84 / 267
森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
皇子、出番なし(才籐)
しおりを挟む
皇子を後方へ追いやったアルフレード皇子は、
本陣で取り巻きを集めて、眼前の城を
攻略するための軍議を開いていた。
バルザース史上、類を見ない速度での
進軍により城を囲んだため、どの将にも
レズェエフ王国の城塞内では、準備不足による
兵糧の不安を抱えているとの見解であった。
アルフレード皇子の好みのせいか、
取り巻きは、粗野で個人武勇に優れる者が多く、
戦略・戦術・謀略に優れる者は少なかった。
軍議は、武勇を誇る者たちの景気の良い発言が
歓迎され、城を攻めるというより、強大な魔人や魔獣を
討伐するような雰囲気が支配していた。
皇子が布陣する遥か手前の方で、
バルザース帝国軍の雄叫びが聞え始めた。
「どうやら、始まったようですね、攻城戦が」
と皇子が呟くと、ヴェンツがその呟きに応じた。
「どうも城壁に向かって、突撃しているように
見えますが、まさか、何の策も無しに
突撃しているのでしょうか?」
「さあ、軍議に参加していませんから、何とも。
流石にそれはないでしょう」
バルザース帝国軍最前線では、アルフレード皇子の
取り巻きの一人の戦士が先陣をきって、城壁に突撃していた。
そして、その戦士を先頭に紡錘形のように兵士が
城壁に向かっていた。
「ウラララァー、オウラー」
先頭の男は叫び続けていた。
城壁の上から、この状況を観察しているレズェエフ王国軍は、
この無謀な突撃に唖然としていた。
攻城兵器、魔術、そういった城を
攻略する定石のものが一切感じられない
その無謀な突撃にレズェエフ王国軍の守将たちは、
内応の策でもあるのではと城内の裏切りを
疑ってしまった。
「奴らに付き合う必要はない。撃て撃て討てー」
幾人かの将が叫び、我に返った兵士たちは、
矢に魔術をバルザース帝国軍に向かって
豪雨のように降り注いだ。
先頭を疾走する戦士は、絶叫した。
幾本もの弓矢魔術がこの戦士を包み込んだ。
この男は死ぬだろう。
「捧げよ捧げよこの魂を。
アルフレード皇子に捧げよ、ウラララァー」
無数の魔晶を青空に向かって散らした。
降り注ぐ陽光を反射し、その場所だけ別世界のように煌めいた。
そして、膨大な魔術の渦が男を包んだ。
先頭を疾走する戦士は、全身を光に包まれ、更に加速した。
そして、そのまま、城壁を貫通した。
戦士は死と引き替えに城壁の一部に大穴を開けた。
「全軍、あの者に続けぇー。
今この時ぞ、あの城を攻略するのはぁぁ」
剣を振り上げ、絶叫するアルフレード皇子、
そして、取り巻きの将の多くが狂ったように
アルフレード皇子の名を叫びながら、
大穴に向かって疾走した。
アルフレード皇子が麾下、アファバ推参!」
「バルザース帝国軍、カッリス!」
「アルフレード軍、イラーリオ参上」
アルフレード皇子の子飼の将が続々と
名乗りを上げ、城壁の内側に突入した。
確かに彼らは兵を指揮するのは不得手であったが、
万夫不当の戦士であった。
青空より降り注ぐ矢と魔術による多くの犠牲はあったが、
バルザース帝国軍は城へ侵入した。
本陣で取り巻きを集めて、眼前の城を
攻略するための軍議を開いていた。
バルザース史上、類を見ない速度での
進軍により城を囲んだため、どの将にも
レズェエフ王国の城塞内では、準備不足による
兵糧の不安を抱えているとの見解であった。
アルフレード皇子の好みのせいか、
取り巻きは、粗野で個人武勇に優れる者が多く、
戦略・戦術・謀略に優れる者は少なかった。
軍議は、武勇を誇る者たちの景気の良い発言が
歓迎され、城を攻めるというより、強大な魔人や魔獣を
討伐するような雰囲気が支配していた。
皇子が布陣する遥か手前の方で、
バルザース帝国軍の雄叫びが聞え始めた。
「どうやら、始まったようですね、攻城戦が」
と皇子が呟くと、ヴェンツがその呟きに応じた。
「どうも城壁に向かって、突撃しているように
見えますが、まさか、何の策も無しに
突撃しているのでしょうか?」
「さあ、軍議に参加していませんから、何とも。
流石にそれはないでしょう」
バルザース帝国軍最前線では、アルフレード皇子の
取り巻きの一人の戦士が先陣をきって、城壁に突撃していた。
そして、その戦士を先頭に紡錘形のように兵士が
城壁に向かっていた。
「ウラララァー、オウラー」
先頭の男は叫び続けていた。
城壁の上から、この状況を観察しているレズェエフ王国軍は、
この無謀な突撃に唖然としていた。
攻城兵器、魔術、そういった城を
攻略する定石のものが一切感じられない
その無謀な突撃にレズェエフ王国軍の守将たちは、
内応の策でもあるのではと城内の裏切りを
疑ってしまった。
「奴らに付き合う必要はない。撃て撃て討てー」
幾人かの将が叫び、我に返った兵士たちは、
矢に魔術をバルザース帝国軍に向かって
豪雨のように降り注いだ。
先頭を疾走する戦士は、絶叫した。
幾本もの弓矢魔術がこの戦士を包み込んだ。
この男は死ぬだろう。
「捧げよ捧げよこの魂を。
アルフレード皇子に捧げよ、ウラララァー」
無数の魔晶を青空に向かって散らした。
降り注ぐ陽光を反射し、その場所だけ別世界のように煌めいた。
そして、膨大な魔術の渦が男を包んだ。
先頭を疾走する戦士は、全身を光に包まれ、更に加速した。
そして、そのまま、城壁を貫通した。
戦士は死と引き替えに城壁の一部に大穴を開けた。
「全軍、あの者に続けぇー。
今この時ぞ、あの城を攻略するのはぁぁ」
剣を振り上げ、絶叫するアルフレード皇子、
そして、取り巻きの将の多くが狂ったように
アルフレード皇子の名を叫びながら、
大穴に向かって疾走した。
アルフレード皇子が麾下、アファバ推参!」
「バルザース帝国軍、カッリス!」
「アルフレード軍、イラーリオ参上」
アルフレード皇子の子飼の将が続々と
名乗りを上げ、城壁の内側に突入した。
確かに彼らは兵を指揮するのは不得手であったが、
万夫不当の戦士であった。
青空より降り注ぐ矢と魔術による多くの犠牲はあったが、
バルザース帝国軍は城へ侵入した。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。


クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる