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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
呼び出し(九之池)
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「ん、ンンン?」
九之池はざわつきの原因となるものが分かった。
傭兵の募集がまた、掲示されていた。
「九之池さん、どうもバルザース帝国の使者が
帰国したみたいです。
どうやら、レズェエフ王国との交渉が決裂したみたいです」
とルージェナが九之池に伝えた。
「うーんうーん、また戦になるのかな。
あまり出征したくないなぁ」
と頭を悩ます九之池だった。
ベルトゥル公国の大公は、頭を悩ませていた。
二か国間の交渉が決裂し、バルザース帝国と
レズェエフ王国の使者が帰国してしまった。
レズェエフ王国側はどうも和解に応じる気が
なかったように感じられて、ベルトゥル公国としては、
難しい局面に立たされていた。
執務室にサンドリーヌ伯爵とシリア卿が呼ばれ、
今後の方針について、意見を求められた。
「両国が国境を固めて、睨み合う程度で済めばよいのですが。
この機に漁夫の利を狙う国々も現れましょう。
両国以外への注意も必要です」
とシリア卿。
「財政にはまだ、余裕があります。
前回と同じ規模の軍を展開することは可能です。
傭兵の徴募も開始しております。
前回と同様、他国への牽制のため、
公国本軍は、公都に待機といたしますか?」
とサンドリーヌ伯爵。
「ふむ、どう転ぶか分からぬが、そのようにするかのう。
シリア卿、他国の動向により注意してもらおう。
軍を動かすなら、我が国の召喚者も
出征させるように。
そろそろ、国内での活躍のみならず、
他国へ響き渡るような活躍もしてほしいものよ。
やつに兵を付けて、差配させよ。
まずは、30名ほどで様子をみることにするかのう。
出征する将軍に言い含めておくように。
サンドリーヌ卿、よいな」
サンドリーヌ伯爵は、九之池の国内の活躍が
単なる魔犬や小鬼の討伐であることを知っていたが、
そんなことはおくびにも出さずに慎ましく命令を受けた。
ベルトゥル大公が下がってよろしいと鷹揚に言い、
二人は大公の執務室を出た。
「シリア卿、九之池どのは随分と前回の件で
株を上げたようですな。
シリア卿に任せたのは失敗だったかな」
とサンドリーヌ伯爵が笑いながら、言った。
「では、今からでもどうぞ。
頭痛の種が一つ減るので、歓迎しますよ」
と真顔でシリア卿が答えると、
サンドリーヌ伯爵は慌てて、否定した。
「いやいやいや、これはまいった。
どうも冗談が通じませんな。
シリア卿らしくもない」
「奴の件は、冗談では済まないことしかありませんので」
シリア卿の秀麗な容姿が奇妙に歪んでいた。
サンドリーヌ伯爵は、流石に拙いと思ったのか、頭を下げた。
その後は、九之池の話題を避け、当たり障りのない話を
しながら、お互いに帰途についた。
シリア卿は帰宅すると、ヘーグマンを呼び、
出征の準備をするように指示をだした。
そして、エドゥアールに、兵站の準備を
進める様に指示をした。
その他、幾人かの側近に指示を出し、
最後に九之池を呼び出した。
先ほど打ち合わせをした側近たちとは、
全く違う物言いで畏まる九之池に言った。
「おい、貴様の心配事が一つ減ったぞ。
大公への拝謁の件だが、中止になった」
九之池は、嬉しさを隠し切れずに
にんまりとなってしまった。
拝謁が二度も中止となり、俺ってもしかして、
運気上昇中とまでこの場で思ってしまった。
そんな九之池を見て、シリア卿はイラっとしたが、
すぐに満面の笑みとなった。
「九之池、一軍の将として、出征して
貰うことになりそうだ。
指揮する兵員は、30名と少ないが、将待遇だ。
いいか、実際に戦になったら、
先陣をきって、敵軍に向かえ。
それがお前の仕事だ」
と言って、九之池の歪んだ顔を見て、にんまりとした。
