやし過ぎ。
変質者と間違えられる」
誠一の幸せな気分をぶち壊すような
冷たい言葉が突然、かけられた。
「いやいや、大して変わらない年齢でしょ。
この子たち!おかしくないはず」
必死の勢いで抗弁する誠一に対して、
リシェーヌは、どこ吹く風というような感じだった。
「その黄金の髪を風で靡かせながら、
良い顔を崩してニヤニヤしている姿は、気味が悪い」
「リシェーヌ、いい加減におし。
客人に対して失礼ではありませんか。
この子は、あなたが戻ってからよく話題に
するアルフレート君ですね」
リシェーヌの後方から、ルメディア教の法衣を
纏った上品そうな老婆がリシェーヌを窘めた。
「あっ司祭様」
珍しく慌てるリシェーヌ。
そんな珍しい姿にまたしても誠一は、微笑んでしまった。
「むっ、ところでアル、今日は何しに来たの?」
ふくれっ面のリシェーヌをよそに誠一は、
司祭に如才なく挨拶をして、用件を話した。
司祭は目を細めて、話を聞いていたが、
誠一には、観察されている様に感じられた。
「リシェーヌ、どうだい、参加するかい?許可はするよ。
エンゲルスのところの坊やたちが指導につくなら、
よっぽどのことはないだろうしねぇ」
司祭の言葉が終わるや否やリシェーヌは間髪を入れずに答えた。
「参加いたします。ご許可を頂き、ありがとうございます」
「では話は決まったね。
リシェーヌ、明後日から探索に向かうなら、
その分、仕事をしないとね」
リシェーヌがここから離れることを司祭が促した。
リシェーヌはアルフレートともう少し話したい様子であったが、
司祭に言葉に素直に従って、畑の方に向かった。
誠一は、そくささと帰ろうとしたが、司祭に捕まった。
「さて、エスターライヒ家の坊ちゃん。
君は本当にアルフレート君なのかな?
随分と大人びているように感じるけど」
誠一の嫌な予感が的中した。
そのため、急いでここを離れようとしたが、
流石に年の功のなせる業か、上手く会話を
繋げられてしまった。
「おっしゃることが分かりかねますが、
アルフレート本人ですよ。
それ以外に話しようがありません」
如才なく誠一は答えた。
「ふん、リシェーヌも歳の割には大人びているが、
あくまでも13歳にしてはだ。
それに引き換え、君はいわゆる大人だね。
誤魔化そうとも会話の節々にそれがにじみ出ているわ。
さて、君はどう説明する?」
先ほどの上品そうな雰囲気から、
一転して、司祭は、1000年の刻を
過ごしたような魔女の様相となっていた。
何を言っても見透かされそうで、誠一は黙り込んでしまった。
「ふん、小才は働くようだね。
沈黙して語らずかい。
ある意味、それは、正解だろう。
まあ、ここからは婆やの独り言さ。
教団に神々の啓示を受けた者にたまにある症状、
人品見識が著しく変わる者たちが報告されている。
そういった者の多くは、悪しき啓示に囁かれ、
どうも悪い方に向かう者が多いのも事実。
リシェーヌから聞いている。君は抗ったのだろう。
なかなか珍しい例だ。たまには教会に祈りに来なさい。
筋肉魔術師程度には力になれるだろうよ」
ニヤリとして、司祭は寄進せよという感じで
右手を差し出した。
誠一は、深くお辞儀をして、教会を後にした。
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