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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
城内の状況1(才籐)
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レズェエフ王国軍は連日と同じように兵をすすめ、
城に攻撃を加えようとしていた。
ごおん、大きな音共に正門が開いた。
そして、そこには、胡坐を組んで
座っている一人の男がいた。
男の脇には、長槍が置かれていた。
レズェエフ王国軍は進軍を止めた。
何かの策か?
正門を開くなんて正気の沙汰ではない上に
一人の偉丈夫が胡坐を組んでのんびりしている。
常識では考えられぬこの暴挙に何か必勝の策が
施されているに違いないと思い、
レズェエフ王国軍の将は兵を止めて、この状況を見守ってしまった。
バルザース帝国軍から見ても明らかに
レズェエフ王国軍の動揺が見て取れた。
常識では考えられないことに様々な想像を
めぐらして、行動を鈍らせてしまうのは、
思考する者たちにありがちなことなのであろう。
しかし、本能の赴くままに動く獣は、
本能に訴える危険がなければ、獲物が一匹、
転がっているようにしか見えないだろう。
凄まじい咆哮を響き渡った。
両軍の兵がその咆哮によって、一瞬、恐怖に囚われた。
そして、獣は、レズェエフ王国軍を飛び出し、
正門でくつろぐ男に一直線に向かって、突進した。
男は、突進する獣の姿を見て、慌てて立ち上ろうとした。
焦りからか足がもつれてしまった。
そして、獣と矛を交える間もなく、
ぱくりと頭部を食べられてしまった。
頭部のなくなった首から、派手に血が吹き上がり、
正門と獣を紅く染め上げた。
獣は頭部の咀嚼が終わると、誇ったように雄叫びを上げた。
そして、ゆっくりと残った部位の咀嚼を始めた。
獣が正門にいるため、両軍は、動くことができなかった。
獣を刺激して、襲われることが恐ろしかったためであった。
「なっ、馬鹿な。何故、レズェエフは、動かないのか」
アグリッパは呻いた。
レズェエフ王国軍の兵は、襲わないとあれほど、
諸将に伝えていたにも関わらず、正門の惨状を見て、動けずにいた。
「策などアレには、ありませぬ。
将軍、進軍の号令を速やかに出してください」
アグリッパは、横で口をあんぐりと開けて、
呆けている将軍を一喝した。
「はっ、うっうむ、そうなのか、そうなのだな。
余りにも予想外なことが起き過ぎて。
全軍、前進。城を攻めよ」
と叫ぶと騎乗する蜥蜴に一鞭、入れて走り出した。
何となくだが、幾人かの将が
動き出したためにそれにつられて、兵も動き始めた。
城内のバルザース帝国軍には、
正門に佇んだカッリスの討死の報が広がった。
そして、大混乱に陥っていた。
「奴は、阿呆か。
サーボル、退路を固めているレズェエフ王国軍を
蹴散らし、退路を確保せよ。
アルフレード皇子の軍なんぞ、置いていけ」
アルベリク侯爵は、絶叫し、素早く馬に騎乗した。
指示を受けたサーボルは無言で頷き、
精兵のみを指揮して、バルザース帝国に通じる扉を開門した。
「ふぁふぁ、空城の計とは、やりおるな。
戦にロマンを求めるとは、
流石はアルフレード皇子であるのう」
と腹を抱えて笑うアグーチンであった。
「導師、笑い事ではございません。
撤退しますので、魔術でサポートをしてください」
と余裕もなく喚き散らすアルベリク侯爵であった。
城に攻撃を加えようとしていた。
ごおん、大きな音共に正門が開いた。
そして、そこには、胡坐を組んで
座っている一人の男がいた。
男の脇には、長槍が置かれていた。
レズェエフ王国軍は進軍を止めた。
何かの策か?
正門を開くなんて正気の沙汰ではない上に
一人の偉丈夫が胡坐を組んでのんびりしている。
常識では考えられぬこの暴挙に何か必勝の策が
施されているに違いないと思い、
レズェエフ王国軍の将は兵を止めて、この状況を見守ってしまった。
バルザース帝国軍から見ても明らかに
レズェエフ王国軍の動揺が見て取れた。
常識では考えられないことに様々な想像を
めぐらして、行動を鈍らせてしまうのは、
思考する者たちにありがちなことなのであろう。
しかし、本能の赴くままに動く獣は、
本能に訴える危険がなければ、獲物が一匹、
転がっているようにしか見えないだろう。
凄まじい咆哮を響き渡った。
両軍の兵がその咆哮によって、一瞬、恐怖に囚われた。
そして、獣は、レズェエフ王国軍を飛び出し、
正門でくつろぐ男に一直線に向かって、突進した。
男は、突進する獣の姿を見て、慌てて立ち上ろうとした。
焦りからか足がもつれてしまった。
そして、獣と矛を交える間もなく、
ぱくりと頭部を食べられてしまった。
頭部のなくなった首から、派手に血が吹き上がり、
正門と獣を紅く染め上げた。
獣は頭部の咀嚼が終わると、誇ったように雄叫びを上げた。
そして、ゆっくりと残った部位の咀嚼を始めた。
獣が正門にいるため、両軍は、動くことができなかった。
獣を刺激して、襲われることが恐ろしかったためであった。
「なっ、馬鹿な。何故、レズェエフは、動かないのか」
アグリッパは呻いた。
レズェエフ王国軍の兵は、襲わないとあれほど、
諸将に伝えていたにも関わらず、正門の惨状を見て、動けずにいた。
「策などアレには、ありませぬ。
将軍、進軍の号令を速やかに出してください」
アグリッパは、横で口をあんぐりと開けて、
呆けている将軍を一喝した。
「はっ、うっうむ、そうなのか、そうなのだな。
余りにも予想外なことが起き過ぎて。
全軍、前進。城を攻めよ」
と叫ぶと騎乗する蜥蜴に一鞭、入れて走り出した。
何となくだが、幾人かの将が
動き出したためにそれにつられて、兵も動き始めた。
城内のバルザース帝国軍には、
正門に佇んだカッリスの討死の報が広がった。
そして、大混乱に陥っていた。
「奴は、阿呆か。
サーボル、退路を固めているレズェエフ王国軍を
蹴散らし、退路を確保せよ。
アルフレード皇子の軍なんぞ、置いていけ」
アルベリク侯爵は、絶叫し、素早く馬に騎乗した。
指示を受けたサーボルは無言で頷き、
精兵のみを指揮して、バルザース帝国に通じる扉を開門した。
「ふぁふぁ、空城の計とは、やりおるな。
戦にロマンを求めるとは、
流石はアルフレード皇子であるのう」
と腹を抱えて笑うアグーチンであった。
「導師、笑い事ではございません。
撤退しますので、魔術でサポートをしてください」
と余裕もなく喚き散らすアルベリク侯爵であった。
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