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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
最前線の状況4(才籐)
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アルベリク侯爵の軍は、多少の抵抗を
レズェエフ王国軍より受けたが、拍子抜けするほど、
容易にアルフレード皇子の籠る城へ合流できた。
そして、合流したことをアルベリク侯爵の将は後悔した。
「こっこれは、なんか不味くないか、司祭?」
と才籐がアルフレード皇子の指揮する兵士を
観察して、呟いた。
「ええ、想像以上です。
これは、敢えてレズェエフ王国軍が城を
落とさなかったのかもしれませんね」
とメープルが周囲を見渡して、嘆息した。
アルベリク侯爵は、導師とサーボルを相手に
やり場のない怒りをぶつけていた。
「これは、どういうことだ!
あれでは、城兵は使いものにならないではないか。
我が軍が矢面に立たざるを得ないではないか。
しかもあの男、秘策ありげなことを
吹聴していたが、どうするつもりだ」
「ふむぬ、容易に合流できたのは、
レズェエフ王国軍がある程度、正確な城内の状況を
掴んでいるようじゃな。
この状況では、城内に早晩、不協和音が生じて、
混乱するやもしれませぬ。
ここは撤退も視野に入れて、動くべかと」
城外で主張したことをすっかり忘れたかのような
物言いであったが、アルベリク侯爵はただただ、
頷くばかりであった。
城内の困惑をよそにレズェエフ王国軍が
大兵力ではあるが、圧力のない攻撃を連日、城に加えていた。
「アルフレード皇子、いい加減、秘中の策とやらを教えて頂きたい」
着陣して、3日目についに怒りの限界を
迎えたアルベリク侯爵が本陣で吠えた。
集まる諸将は、アルベリク侯爵の無礼を
咎めることはなかった。
城内と城外の状況はひっ迫しており、それに対して、
策を打とうとしないアルフレード皇子への
無言の批判のつもりであった。
「そろそろ、頃合いだ。明日、策を用いる。
無念であるが、この城は放棄し、撤退することにする。
明日は、城壁から一切の兵を引かせよ。
敵軍は兵を一旦、ひくはずであるから、
そのタイミングでバルザース帝国領に撤退する。
各将、よいな」
とアルフレード皇子が自信満々に告げた。
「ですから、その策をここで説明して頂きたい。
でなければ、あなたの指示に従えません」
と珍しく、権力者たるアルフレード皇子に
食らいつくアルベリク侯爵であった。
アルフレード皇子は柳眉を逆立て、
アルベリク侯爵を叱責した。
「だっだまれ。アルベリク侯爵、
貴公との長年の友誼により、
多少の無礼は目をつむったが、許せぬ。
本国に戻って、それ相応の処罰を下す。いいな」
と言い残すと、軍議の席をたった。
アルフレード皇子の退室と共に
軍議は有耶無耶のままに終了となったが、
諸将は、アルフレード皇子の指示に従って、
各々、動き始めた。
翌日、城壁には、一切の兵がいなかった。
そして、それはレズェエフ王国軍からも確認できていた。
「ったく、何をやるつもりなんだ?うちの総大将様は?」
才籐は毒づくと、呼応するかのように
メープルも毒づいた。
「噂の軍師様の策でしょうね。
そもそも城壁から兵を下げて、
何をするつもりなのでしょうか?
碌な結果にならない気がしますが」
「城壁から兵をね。
確かになんか嫌な予感しかしないわ。まーないな。
そんな暴挙はないだろうな。
皇子ならまだしもアルフレード皇子麾下の将では、
役者不足だろうな」
と才籐がぶつぶつと呟いていた。
レズェエフ王国軍より受けたが、拍子抜けするほど、
容易にアルフレード皇子の籠る城へ合流できた。
そして、合流したことをアルベリク侯爵の将は後悔した。
「こっこれは、なんか不味くないか、司祭?」
と才籐がアルフレード皇子の指揮する兵士を
観察して、呟いた。
「ええ、想像以上です。
これは、敢えてレズェエフ王国軍が城を
落とさなかったのかもしれませんね」
とメープルが周囲を見渡して、嘆息した。
アルベリク侯爵は、導師とサーボルを相手に
やり場のない怒りをぶつけていた。
「これは、どういうことだ!
あれでは、城兵は使いものにならないではないか。
我が軍が矢面に立たざるを得ないではないか。
しかもあの男、秘策ありげなことを
吹聴していたが、どうするつもりだ」
「ふむぬ、容易に合流できたのは、
レズェエフ王国軍がある程度、正確な城内の状況を
掴んでいるようじゃな。
この状況では、城内に早晩、不協和音が生じて、
混乱するやもしれませぬ。
ここは撤退も視野に入れて、動くべかと」
城外で主張したことをすっかり忘れたかのような
物言いであったが、アルベリク侯爵はただただ、
頷くばかりであった。
城内の困惑をよそにレズェエフ王国軍が
大兵力ではあるが、圧力のない攻撃を連日、城に加えていた。
「アルフレード皇子、いい加減、秘中の策とやらを教えて頂きたい」
着陣して、3日目についに怒りの限界を
迎えたアルベリク侯爵が本陣で吠えた。
集まる諸将は、アルベリク侯爵の無礼を
咎めることはなかった。
城内と城外の状況はひっ迫しており、それに対して、
策を打とうとしないアルフレード皇子への
無言の批判のつもりであった。
「そろそろ、頃合いだ。明日、策を用いる。
無念であるが、この城は放棄し、撤退することにする。
明日は、城壁から一切の兵を引かせよ。
敵軍は兵を一旦、ひくはずであるから、
そのタイミングでバルザース帝国領に撤退する。
各将、よいな」
とアルフレード皇子が自信満々に告げた。
「ですから、その策をここで説明して頂きたい。
でなければ、あなたの指示に従えません」
と珍しく、権力者たるアルフレード皇子に
食らいつくアルベリク侯爵であった。
アルフレード皇子は柳眉を逆立て、
アルベリク侯爵を叱責した。
「だっだまれ。アルベリク侯爵、
貴公との長年の友誼により、
多少の無礼は目をつむったが、許せぬ。
本国に戻って、それ相応の処罰を下す。いいな」
と言い残すと、軍議の席をたった。
アルフレード皇子の退室と共に
軍議は有耶無耶のままに終了となったが、
諸将は、アルフレード皇子の指示に従って、
各々、動き始めた。
翌日、城壁には、一切の兵がいなかった。
そして、それはレズェエフ王国軍からも確認できていた。
「ったく、何をやるつもりなんだ?うちの総大将様は?」
才籐は毒づくと、呼応するかのように
メープルも毒づいた。
「噂の軍師様の策でしょうね。
そもそも城壁から兵を下げて、
何をするつもりなのでしょうか?
碌な結果にならない気がしますが」
「城壁から兵をね。
確かになんか嫌な予感しかしないわ。まーないな。
そんな暴挙はないだろうな。
皇子ならまだしもアルフレード皇子麾下の将では、
役者不足だろうな」
と才籐がぶつぶつと呟いていた。
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