起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた

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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編

諸国の事情3

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レズェエフ王国の王宮に先のバルザース帝国との戦後、
初めて、廷臣が一堂に会していた。
以前の王宮は、静かで、心地よい風が
廷臣や来訪者を包んでいた。
今日の王宮も静かであるが、
その理由は、一同の両肩に圧し掛かる重苦しい空気が
下を俯かせて、押し黙らせていたからであった。

王宮は淀んだ空気に支配されていた。
レズェエフ王国の現国王、ローマンは、
どの廷臣も見ていなかった。
深くくぼんだ瞳は、入門口を見つめていた。
 ローマンが玉座に現れてから、
30分程が経過していたが、物音一つしなかった。
たまりかねた宰相が王に言葉を求めた。

「此度の敗戦の責は、将とその親族一同が
未来永劫に負うものする」

後方に参列していたアグリッパは、
ごくりと生唾を飲み込んだ。
小さいざわめきが廷臣の間に広がっていた。
敗戦の責を問うのは当たり前であるが、
厳し過ぎるとの思いをアグリッパは、心の中でつぶやいた。
王の憔悴しきった表情を盗み見た廷臣たちは、
王が相当に追い込まれていると感じた。
ベルトゥル公国とは、いまだに国境線で
小競り合いが続いており、バルザース帝国とは、
国交が断絶していた。
隣国とのいざこざから、後方で大人しくしていた
蛮族たちが蠢動を開始するかもしれない。

市井の噂は瑞兆を示すものもなく、
凶兆をおもわせるものばかりであった。

水の都の象徴たる湖が濁った。

黒い雨が降り、森が腐った。

突然、川が氾濫した、等々であった。

多くのことがらが、王の耳に届くと、
都度、王の心を蝕んでいったのだろうと廷臣たちは、
俯きながら、思った。

王が先程の言葉を残し、玉座より立ち去ると、
廷臣一同、王宮から逃げる様に立ち去った。

その夜、アグリッパは、王の言葉を反芻していた。
宮廷魔術師とは言え、敗軍に従軍していたため、
何かしらの処罰を受けるかもしれぬため、対策を検討していた。

今日の王であれば、上手く利用する者も
現れているだろう。
アグリッパは誰に取り入るか熟考していると、
後方から、とんとんと肩を叩かれた気がした。

「ん?誰だ」
気のせいかと思いつつも振り返ると、奴がいた。
叫びそうになったが、必死の思いで、声を飲み込んだ。

「やあやあ、残念―。
まあ、でも楽しかったでしょ?ねえねえ」
この場の雰囲気にそぐわない心底楽しそうで
小ばかにした声でアグリッパに話かけた。

「なっ何しに来た?」

「ぷぷっ、ビビってるの?声が震えているねー」
空中をホバーリングしながら、キャッキャッと嘲笑していた。

アグリッパは、心を落ち着かせようとして、
何とかそれに成功した。
そして、杖を構えると、言った
「用件は何だ?」

「んーそうだね。君はなかなか、優秀だし。
また、玩具を貸してもいいかなって思ったのさ。
ほらほら、上質な餌は、ここの王が近々、
用意してくれるからさー。どうする?」

にやにやしているが、アグリッパに拒否権はなかった。
恐らく殺されるだけであろう。
そして、彼の頭の中に昼の王の言葉が反芻された。

「ふん、既にこの国は,化け物に支配されて、
良いように踊らされているということか。
いいだろう、引き受けてやるよ」

「えーーえー、違うよ。
ちょっとローマンの鬱積した感情を
後押ししてあげただけさ。
そんなことより、今度のは、喧伝されたあのキリアの獣より、
優秀だから、頼むね。じゃあねー」

窓から、夜の闇に妖精もどきは、消えていった。
アグリッパの机の上に一枚の魔術陣が書かれた紙が
残されていた。

「ちっ、一体何がどうなっているんだ。
生き残るためにはしかたない。
奴の言葉に乗るか」

停滞していた世界は、動き出し、
各国の思惑が交錯する歴史の大きな分岐点を迎え、
動乱の刻を刻み始めた。
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