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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
考察(稲生)
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稲生と共に夜を過ごしているメープルは、
ベッドでの一戦が終わった後に昼間の出来事について、
稲生に話した。
そして、ルナリオンの話を身振り手振りで
稲生に話して、まず、稲生の感想を尋ねた。
「稲生様は、どう思われますか?」
稲生は、右腕でメープルの髪を撫でながら、答えた。
「とりあえず、才籐さんが無事だったことに感謝します」
きょとんとするメープルだった。
そして、稲生の次の言葉を待った。
「その話からのあくまで、私の感想ですよ。
あくまで感想ですよ、メープル、いいですね」
と稲生は念を押した。
義手、義足、義頭、義胴の6つ。
稲生はあり得ないと思った。
義手と義足はまだしも義頭と義胴に関しては、
移植された人間は死んでいるのではないかと
稲生は考えた。
頭部のすげ替え、否、肉体を義頭に与えたのだろう。
義胴の場合は、一人の人間の腕、脚、頭を切断して、
接合したのではないか。
はなから、取り込まれるのが前提であったのだろう。
そして、取り込まれたもう一人は、儀式に
耐えられなかった者のなれ果てであると稲生は想像した。
「形状記憶合金、いやいや、まさかね。
あり得ない、妄想し過ぎかな」
と稲生は、独り言のように呟いた。
メープルが稲生の胸に顔を埋め、尋ねた。
「形状記憶合金?」
「いや、僕のいた世界では、金属に熱を加え、
金属の結晶構造を変態させて形を
変える技術があったもので。
その何といいますか、熱による伝達でなく、
人から伝えられる電気的なシグナルを
魔術的な要素で合金に無限の形状を
記憶させているのかなと」
メープルは、いまいち、理解が
及んでいないようだった。
「それはなんのために?
義足や義手として、用いるなら、
記憶させるよりも使用者の意思を
円滑に反映させるだけでいいのでは?」
「6つにして1つですか、
6人で各部位に様々な形状を記憶させれば、
効率よいと思いませんか?」
稲生がメープルの問いに問いで返した。
メープルは、稲生の言葉に形の良い眉を顰めた。
稲生の言わんとしたことが
何となく理解できたからであった。
「最後に6つの部位は、一つになり、
各々が記憶してきたことが一つに纏まり、
そして、一つの鉄人形が完成するのかな」
と稲生がメープルの背中を撫でながら、答えた。
「えっと、それは何のためにでしょうか?」
とメープルが尋ねた。
「さあ、そこまでは分かりかねますが、
面白そうな研究だと老公が
思ったからではないですかね。
まあ、全ては想像の域を超えていませんから、
老公の残した取扱説明書を読んでみないと何とも」
と稲生は老公の真意が解らないためにそう答えた。
「魔道義手取扱説明書を
読んだ才籐が昔、言っていました。
入門編、初級編、中級編、上級編、応用編があると。
私も入門編しか知りません。
恐らく散逸したか、持ち去られたのでしょうね。
その辺りにこの腕の真のありようが
書かれているのかもしれません。」
稲生は、メープルを抱きしめて、耳元で囁いた。
「魔道義手取扱説明書の続編を集めることから、
始めるのが良さそうですね。
それよりもまずは、この時、この瞬間を楽しみましょう」
言い終えると、稲生は激しくメープルにキスをした。
そして、メープルも稲生に応じた。
最早、逢引を隠そうとせず、商館で堂々と
同衾する二人に別室のアルバンは頭を抱えていた。
ベッドでの一戦が終わった後に昼間の出来事について、
稲生に話した。
そして、ルナリオンの話を身振り手振りで
稲生に話して、まず、稲生の感想を尋ねた。
「稲生様は、どう思われますか?」
稲生は、右腕でメープルの髪を撫でながら、答えた。
「とりあえず、才籐さんが無事だったことに感謝します」
きょとんとするメープルだった。
そして、稲生の次の言葉を待った。
「その話からのあくまで、私の感想ですよ。
あくまで感想ですよ、メープル、いいですね」
と稲生は念を押した。
義手、義足、義頭、義胴の6つ。
稲生はあり得ないと思った。
義手と義足はまだしも義頭と義胴に関しては、
移植された人間は死んでいるのではないかと
稲生は考えた。
頭部のすげ替え、否、肉体を義頭に与えたのだろう。
義胴の場合は、一人の人間の腕、脚、頭を切断して、
接合したのではないか。
はなから、取り込まれるのが前提であったのだろう。
そして、取り込まれたもう一人は、儀式に
耐えられなかった者のなれ果てであると稲生は想像した。
「形状記憶合金、いやいや、まさかね。
あり得ない、妄想し過ぎかな」
と稲生は、独り言のように呟いた。
メープルが稲生の胸に顔を埋め、尋ねた。
「形状記憶合金?」
「いや、僕のいた世界では、金属に熱を加え、
金属の結晶構造を変態させて形を
変える技術があったもので。
その何といいますか、熱による伝達でなく、
人から伝えられる電気的なシグナルを
魔術的な要素で合金に無限の形状を
記憶させているのかなと」
メープルは、いまいち、理解が
及んでいないようだった。
「それはなんのために?
義足や義手として、用いるなら、
記憶させるよりも使用者の意思を
円滑に反映させるだけでいいのでは?」
「6つにして1つですか、
6人で各部位に様々な形状を記憶させれば、
効率よいと思いませんか?」
稲生がメープルの問いに問いで返した。
メープルは、稲生の言葉に形の良い眉を顰めた。
稲生の言わんとしたことが
何となく理解できたからであった。
「最後に6つの部位は、一つになり、
各々が記憶してきたことが一つに纏まり、
そして、一つの鉄人形が完成するのかな」
と稲生がメープルの背中を撫でながら、答えた。
「えっと、それは何のためにでしょうか?」
とメープルが尋ねた。
「さあ、そこまでは分かりかねますが、
面白そうな研究だと老公が
思ったからではないですかね。
まあ、全ては想像の域を超えていませんから、
老公の残した取扱説明書を読んでみないと何とも」
と稲生は老公の真意が解らないためにそう答えた。
「魔道義手取扱説明書を
読んだ才籐が昔、言っていました。
入門編、初級編、中級編、上級編、応用編があると。
私も入門編しか知りません。
恐らく散逸したか、持ち去られたのでしょうね。
その辺りにこの腕の真のありようが
書かれているのかもしれません。」
稲生は、メープルを抱きしめて、耳元で囁いた。
「魔道義手取扱説明書の続編を集めることから、
始めるのが良さそうですね。
それよりもまずは、この時、この瞬間を楽しみましょう」
言い終えると、稲生は激しくメープルにキスをした。
そして、メープルも稲生に応じた。
最早、逢引を隠そうとせず、商館で堂々と
同衾する二人に別室のアルバンは頭を抱えていた。
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