そう、こいつが幸せそうな顔をすると
何故か、最近、イラっとするが、こいつが苦痛に
歪む顔をすると、どうも嬉しくなってしまうシリア卿だった。
九之池はざわつきの原因となるものが分かった。
傭兵の募集がまた、掲示されていた。
「九之池さん、どうもバルザース帝国の使者が
帰国したみたいです。
どうやら、レズェエフ王国との交渉が決裂したみたいです」
とルージェナが九之池に伝えた。
「うーんうーん、また戦になるのかな。
あまり出征したくないなぁ」
と頭を悩ます九之池だった。
ベルトゥル公国の大公は、頭を悩ませていた。
二か国間の交渉が決裂し、バルザース帝国と
レズェエフ王国の使者が帰国してしまった。
レズェエフ王国側はどうも和解に応じる気が
なかったように感じられて、ベルトゥル公国としては、
難しい局面に立たされていた。
執務室にサンドリーヌ伯爵とシリア卿が呼ばれ、
今後の方針について、意見を求められた。
「両国が国境を固めて、睨み合う程度で済めばよいのですが。
この機に漁夫の利を狙う国々も現れましょう。
両国以外への注意も必要です」
とシリア卿。
「財政にはまだ、余裕があります。
前回と同じ規模の軍を展開することは可能です。
傭兵の徴募も開始しております。
前回と同様、他国への牽制のため、
公国本軍は、公都に待機といたしますか?」
とサンドリーヌ伯爵。
「ふむ、どう転ぶか分からぬが、そのようにするかのう。
シリア卿、他国の動向により注意してもらおう。
軍を動かすなら、我が国の召喚者も
出征させるように。
そろそろ、国内での活躍のみならず、
他国へ響き渡るような活躍もしてほしいものよ。
やつに兵を付けて、差配させよ。
まずは、30名ほどで様子をみることにするかのう。
出征する将軍に言い含めておくように。
サンドリーヌ卿、よいな」
サンドリーヌ伯爵は、九之池の国内の活躍が
単なる魔犬や小鬼の討伐であることを知っていたが、
そんなことはおくびにも出さずに慎ましく命令を受けた。
ベルトゥル大公が下がってよろしいと鷹揚に言い、
二人は大公の執務室を出た。
「シリア卿、九之池どのは随分と前回の件で
株を上げたようですな。
シリア卿に任せたのは失敗だったかな」
とサンドリーヌ伯爵が笑いながら、言った。
「では、今からでもどうぞ。
頭痛の種が一つ減るので、歓迎しますよ」
と真顔でシリア卿が答えると、
サンドリーヌ伯爵は慌てて、否定した。
「いやいやいや、これはまいった。
どうも冗談が通じませんな。
シリア卿らしくもない」
「奴の件は、冗談では済まないことしかありませんので」
シリア卿の秀麗な容姿が奇妙に歪んでいた。
サンドリーヌ伯爵は、流石に拙いと思ったのか、頭を下げた。
その後は、九之池の話題を避け、当たり障りのない話を
しながら、お互いに帰途についた。
シリア卿は帰宅すると、ヘーグマンを呼び、
出征の準備をするように指示をだした。
そして、エドゥアールに、兵站の準備を
進める様に指示をした。
その他、幾人かの側近に指示を出し、
最後に九之池を呼び出した。
先ほど打ち合わせをした側近たちとは、
全く違う物言いで畏まる九之池に言った。
「おい、貴様の心配事が一つ減ったぞ。
大公への拝謁の件だが、中止になった」
九之池は、嬉しさを隠し切れずに
にんまりとなってしまった。
拝謁が二度も中止となり、俺ってもしかして、
運気上昇中とまでこの場で思ってしまった。
そんな九之池を見て、シリア卿はイラっとしたが、
すぐに満面の笑みとなった。
「九之池、一軍の将として、出征して
貰うことになりそうだ。
指揮する兵員は、30名と少ないが、将待遇だ。
いいか、実際に戦になったら、
先陣をきって、敵軍に向かえ。
それがお前の仕事だ」
と言って、九之池の歪んだ顔を見て、にんまりとした。
そう、こいつが幸せそうな顔をすると
何故か、最近、イラっとするが、こいつが苦痛に
歪む顔をすると、どうも嬉しくなってしまうシリア卿だった。
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