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森の獣 外伝"九之池さん、爵位を得る!"
5.お屋敷購入
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屋敷は、荒れに荒れていた。
フォーダムの話では、復旧させるまでには
それなりの費用が掛かるため、他の物件と
さして変わらぬ価格になりそうとのことだった。
九之池は、必死に考えていた。
この邸宅を買い取り、以前のような状況に
戻すことがルージェナにとって良いことなのか、
それともこのまま、朽ち果てるに
任せるのがいいのか、聞く訳にもいかず、
懊悩していた。
「師匠、僭越ながら、お伝えしますと、
男爵としての俸給でここの邸宅を
維持するのは非常に難しいかと。
結局、手入れが行き届かずに今とさして
変わらぬ惨状になるやもしれません」
屋敷の大広間でくるくると
円を描きながら歩き回り、ぶつぶつと
呟く九之池のフォーダムが助言した。
「買う、ここにする。
最低限の手入れでここを維持する。
ここをこんな廃墟のようにしておくわけに
いかないし。
決めた、フォーダムさん、契約するから、
後で書類をください。
先に馬車へ戻っておいてください。30分ほどで
ルージェナと戻ります」
そう言うと、庭園の面影を残す広場に
ただずむルージェナのところに向かった。
「あっ、九之池さん。内覧は済みましたか?」
「やあ、ルージェナ。終わったよ」
「誰も手入れをしないと、ほんの1,2年で
こうも以前の面影が無くなってしまうものなんですね」
「んんん、家なんて、どれも同じようなものだよ」
二人の間を沈黙が支配する。
「私の家族は、何も知らなかったのに。
ここで働いていた人たちは、何の関係も
なかったのにみんな、殺されました、
ベルトゥル公国に」
九之池は、ルージェナにかける言葉がなかった。
知らなかったとは言え、彼はルージェナに
縁のある人たちを闘技場で毎日、処理していたからだった。
何を言っても詭弁ととられるであろうことは、理解していた。
「それで、九之池さん。どうするんですか?」
「ここを買うよ。そして、ここに住むよ。
維持費が足りない分は、依頼をこなすからさ。
ここを荒れたままにしておくことはできないよ」
やっとのことで九之池は、そう言うと、
ルージェナの右手を握った。
「戻ろう、ルージェナ」
「はい。九之池さん、ありがとう」
それだけを聞き取れないような小さい声で
ルージェナは言うと、九之池に
引かれるようについて歩いた。
そんな二人のやり取りをフォーダムは、
木陰から観察していた。
九之池が邸宅の購入にサインして、数日後、
王宮の一室でベルトゥル公が愉快そうに宰相と
話をしていた。
「あの邸宅したか!
宰相、賭けはわしの勝ちじゃな。
しかし、本当にあの男は飽きさせぬな」
「はっ」
宰相は短く答えると、九之池の動向に
関する報告書に改めて、目を通した。
反逆者の一族の娘を囲っているとはいえ、
まだまだ、反逆の大乱が世間から
忘れ去られていない昨今、
あの屋敷に手を出す者がいると宰相は
予想だにしなかった。
「あの屋敷に相応の爵位と領地を与えねばのう。
あの男が立ち行かなるではないか。
宰相、これが目に見えぬ所でのあやつの
駆け引きであったら、まっことに愉快なことよ」
「ベルトゥル公。あまりお遊びが過ぎますと、
己の身を滅ぼしましょうぞ。
ある程度の自重は必要かと」
「ふふっ停滞していた世界が
動き出しているのだ、多少の遊びが
あっても大勢に影響はないであろうよ。
それより、あの愚鈍な召喚者がどこまで
伸びあがれるか見るのも一興であろう」
ベルトゥル公は、笑いを収め、
独り言ちにそう言うと、宰相に退室を促した。
フォーダムの話では、復旧させるまでには
それなりの費用が掛かるため、他の物件と
さして変わらぬ価格になりそうとのことだった。
九之池は、必死に考えていた。
この邸宅を買い取り、以前のような状況に
戻すことがルージェナにとって良いことなのか、
それともこのまま、朽ち果てるに
任せるのがいいのか、聞く訳にもいかず、
懊悩していた。
「師匠、僭越ながら、お伝えしますと、
男爵としての俸給でここの邸宅を
維持するのは非常に難しいかと。
結局、手入れが行き届かずに今とさして
変わらぬ惨状になるやもしれません」
屋敷の大広間でくるくると
円を描きながら歩き回り、ぶつぶつと
呟く九之池のフォーダムが助言した。
「買う、ここにする。
最低限の手入れでここを維持する。
ここをこんな廃墟のようにしておくわけに
いかないし。
決めた、フォーダムさん、契約するから、
後で書類をください。
先に馬車へ戻っておいてください。30分ほどで
ルージェナと戻ります」
そう言うと、庭園の面影を残す広場に
ただずむルージェナのところに向かった。
「あっ、九之池さん。内覧は済みましたか?」
「やあ、ルージェナ。終わったよ」
「誰も手入れをしないと、ほんの1,2年で
こうも以前の面影が無くなってしまうものなんですね」
「んんん、家なんて、どれも同じようなものだよ」
二人の間を沈黙が支配する。
「私の家族は、何も知らなかったのに。
ここで働いていた人たちは、何の関係も
なかったのにみんな、殺されました、
ベルトゥル公国に」
九之池は、ルージェナにかける言葉がなかった。
知らなかったとは言え、彼はルージェナに
縁のある人たちを闘技場で毎日、処理していたからだった。
何を言っても詭弁ととられるであろうことは、理解していた。
「それで、九之池さん。どうするんですか?」
「ここを買うよ。そして、ここに住むよ。
維持費が足りない分は、依頼をこなすからさ。
ここを荒れたままにしておくことはできないよ」
やっとのことで九之池は、そう言うと、
ルージェナの右手を握った。
「戻ろう、ルージェナ」
「はい。九之池さん、ありがとう」
それだけを聞き取れないような小さい声で
ルージェナは言うと、九之池に
引かれるようについて歩いた。
そんな二人のやり取りをフォーダムは、
木陰から観察していた。
九之池が邸宅の購入にサインして、数日後、
王宮の一室でベルトゥル公が愉快そうに宰相と
話をしていた。
「あの邸宅したか!
宰相、賭けはわしの勝ちじゃな。
しかし、本当にあの男は飽きさせぬな」
「はっ」
宰相は短く答えると、九之池の動向に
関する報告書に改めて、目を通した。
反逆者の一族の娘を囲っているとはいえ、
まだまだ、反逆の大乱が世間から
忘れ去られていない昨今、
あの屋敷に手を出す者がいると宰相は
予想だにしなかった。
「あの屋敷に相応の爵位と領地を与えねばのう。
あの男が立ち行かなるではないか。
宰相、これが目に見えぬ所でのあやつの
駆け引きであったら、まっことに愉快なことよ」
「ベルトゥル公。あまりお遊びが過ぎますと、
己の身を滅ぼしましょうぞ。
ある程度の自重は必要かと」
「ふふっ停滞していた世界が
動き出しているのだ、多少の遊びが
あっても大勢に影響はないであろうよ。
それより、あの愚鈍な召喚者がどこまで
伸びあがれるか見るのも一興であろう」
ベルトゥル公は、笑いを収め、
独り言ちにそう言うと、宰相に退室を促した。
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