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2.疑念

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ワンルームの部屋に帰宅すると、
特に用事もなかったためにベッドでうとうとして、
誠一は過ごした。そして、起きると18時になっていた。

どうも先ほどの件が脳裏から離れず、PCからゲームにログインした。

バッシュは、城のどこかに潜伏しているようであった。
服は血みどろになっており、誠一は画面越しに臭いが
伝わってくるような気分になっていた。

誠一はゲームに費やした時間を反芻していた。
確かキャラクターメイキング時、「大義賊、崇高なる暗殺者」を
目指して作成した。
そして、成長と共に称号もそれらしきものを得ていたのに、
何故、あのような犯罪行為に走っていたのか疑問を感じていた。

バッシュのステータス画面を覗くと、
基本能力は最大値であった。
スキル、称号も目的としていたものに近いものばかりであった。

スキル欄を誠一が眺めていると、
「隠蔽」というスキルが目に留まった。
技量レベルは最大値であった。

ふと、思うところがあり、「隠蔽を実行!」と書き込んだ。

何も起こらなかった。何も起こらないはずはないと思い、
今度は逆に「隠蔽を解除」と書き込んだ。
何故かバッシュの整った顔が苦痛に歪んでいた。

「隠蔽を解除しなさい。解除しろ。解除だ」
たて続けに太字で強調して書き込むと、
バッシュのステータス画面の称号が書き換わり始めた。

「虐殺者、犯罪者、極悪人、変質者、
陰謀を企てる者、拷問人、神との接触者、etc.」
バッシュはにやりと笑い、画面越しに誠一を
観察しているような素振りを見せた。

「えっ、これは一体?」
誠一の全身に悪寒が走り、額に脂汗が滴った。
ゲームを削除しなきゃ。最悪、終了しないと。

誠一はそう判断したが、進行しているゲーム画面に
魅入られたのか、行動に移せなかった。

バッシュは、現れる城の衛兵を嬲り殺しにしながら、
王宮の一室にたどり着き、女王と対峙していた。
女王の前にはハイレベルそうな騎士、魔術師、僧侶の3人が
立ちはだかっていた。

「ちっ、邪魔するな。神の代弁者、神託を受けし者、
内なる心に従う者、精霊の申し子、言い方はどうであれ、
お前らも同じ作られたモノだろうが」

相対する者たちは、無言であった。

バッシュは、更に続けた。
「この世界はおかしい。閉塞された環境とおかしな歴史。
管理者に直接、問い質したいだけだ。
邪魔するなら、コロス」

バッシュの殺気が3人をひるませることは無かった。

「おまえも同じなら、わかるだろう。
我々が神託を授かって、ここにいることを。
そして、神託を受けている時、そうでない時の力の差もな」
僧侶が淡々と話した。

バッシュは突然、消えた。次の瞬間、騎士と剣が交錯した。
そして、また、消えた。

誠一は、バッシュのスキル、人材鑑定を
使用するよう指示して、彼等のステータスを確認した。

「くそがぁ、ウルトラレアで作られた連中か」
バッシュが彼らのステータスを見て、吐き捨てた。

誠一は、限界値まで成長している彼らのステータスを
バッシュと比較して、勝てないと思った。
そもそも限界値が違い過ぎていた。
キャラクターメイキング時の当たりが良かったのと、
おそらく課金して作成されたキャラクターに違いないと思った。
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