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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
城内の状況2(才籐)
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アファバに続く、二人の部下の死により、
この緊迫した状況下で、アルフレード皇子は
思考が停止してしまった。
「アルフレード皇子!しかっりなさい」
と言うと、イラーリオは、アルフレード皇子を頬殴った。
「なっ!イラーリオ、何をするっ」
アルフレード皇子は、正気に戻ったのか声を荒げて、
イラーリオを睨みつけた。
「その元気があるなら、良いでしょう。
さっさと、軍師の指示に従って退却しなさい。
命があれば、将を集め、兵を集い再起も可能です。
こんな辺境で死んでも何にもなりません」
と怒鳴りつけると、軍師に二言三言、
何かを言うと、正門に向かった。
「わっ私も正門に向かう」
アルフレード皇子はそう宣言し、向かおうとすると、
横合いから、軍師がアルフレード皇子に杖を向けた。
アルフレード皇子は、黒い煙幕に巻き込まれると
その場にぱたりと人形のように倒れた。
「そこに転がる皇子を回収しなさい。
これより帝都に戻ります。
その結末がどのようなものになるかは、分からないが、
あとはアルフレード皇子の才覚次第でしょう」
幾人かの将と近衛兵がアルフレード皇子を急ぎ、
担ぐとアルベリク侯爵が逃走を始めた方に向かって、動き始めた。
「さてと、回収できるものは回収して、撤収しますか」
軍師は、呟くと、どこかにトコトコと歩き始めた。
正門を突破したレズェエフ王国軍は、城内に乱入し、
弱っているバルザース帝国軍の兵を手当たり次第、倒した。
「手柄を立て放題だぞー」
「バルザース帝国軍、恐れるに足らず!」
至る所でレズェエフ王国軍の勝利を
確信している声が響いていた。
「負ける時は、こんなものかな。
まあ、アルフレード皇子の元で楽しませて貰えたし。
ここで、レズェエフ王国軍に投降するのも蛇足だな」
イラーリオは、悠然と戦場に立ち、呟いた。
指揮する兵士は、アルフレード皇子直下の精兵であった。
「さてと、勘違いをしている馬鹿どもに見せつけてやるか。
我がバルザース帝国軍の精強を」
とイラーリオが大音声で叫んだ。
精兵は、一度、雄叫びをあげると、
レズェエフ王国軍に襲いかかり、イラーリオは戦斧を
片手にレズェエフ王国の兵を一撃の元になぎ倒していった。
城外では、総大将とアグリッパが戦況を見守っていた。
「なかなか、粘りますな。アグリッパ殿、
あの魔獣はどうなりましたか?」
「あーあれは、お腹がいっぱいになったので、
城のどこかで寝ていますかと」
とアグリッパは適当に答えた。
「もう一押しほしいな。
あの獣をバルザース帝国軍の本陣に
嗾けられないかな?」
と総大将が提案をすると、
「いや、無理でしょう。
所詮は、獣なので、お腹がふくれると
言うことをききませんので」
とアグリッパが説明すると、総大将は納得したのか、
予備兵を投入することを決断し、指示を出した。
実際のところは、アグリッパは不測の事態に備えて、
魔獣を待機させていた。
アルベリク侯爵より何の連絡も受けず、
城内から脱出するタイミングを逸した才籐を
はじめとするアンカシオン教の神官戦士たちは、
レズェエフ王国軍を倒しながら、城外への脱出を試みていた。
「まじかよ、空城の計とか、ありえねー。
ったく、うわっ、脚が勝手に伸びるー」
才籐の左脚が主の意思を無視して、
馬上から敵兵を攻撃していた。
