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森の獣 外伝"九之池さん、爵位を得る!"
8.爵位を得る
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「ふむ、よい。楽にせよ」
ベルトゥル公は、声をかけた。
九之池は、声をかけられ、
何かを言わねばと、先ほど、説明を
受けたことを必死に思い出していた。
「ありがたき幸せ。承ります。承ります」
「ふむ、そうか聞く前に答えるか、九之池よ。
そちの心胆しかと受け取った」
ベルトゥル公は、感心したように九之池を眺めた。
そして続けた。
「如何なることであっても受け入れる覚悟、
しかとここに居並ぶ臣と見届けた」
ベルトゥル公は、何をどう解釈したのか、
九之池の様子を全てはベルトゥル公の思うままを
受け入れるための緊張と恐怖と受け取ってようだった。
「ならば、その心意気に我が国も答えねばならぬな」
ベルトゥル公は、にやりとした。
しかし、九之池にはそんな余裕もなく、
先ほどと同様に全身で妙な音色を奏でていた。
「九之池、侯爵を授ける。
領地は、旧ダルフォンソ領する。
して、それは、一代限りのもとのする」
静謐を旨とする式典で、九之池の奏でる音以上の
ざわめきが広がった。
誰しもの想像を超えた事態であり、
彼の功績に比しても破格の待遇であった。
九之池は、ベルトゥル公が何かを
言い終えたことだけはわかった。
「ありがたき幸せ。承ります。承ります」
更にざわめきが大きくなった。
確か噂では男爵位であったはず。
ベルトゥル公は、九之池の立場の大きさを
知らしめるために侯爵を示したのだろうと考えた。
だからこそ、九之池が一度は断り、
子爵あたりに落ち着くと多くの廷臣が思ったが、
九之池が何の迷いもなく、受け入れたことに驚いた。
ベルトゥル公は、心底楽しそうに眼下に
広がる喧騒を眺めやった。
「ふむ、九之池よ、そちは、独り身であったな。
今後、何かと独り身では不便であろう」
一旦、言葉を切った。
廷臣たちのざわめきが静まった。
話の流れから、恐らく、既にどこかの貴族の
娘と婚姻が進んでいたのだろうと予想した。
そして、それがどこの家のものか聞き逃すまいと、
ベルトゥル公を注視した。
皆の視線を集めているベルトゥル公は、
しそうにまた、臣下の者たちに伝えた。
「我が娘、第一公女ヴァレリー・ベルトゥルと
結ばれるものとする」
一瞬で式典を爆発的なざわめきと悲鳴が
広がった。
美貌と権謀術数に優れた公女、
次代のベルトゥル公として、
担ぎあげようとしていた派閥からは悲鳴が
上がっていた。
降嫁の話など寝耳に水であった。
一方で後方に控える貴族たちからは、
社交界に浮世の名を流すヴァレリーがあの男に
満足できるのだろうかと下品な視線を送っていた。
ベルトゥル公は、右手をかざし、
臣下に静まるように求めた。
九之池からの言葉がなかったからであった。
九之池には何の事だか分からなかった。
しかし、脳に緊急警報が発令されていた。
この場では、どうすることもできなかった。
そして、その警報は、鳴りやんだ。
ぶりゅりゅりゅ。
彼の臀部の辺りがこんもりとしていた。
完全に頭が真っ白になり、両腕を大きく掲げて、
膝から崩れ落ちた。
そして、ベルトゥル公の前に大きく倒れ込んだ。
何という表現であろう、最大級の謝辞を持って、
王の言葉に答えた。
ベルトゥル公は満足そうに頷くと、
席を立ち、公宮を後にした。
「これはえらいことになったな。
貴公、知っていたのか?」
その場に蹲る九之池を見ながら、
サンドリーヌ卿が尋ねた。
「知る訳ないだろう。よもやの事態だ。
お前が、婚姻の件を断るからだろう。」
「無理を言うな。あの男に娘が嫁ぐなど
、認められる訳ないだろうが!
