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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
諸国の事情2
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報告が終わった後、ルナリオンの執務室で
才籐とメープルがルナリオンへ雑談混じり報告の続きを
行っていた。
先ほどの粛々とした雰囲気とは一転、
感情を露わにメープルがルナリオンに詰め寄っていた。
「ルナリオン様、一体、何時になったら、
キリアに派遣して頂けるのでしょうか?
才籐は、もう、十分に独り立ちしております」
言葉遣いは、丁寧だが、その眉間に皺を寄せた表情が
彼女の心中を表していた。
そんな彼女の表情をみて、才籐は、また、
例の癇癪が始まったとため息をついた。
ルナリオンは、メープルの怒りを意にも介さず、
微笑みと共に軽くあしらった。
「メープル、先ほど、皆の前で宣誓していたではないか!
その心に偽りがあったというのか?」
「い、いえっ、誓ってそれはございませんが、
しかし、キリアでも人々の助けに
なることはできましょう。
それにいい加減、あの女狐を野放しにしておくのは」
宣誓を盾にメープルを追い込むルナリオン。
内心では、いつものことであり、ちょろいと思いつつ、
厳かな表情を保ちながら、告げた。
「遠くに驥足を伸ばすより、まずは、
己の目に入る民の安寧を祈り、助けられずして、
遠き地の民など助けられないだろう、そうでないか?
それにあの男は、すでに子を2人も抱えておる。
そこへ横やりを入れるのは、どうかと思うが」
告げられたメープルは、言い返そうと
何かを言おうとした瞬間、彼女の感情に
反応したかのように右腕がルナリオンに襲いかかった。
流石にこれには才籐が驚いて、慌てて、
止めに入ろうとしたが、ルナリオンは、
どこ吹く態でメープルに右腕を叩き落とした。
当の本人であるメープルも突然の出来事に
呆然自失となり果てていた。
「ふむ、まだまだだな。その右腕の成長には、
時間がかかりそうだ。
今の件は、不問とするが、これ以上の議論は無用だ、
いいなメープル」
「もっ申し訳ございません。
ううっ、謹んで任を拝命いたします」
完全なる己の落ち度に最早、わがままなど、
言える訳なく、おとなしく任務を受け入れた。
「それとだ、極力、あのもどき共とは
接触を避けるように。
どうやらアレらの存在を許容し難いと
大神殿の連中が判断した。
神殿の守護騎士どもを動かすようだ。
メープル、分かるな、あの狂信者どもはめんどくさい」
「はっ、わかりました」
メープルも素直に受け入れた。
才籐は、噂にしか知らぬため、曖昧に頷いた。
内心、適当に話を聞いている気分を反映してか、
左脚が先程から、ぷらんぷらんと所在無げに動いていた。
最後にルナリオンが笑いながら、才籐に声をかけた。
「才籐よ、流石それでは、左脚の動きに
君の気持ちが表れ過ぎているよ。
暇なのはわかるが、もうちと、内心を
見透かされないように制御できるように
努力してくれ」
左脚を小刻みに痙攣させながら、
才籐は「わかりました」と答えて、
メープルと共に退室した。
明日以降、二人は、行動を共にするメンバーと
旅の計画を開始した。
バルザース帝国では、此度の戦で
第三帝位継承権を持つアルフレード皇子が
大きく勢力を後退させた。
召喚者である皇子の立場は、盤石であるが、
それに対抗する勢力として、アルベリク侯爵が
急速に台頭してきた。
侯爵の野望故か、はたまた、皇子の勢力を
恐れる帝王の策略か、市井の者たちには
判断つかなかった。
ただ言えることは、安定していた政情が乱れ始め、
連年の戦も相まって、民に重苦しい影を始めていた。
才籐とメープルがルナリオンへ雑談混じり報告の続きを
行っていた。
先ほどの粛々とした雰囲気とは一転、
感情を露わにメープルがルナリオンに詰め寄っていた。
「ルナリオン様、一体、何時になったら、
キリアに派遣して頂けるのでしょうか?
才籐は、もう、十分に独り立ちしております」
言葉遣いは、丁寧だが、その眉間に皺を寄せた表情が
彼女の心中を表していた。
そんな彼女の表情をみて、才籐は、また、
例の癇癪が始まったとため息をついた。
ルナリオンは、メープルの怒りを意にも介さず、
微笑みと共に軽くあしらった。
「メープル、先ほど、皆の前で宣誓していたではないか!
その心に偽りがあったというのか?」
「い、いえっ、誓ってそれはございませんが、
しかし、キリアでも人々の助けに
なることはできましょう。
それにいい加減、あの女狐を野放しにしておくのは」
宣誓を盾にメープルを追い込むルナリオン。
内心では、いつものことであり、ちょろいと思いつつ、
厳かな表情を保ちながら、告げた。
「遠くに驥足を伸ばすより、まずは、
己の目に入る民の安寧を祈り、助けられずして、
遠き地の民など助けられないだろう、そうでないか?
それにあの男は、すでに子を2人も抱えておる。
そこへ横やりを入れるのは、どうかと思うが」
告げられたメープルは、言い返そうと
何かを言おうとした瞬間、彼女の感情に
反応したかのように右腕がルナリオンに襲いかかった。
流石にこれには才籐が驚いて、慌てて、
止めに入ろうとしたが、ルナリオンは、
どこ吹く態でメープルに右腕を叩き落とした。
当の本人であるメープルも突然の出来事に
呆然自失となり果てていた。
「ふむ、まだまだだな。その右腕の成長には、
時間がかかりそうだ。
今の件は、不問とするが、これ以上の議論は無用だ、
いいなメープル」
「もっ申し訳ございません。
ううっ、謹んで任を拝命いたします」
完全なる己の落ち度に最早、わがままなど、
言える訳なく、おとなしく任務を受け入れた。
「それとだ、極力、あのもどき共とは
接触を避けるように。
どうやらアレらの存在を許容し難いと
大神殿の連中が判断した。
神殿の守護騎士どもを動かすようだ。
メープル、分かるな、あの狂信者どもはめんどくさい」
「はっ、わかりました」
メープルも素直に受け入れた。
才籐は、噂にしか知らぬため、曖昧に頷いた。
内心、適当に話を聞いている気分を反映してか、
左脚が先程から、ぷらんぷらんと所在無げに動いていた。
最後にルナリオンが笑いながら、才籐に声をかけた。
「才籐よ、流石それでは、左脚の動きに
君の気持ちが表れ過ぎているよ。
暇なのはわかるが、もうちと、内心を
見透かされないように制御できるように
努力してくれ」
左脚を小刻みに痙攣させながら、
才籐は「わかりました」と答えて、
メープルと共に退室した。
明日以降、二人は、行動を共にするメンバーと
旅の計画を開始した。
バルザース帝国では、此度の戦で
第三帝位継承権を持つアルフレード皇子が
大きく勢力を後退させた。
召喚者である皇子の立場は、盤石であるが、
それに対抗する勢力として、アルベリク侯爵が
急速に台頭してきた。
侯爵の野望故か、はたまた、皇子の勢力を
恐れる帝王の策略か、市井の者たちには
判断つかなかった。
ただ言えることは、安定していた政情が乱れ始め、
連年の戦も相まって、民に重苦しい影を始めていた。
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