起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた

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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編

考察(稲生)

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意識を失って、その場に倒れている九之池を
アデリナが見つめている。
ルージェナが轢かれた蛙のように倒れている九之池を
介抱するためか、近くに寄っていた。

「おい、稲生。お前の世界にはこいつのような奴らが
多くいるのか?それともそいつが特殊なのか?」
身体が次第に普段の九之池の色に戻っていくのを
凝視しながら、稲生は答えた。

「少なくとも一般社会において、
彼のような存在いませんし、出会ったこともありません」

「ふん、そうか。貴様にも僅かだが、そいつのような
得体の知れない何かがいるようだが。
まあ、いい。召喚されたことで、眠っていた何かが
起こされたのかもしれないな」
アデリナは納得したのか、それ以上は、このことに触れなかった。

稲生は、九之池の変化を見ながら、
自分がもし九之池のようになったら、
自我が保たれるかどうか不安に駆られた。

「稲生様、物思いに耽るのもいいですが、
この下に見えるお宝をどうしますか?
持てるだけ持って、撤収しましょうよ」
アルバンは、興奮気味に言うと、後方の大穴に
蓄積されている武具や防具、装飾品に目を向けていた。
 稲生もそれらに目を向けた。
そして、積み重なったそれらの状況から、
下の方に古代のお宝が埋もれているのではと予想した。

「稲生様、早い者勝ちですよね。
ささっ、さっさと、頂戴しましょう。
強力な魔術の付与されたものであれば、
数を持ち帰らなくとも問題ないかと」
最早、九之池の回復を待ちきれず、
慎重に降り、物色し始めたアルバンであった。

「稲生殿、九之池殿は、ルージェナが
看ております故、どうぞ。私も探しますぞ」
とヘーグマンは言うと、アルバンと同じように下った。

そして、稲生も九之池を見て、大丈夫そうだと
判断すると、ヘーグマンの後を追った。

 宝の山には、今、排出されたばかりのような物もあった。
恐らくは、中で消化された冒険者たちの持ち物であろう。
それを使っていた者は溶けて養分に
なってしまったのだろうか、稲生はそう思った。

「稲生様、数はあれども価値のありそうなものはありませんね」
幾つかめぼしいものを袋に詰めながら、アルバンが答えた。

「当たり前だろう。使い捨ての冒険者だぞ。
魔術の付与されたような武具をそうそう、
持っている訳ないだろう。
そもそもお前の詰めた武具もさほどの価値はないぞ」
いつの間にか下って来たのか、アデリナが物色しながら答えた。
アルバンはアデリナに指摘されると、
そくささと詰めたものを放りだした。
そして、金や銀のコインを集め出した。

「ううっ、ふむうぅ」
九之池は、仰向けになり、下腹を露出させながら、
気持ちよさそうな寝息をついていた。

九之池の状況を間近で確認し、体調と身体つきが戻るのを見て、
ホッとするルージェナであった。
遠目から、稲生はそんな二人を不思議そうに見つめていた。

「稲生様、人それぞれですよ。
恐らく、ルージェナ様は、好意以外の何かに
利用価値を見出しているかと思いますけど」
アルバンが稲生の疑問に答えた。

「行為?好意?彼にねぇ。
事情が事情だけど、どう考えても不釣合いだと思うけど。
それにしても九之池さんのアレには驚かされました」

アルバンはそんな事を言う稲生を観察していた。
稲生の視線は、九之池と言うより、
ルージェナの胸、腰回りを経て、顔に向かっていた。
そして、稲生の向かう視線を確認して、
アルバンは、心中、けっおまえは、どうせルージェナと
やりたいだけだろうがと久々に毒づいていた。
二人は話を止め、山の様に積まれている
武具や装飾品の物色を再開した。

「そろそろ、九之池を起こせ。
あいつらも何か探したいだろうからな。
稲生、起こしてこい」
アデリナが命じると断れる訳もなく、九之池の方に向かった。

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