まあ、最初は婚約ということに落ち着くだろうな。
それよりあの男、どうするのだ、脱糞していなか?」
二人は九之池を担ぐ気にもならず、
近衛兵を呼び、控室まで運んだ。
そして、色々な体臭や糞が混ざり合い奏でる臭いに
我慢しながら、同行した。
九之池は、意識不明のまま、屋敷に護送された。
そして、そこでは、二人の女性の諍いが生じていた。
数十人の使用人たちが屋敷内を掃除や整理していた。
「一体、どういうおつもりですか?
来るなり、九之池さんの妻とかなんとか」
「ふむ、堕ちるところまで堕ちたが、
その勝気な性格は変わらぬままだな。
しかし、これからは主に仕える使用人として、
弁えて貰おう」
ヴァレリーは、豊かな胸の前で腕を組み、
主人のような振る舞いでルージェナを威圧した。
「ですから、なぜ、第一王女である
ヴァレリー・ベルトゥル公爵がここにいらして、
妻だの婚約だのと言っているのですか?」
「そのとおりだからだ。
それ以上でも以下でもないぞ」
ヴァレリーの両脇に数人の使用人が
守るように構えた。
服と異臭を拭われ、意識の戻った九之池が
馬車から降りて、何も知らぬまま、
この場にはちあってしまった。
「んんん?これは一体、ルージェナ、これは一体何?」
見知らぬ美人を盗み見しつつ、状況を
飲み込めない九之池が尋ねた。
「逆に私がききたいですっ!」
とルージェナ。
「ふむ、二人にしかと説明せよ」
と使用人に鼻を摘まみながら、指示するヴァレリー。
彼等の混乱は、果てなく続く。
九之池将浩は、彼が望む望まずに関わらず、
ベルトゥル公国で突然、一翼を担う立場となった。
彼の行く末は、梟雄として、世に乱世を望むか、
忠臣として、国の安寧を望むか、享楽に身を委ね、
堕落を望むか、それはまた、別に語られるだろう。
ベルトゥル公は、声をかけた。
九之池は、声をかけられ、
何かを言わねばと、先ほど、説明を
受けたことを必死に思い出していた。
「ありがたき幸せ。承ります。承ります」
「ふむ、そうか聞く前に答えるか、九之池よ。
そちの心胆しかと受け取った」
ベルトゥル公は、感心したように九之池を眺めた。
そして続けた。
「如何なることであっても受け入れる覚悟、
しかとここに居並ぶ臣と見届けた」
ベルトゥル公は、何をどう解釈したのか、
九之池の様子を全てはベルトゥル公の思うままを
受け入れるための緊張と恐怖と受け取ってようだった。
「ならば、その心意気に我が国も答えねばならぬな」
ベルトゥル公は、にやりとした。
しかし、九之池にはそんな余裕もなく、
先ほどと同様に全身で妙な音色を奏でていた。
「九之池、侯爵を授ける。
領地は、旧ダルフォンソ領する。
して、それは、一代限りのもとのする」
静謐を旨とする式典で、九之池の奏でる音以上の
ざわめきが広がった。
誰しもの想像を超えた事態であり、
彼の功績に比しても破格の待遇であった。
九之池は、ベルトゥル公が何かを
言い終えたことだけはわかった。
「ありがたき幸せ。承ります。承ります」
更にざわめきが大きくなった。
確か噂では男爵位であったはず。
ベルトゥル公は、九之池の立場の大きさを
知らしめるために侯爵を示したのだろうと考えた。
だからこそ、九之池が一度は断り、
子爵あたりに落ち着くと多くの廷臣が思ったが、
九之池が何の迷いもなく、受け入れたことに驚いた。
ベルトゥル公は、心底楽しそうに眼下に
広がる喧騒を眺めやった。
「ふむ、九之池よ、そちは、独り身であったな。
今後、何かと独り身では不便であろう」
一旦、言葉を切った。
廷臣たちのざわめきが静まった。
