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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編

皇子、出番(才籐)

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「これはっ」
ヴェンツは前線からの報告を受けて、唖然とした。
後方にいても感じられた凄まじいまでの魔術の渦、
あの魔晶を集めるだけでも途方もない金が
必要であったことは容易に想像できた。
そして、先の戦の召喚者もだが、常識では
計りしれない超常たる魔術の類が使われている。

「ふむ、こういう事でしたか。
最近、どうも新しい魔術が試される傾向に
あるようようですね」

「いやいやいや、あのような魔力、
集めるだけでも相当なことですし、
滅多に出会える代物ではないですよ。
それにあの魔術、一体、誰が?」
冷静に評する皇子とは対照的に
興奮の極致にいるヴェンツだった。

城内では、殺し合いが続いていた。
城の一部を制圧したとは言え、城内にはまだまだ、
レズェエフ王国軍の方が多かった。
しかし、武勇に優れるアルフレード皇子の麾下の将が
蛮勇を示し、次第にレズェエフ王国軍を圧倒し始めていた。

「殺せ、一兵も逃すな。バルザース帝国軍の
恐ろしさを身に染み込ませろ。降伏は認めぬ。
逃げる者は、追って、殺せ」
アルフレード皇子の率いる軍の方針であった。

城内の至る所で殺し合いが起き、
消耗戦の様相となり始めていた。
そして、脱出を試みるレズェエフ王国軍の兵士を
バルザース帝国軍が斬り殺すため、両軍のどちらかが
潰えるまで、終わらぬ殺し合いとなっていた。

城内を血の臭いが支配し、日も傾き始めたころ、
アルフレード皇子は、皇子と城内で戦う将に伝令を出した。

「城内の逃げ出すレズェエフ王国軍は追う必要なし。
皇子に敵兵の逃亡ルートに移動して、逃げ纏う敵兵を
殲滅するよう伝えよ。」

伝令を受けた皇子は、了解の旨を伝えると、嘆息した。
「これは、将来に禍根しか残しません。
人を魔人や魔物と等しく扱っているのでしょうね、アルフレード皇子は」

国内での討伐を主とするアルフレード皇子は、
盗賊、魔物を常に殲滅してきた。
そのためか、戦も同じような感覚に
囚らわれているのだろう。
兵士の損耗はなるべく避けるべきことも
将たる者の心得であるのではと思う皇子であった。
それともこの殲滅戦は、あの超常たる魔術を得るための
何かしらの取引のためだろうか。
戦場を移動しつつ、思いを馳せる皇子であった。

日は落ち、城の内外は血の臭いと死臭で溢れていた。
どの将兵も流石にこれには辟易したために城を出て、夜営をした。

レズェエフ王国軍の城兵を殲滅したが、
バルザース帝国軍も多大なダメージを受けた。

そして、夜営の警備対応をしている兵士以外の
生き残った兵士たちは、一時の安眠を貪っていようだった。

諸将は、そうもいかず、将たる責任と義務を果たすため、
軍議に参加し、今後の展開に関して、話し合っていた。

「噂通りの弱兵でしたな、レズェエフ王国軍は。
此処を拠点として、きゃつらの王都に攻め込みましょう。
まだまだ、余力のある軍もあるようですし」
とカッリスが言って、皇子を見た。
カッリスの発言にアルフレード皇子の取り巻きは、
呼応するかのように嘲笑した。
しかし、皇子はどこ吹く風であった。
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