そして、メープルの右腕が鞭のようにしなり、
敵兵を切り刻んでいた。
この奇怪な攻撃をする男女にレズェエフ王国軍は、
敢えて近づかず、手柄を立てやすそうな
バルザース帝国軍の兵に襲いかかっていた。
「才籐、軽口をたたく余裕があるなら、
もっと集中しなさい。
皆さん、我らが主、アンカシオン様と召喚者才籐に
命を捧げなさい」
とメープルがアンカシオン教の教義を謳うと、
神官戦士たちは、唱和し、退路を作るべく、
立ち塞がるレズェエフ王国軍をなぎ倒した。
城壁は血で紅く染まり、大地は死体で覆われ、
空は阿鼻叫喚の叫び声が舞っていた。
どおん、どおん、どおん。
城外より大地を踏みつける馬蹄の音が3回、響くと、
突如、人馬の叫び声が青空にこだました。
「全軍突撃、狙うは、総大将の首のみ」
鋭く、短い指示と共に先頭を凄まじい速度で
レズェエフ王国軍の本陣に肉薄する一軍が現れた。
鈍い灰色の鎧に身を包んだ男を中心に
紡錘形の陣立てで、レズェエフ王国軍の本陣に激突した。
レズェエフ王国軍の本陣、側面は一撃で粉砕され、
大混乱に陥ってしまった。
現れた軍は、速度を落とさず、本陣へ突っ込んだ。
「さて、ここは本陣のようですね。
あなたが総大将とお見受けする。
剣を抜くなり、兵を呼ぶなり、ご自由にどうぞ」
「なっ、いや、出合え。
奴を倒せば、この戦の勲一等だぞ」
と総大将が叫ぶがレズェエフ王国軍の兵は
誰も動かなかった。否、動けなかった。
動けば、自分が死ぬことを理解させられていたからだった。
皇子は剣を片手につまらなそうに総大将を瞬殺した。
「さて、レズェエフ王国軍のみなさん、
抵抗するも良し、逃げるも良しとしましょう」
と言うと、周囲で動けずにいるレズェエフ王国軍の兵を
倒し始めた。
ばたばたと倒れる様を見たレズェエフ王国軍の兵士たちは、
恐慌をきたし、逃亡し始めた。
少し遠目でこの惨状を見ていたアグリッパは、獣を呼び戻した。
そして、命じた。
「化け物が!奴を殺せ。
そして、食らい、己の血肉として、成長しろ。行けっ」
この緊迫した状況下で、アルフレード皇子は
思考が停止してしまった。
「アルフレード皇子!しかっりなさい」
と言うと、イラーリオは、アルフレード皇子を頬殴った。
「なっ!イラーリオ、何をするっ」
アルフレード皇子は、正気に戻ったのか声を荒げて、
イラーリオを睨みつけた。
「その元気があるなら、良いでしょう。
さっさと、軍師の指示に従って退却しなさい。
命があれば、将を集め、兵を集い再起も可能です。
こんな辺境で死んでも何にもなりません」
と怒鳴りつけると、軍師に二言三言、
何かを言うと、正門に向かった。
「わっ私も正門に向かう」
アルフレード皇子はそう宣言し、向かおうとすると、
横合いから、軍師がアルフレード皇子に杖を向けた。
アルフレード皇子は、黒い煙幕に巻き込まれると
その場にぱたりと人形のように倒れた。
「そこに転がる皇子を回収しなさい。
これより帝都に戻ります。
その結末がどのようなものになるかは、分からないが、
あとはアルフレード皇子の才覚次第でしょう」
幾人かの将と近衛兵がアルフレード皇子を急ぎ、
担ぐとアルベリク侯爵が逃走を始めた方に向かって、動き始めた。
「さてと、回収できるものは回収して、撤収しますか」
軍師は、呟くと、どこかにトコトコと歩き始めた。
正門を突破したレズェエフ王国軍は、城内に乱入し、
弱っているバルザース帝国軍の兵を手当たり次第、倒した。
「手柄を立て放題だぞー」
「バルザース帝国軍、恐れるに足らず!」
至る所でレズェエフ王国軍の勝利を
確信している声が響いていた。
「負ける時は、こんなものかな。
