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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編

決裂(九之池)

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九之池傭兵団は、公都に向かっていた。
証拠なるものは、1/3ほど欠けた小鬼の顔と
ヘーグマンが両断した鎧だけであった。
九之池は、荷車に積まれたそれらを
忌々しそうに眺めていた。
馬車の振動でたまに鎧が転がり、九之池にぶつかる。
そのことが余計に九之池をイラつかせた。

いらいらが止まらない九之池は、
シリア卿への説明と釈明が上手く纏まらず、
時間が経てば経つほど、不機嫌になっていた。

「九之池さん、すみませんでした。
本当にごめんなさい」
と夜営をしていると、ルージェナが九之池に謝った。

「ふん、気にしなくていいよ。
死人がでるよりましだったでしょ。もういいからさ」
と言いう九之池の言葉には棘があった。

夜だったこともあるのだろう、
薪が燃える音以外なく、九之池の言葉は暗闇の中に響いた。
九之池の言葉を聞いた3人ほどの
若い冒険者たちが九之池に詰め寄った。

「なになに、僕は別に謝罪を
受け入れていない訳じゃないでしょ。
なんか否定的なこと言った?」
詰め寄る彼らに九之池が不愉快そうに告げた。

「いえ、確かに言葉はそうでしたが、
声にはその思いが感じられませんでしたよ」

「そうだ!その通りだ。
彼女のお陰で助かったメンバーもいるしさ」

「いくら団長だって、
好き放題していいわけじゃないと思います」

口々に九之池を糾弾する声を
あげる若いメンバーだった。

こいつら頭がおかしいのか?
一時雇用の分際で、雇い主たる俺に
盾突くとかあり得ない暴挙。
九之池は前の世界での自分のありようと
比較して、彼等の態度に怒るより呆れていた。
九之池は理不尽なことでも道理の通らぬことでも
雇い主側の言うことには、盾突かず、
粛々と与えられた仕事を行っていた。

少し腕っぷしが立つからといって、
調子にのっているこいつらに先輩として
少し人生の経験を積んで貰うことにした。

「ねえねえ、君たち一体、どういうつもりなの。
君たちが騎乗している馬、食料、
それって誰が用意したの?
これから、シリア卿やベルトゥル大公に
説明をするのは誰なの?君たち、やれるの?
安い正義感を振りかざすのもいいけど、
相手を選びなよ」
黙っている若者たちを一瞥すると続けた。

「そもそもルージェナを責めてないでしょ、僕はぁー。
外野が勝手に盛り上がんないでよね。
こっちは、色々と準備で忙しいのにさ」

「これ以上、何もないなら、不問にするから、解散して。
明日の行軍の備えなよな」
と九之池が結ぶと、ルージェナが
冒険者たちに向かって言った。
「みなさん、ねっねっ、休みましょう。
明日に備えて、やすみましょう」
九之池と冒険者たちが距離を取るように間に入った。

その場から動かず、何も言わずに
九之池を睨む冒険者たちに九之池が、一言、
「さっさと、頭を下げて、寝たらどうなのさ」

「きっ貴様!」
「最早、我慢出来ぬ」
「許せないのは、こっちです」
三者三葉に言うと、各々、剣を抜いた。

九之池は焦った。
まさか剣を抜くとは、思ってもいなかったからだった。
顔を左右に振り、身体中から汗が吹き出し、
挙動不審な動きをする九之池だった。
ちょっと懲らしめてやるつもりが、
とんでもないことに発展してしまい、
事態をどのように収集させるか
全く想像のつかない九之池だった。
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