話の流れから、恐らく、既にどこかの貴族の
娘と婚姻が進んでいたのだろうと予想した。
そして、それがどこの家のものか聞き逃すまいと、
ベルトゥル公を注視した。
皆の視線を集めているベルトゥル公は、
しそうにまた、臣下の者たちに伝えた。
「我が娘、第一公女ヴァレリー・ベルトゥルと
結ばれるものとする」
一瞬で式典を爆発的なざわめきと悲鳴が
広がった。
美貌と権謀術数に優れた公女、
次代のベルトゥル公として、
担ぎあげようとしていた派閥からは悲鳴が
上がっていた。
降嫁の話など寝耳に水であった。
一方で後方に控える貴族たちからは、
社交界に浮世の名を流すヴァレリーがあの男に
満足できるのだろうかと下品な視線を送っていた。
ベルトゥル公は、右手をかざし、
臣下に静まるように求めた。
九之池からの言葉がなかったからであった。
九之池には何の事だか分からなかった。
しかし、脳に緊急警報が発令されていた。
この場では、どうすることもできなかった。
そして、その警報は、鳴りやんだ。
ぶりゅりゅりゅ。
彼の臀部の辺りがこんもりとしていた。
完全に頭が真っ白になり、両腕を大きく掲げて、
膝から崩れ落ちた。
そして、ベルトゥル公の前に大きく倒れ込んだ。
何という表現であろう、最大級の謝辞を持って、
王の言葉に答えた。
ベルトゥル公は満足そうに頷くと、
席を立ち、公宮を後にした。
「これはえらいことになったな。
貴公、知っていたのか?」
その場に蹲る九之池を見ながら、
サンドリーヌ卿が尋ねた。
「知る訳ないだろう。よもやの事態だ。
お前が、婚姻の件を断るからだろう。」
「無理を言うな。あの男に娘が嫁ぐなど
、認められる訳ないだろうが!
まあ、最初は婚約ということに落ち着くだろうな。
それよりあの男、どうするのだ、脱糞していなか?」
二人は九之池を担ぐ気にもならず、
近衛兵を呼び、控室まで運んだ。
そして、色々な体臭や糞が混ざり合い奏でる臭いに
我慢しながら、同行した。
九之池は、意識不明のまま、屋敷に護送された。
そして、そこでは、二人の女性の諍いが生じていた。
数十人の使用人たちが屋敷内を掃除や整理していた。
「一体、どういうおつもりですか?
来るなり、九之池さんの妻とかなんとか」
「ふむ、堕ちるところまで堕ちたが、
その勝気な性格は変わらぬままだな。
しかし、これからは主に仕える使用人として、
弁えて貰おう」
ヴァレリーは、豊かな胸の前で腕を組み、
主人のような振る舞いでルージェナを威圧した。
「ですから、なぜ、第一王女である
ヴァレリー・ベルトゥル公爵がここにいらして、
妻だの婚約だのと言っているのですか?」
「そのとおりだからだ。
それ以上でも以下でもないぞ」
ヴァレリーの両脇に数人の使用人が
守るように構えた。
服と異臭を拭われ、意識の戻った九之池が
馬車から降りて、何も知らぬまま、
この場にはちあってしまった。
「んんん?これは一体、ルージェナ、これは一体何?」
見知らぬ美人を盗み見しつつ、状況を
飲み込めない九之池が尋ねた。
「逆に私がききたいですっ!」
とルージェナ。
「ふむ、二人にしかと説明せよ」
と使用人に鼻を摘まみながら、指示するヴァレリー。
彼等の混乱は、果てなく続く。
九之池将浩は、彼が望む望まずに関わらず、
ベルトゥル公国で突然、一翼を担う立場となった。
彼の行く末は、梟雄として、世に乱世を望むか、
忠臣として、国の安寧を望むか、享楽に身を委ね、
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