まあ、アルフレード皇子の元で楽しませて貰えたし。
ここで、レズェエフ王国軍に投降するのも蛇足だな」
イラーリオは、悠然と戦場に立ち、呟いた。
指揮する兵士は、アルフレード皇子直下の精兵であった。
「さてと、勘違いをしている馬鹿どもに見せつけてやるか。
我がバルザース帝国軍の精強を」
とイラーリオが大音声で叫んだ。
精兵は、一度、雄叫びをあげると、
レズェエフ王国軍に襲いかかり、イラーリオは戦斧を
片手にレズェエフ王国の兵を一撃の元になぎ倒していった。
城外では、総大将とアグリッパが戦況を見守っていた。
「なかなか、粘りますな。アグリッパ殿、
あの魔獣はどうなりましたか?」
「あーあれは、お腹がいっぱいになったので、
城のどこかで寝ていますかと」
とアグリッパは適当に答えた。
「もう一押しほしいな。
あの獣をバルザース帝国軍の本陣に
嗾けられないかな?」
と総大将が提案をすると、
「いや、無理でしょう。
所詮は、獣なので、お腹がふくれると
言うことをききませんので」
とアグリッパが説明すると、総大将は納得したのか、
予備兵を投入することを決断し、指示を出した。
実際のところは、アグリッパは不測の事態に備えて、
魔獣を待機させていた。
アルベリク侯爵より何の連絡も受けず、
城内から脱出するタイミングを逸した才籐を
はじめとするアンカシオン教の神官戦士たちは、
レズェエフ王国軍を倒しながら、城外への脱出を試みていた。
「まじかよ、空城の計とか、ありえねー。
ったく、うわっ、脚が勝手に伸びるー」
才籐の左脚が主の意思を無視して、
馬上から敵兵を攻撃していた。
そして、メープルの右腕が鞭のようにしなり、
敵兵を切り刻んでいた。
この奇怪な攻撃をする男女にレズェエフ王国軍は、
敢えて近づかず、手柄を立てやすそうな
バルザース帝国軍の兵に襲いかかっていた。
「才籐、軽口をたたく余裕があるなら、
もっと集中しなさい。
皆さん、我らが主、アンカシオン様と召喚者才籐に
命を捧げなさい」
とメープルがアンカシオン教の教義を謳うと、
神官戦士たちは、唱和し、退路を作るべく、
立ち塞がるレズェエフ王国軍をなぎ倒した。
城壁は血で紅く染まり、大地は死体で覆われ、
空は阿鼻叫喚の叫び声が舞っていた。
どおん、どおん、どおん。
城外より大地を踏みつける馬蹄の音が3回、響くと、
突如、人馬の叫び声が青空にこだました。
「全軍突撃、狙うは、総大将の首のみ」
鋭く、短い指示と共に先頭を凄まじい速度で
レズェエフ王国軍の本陣に肉薄する一軍が現れた。
鈍い灰色の鎧に身を包んだ男を中心に
紡錘形の陣立てで、レズェエフ王国軍の本陣に激突した。
レズェエフ王国軍の本陣、側面は一撃で粉砕され、
大混乱に陥ってしまった。
現れた軍は、速度を落とさず、本陣へ突っ込んだ。
「さて、ここは本陣のようですね。
あなたが総大将とお見受けする。
剣を抜くなり、兵を呼ぶなり、ご自由にどうぞ」
「なっ、いや、出合え。
奴を倒せば、この戦の勲一等だぞ」
と総大将が叫ぶがレズェエフ王国軍の兵は
誰も動かなかった。否、動けなかった。
動けば、自分が死ぬことを理解させられていたからだった。
皇子は剣を片手につまらなそうに総大将を瞬殺した。
「さて、レズェエフ王国軍のみなさん、
抵抗するも良し、逃げるも良しとしましょう」
と言うと、周囲で動けずにいるレズェエフ王国軍の兵を
倒し始めた。
ばたばたと倒れる様を見たレズェエフ王国軍の兵士たちは、
恐慌をきたし、逃亡し始めた。
少し遠目でこの惨状を見ていたアグリッパは、獣を呼び戻した。
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