起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた

文字の大きさ
上 下
108 / 264
森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編

外交官(稲生)

しおりを挟む
「敵か味方かもわからぬような戦場だ。
お互いの多少のいざこざは大目に見てくれ」
黄金の鬣に隆々たる筋肉、手の先の爪は、
武器を必要としないような鋭さであった。

そして、続けた、
「ヘーグマン、貴様らもこの人攫いの
集落の壊滅に動いたのか?
ここは我らが連合王国とベルトゥル公国との緩衝地帯だ。
確かに貴様らがいてもおかしくはないな」

「我々は、噂に上がっている遺跡の探索のためだ。
死体からめぼしいものを物色している他の冒険者と
さして変わらんよ」
アデリナも彼らに近づき、事情を説明した。

「なるほど、遺跡調査か。ならば、ここは退いて貰おう。
我々はこいつらのためにかなりの被害が出ているのでな。
そして、連合の諸侯から、かなりの数の人員が
冒険者に扮してここを調べていたのでな」
高圧的な態度にアデリナは、態度を硬化させる素振りをした。

「それに従う義務はないな。そもそもアレをどうするつもりだ?」

「ふん、それ次第ということか。
アレはどうもせん。
アレに餌を与えて、神とあがめていた連中を
殲滅するだけだ。
あんなものどうにもできないだろう。
餌を積極的に与える者がいなければ、
そのうち腹を空かせて死ぬか、どうかなるだろうよ。
知ったことか」
黄金の鬣の獣人が吐き捨てるように言うと、
周りの連中も賛同した。

「確かにな。何もしなければ、恐らく迷い込んだ動物でも
飲み込んで生き永らえるんだろうな。
さて、九之池、我々はどうする?
公国への報告は貴様がするんだろう」
アデリナが九之池に結論を求めた。
いつの間に周囲に稲生やルージェナ、冒険者たちが集まっていた。

「えっ、僕が?なんで、そもそも連合王国とか、
ちょっと事情が掴めないんだけど。
稲生さん、どうします?」
アデリナから投げられたことをそのまま、
稲生にスルーした。

「えっ、私が?それは困ります。
こういう状況とはいえ、ベルトゥル公国と
連合王国の約定に他国の私が口を挟むことは
問題になりますので、九之池さん、よろしく」
稲生から、九之池にボールが投げ返された。
どうにもこうにも良案が浮かばない九之池は
皆の視線を一身に浴びて、毎度のことながら、
全身汗まみれなっていた。

黄金の鬣の獣人は、九之池たちの永遠に
続くかのような押し問答に我慢できなくなったのか、
咆哮した。そして、言った
「おい、そこの豚、貴様が決めろ。
貴様がベルトゥル公国の代理なんだろう。
さっさとしろ」

「ひいっー」
獣人の威圧感と逃れられぬ責任に九之池は、
悲鳴を上げてしまった。

「おい、そこのエルフ、本当にこいつが
代理でいいんだよな?」
九之池の情けない姿に流石に少し心配になったのか、
獣人の1人がアデリナに確認をとった。

「そうだ、この男だ。
九之池は、貴族に列せられるため、
この中で最も地位が高いし、
他国の者が二か国の間のことに口を挟む訳にはいかないだろう。
約定の成立には立ち会うがな」

「あい、分かった。
九之池とやら、さっさと、ベルトゥル公国の見解と
今後に関して、答えろ」

「かっ帰ります。遺跡でゲットしたお宝を持って、帰ります。
あとの件は、知りません。
殲滅にも関わりませんし、遺跡にもかかわりません」
九之池は一気呵成に叫んだ。
そして、遺跡には一切、関わらないこと明言した。

黄金の鬣の獣人は、その言葉ににやりとした。
「その言葉を忘れるなよ、九之池。俺の名は、フェルビだ。」

こくこくと頷く九之池だったが、若干の緊張が
解けたのか内心、別のことを考えていた。

こんなの獣人じゃな無い。

猫耳がいないじゃん。詐欺だ!

何となくだが、稲生には九之池が囚われていることが
分かってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...