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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
戦略(九之池)
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九之池のために水を取りに馬車に
ルージェナが向かうと、ヘーグマンが
護衛のためについて来た。
「ふむ、ルージェナにしては珍しく感情が
昂っていましたのぉ」
と言って、ヘーグマンが微笑んだ。
「九之池さんは、私をペットかなんかと
勘違いしていませんか?」
といまだにイライラしているルージェナだった。
「ペットとは申し上げませんが、娘のようには
思っていますかと。最近のルージェナの行動は、
娘が親離れする心境で寂しかったのでしょう」
「娘、そう言われましても。
九之池さんは、異性の男性で、
それに死刑になるところを助けてくれた方で。
だから、九之池さんが困るような事柄が
なるべく生じないようにと思って」
とルージェナが下を俯きながら、脈絡なく、
言葉を綴った。
「九之池殿も分かっています。
ただ、ルージェナ、今まであなたが隣に
いるのが当たり前でしたらな。
心配せずともよろしいかと」
ルージェナは頷くと、水袋を取り、
九之池の元に戻った。
探索から戻った団員たちが全員、戻ると、
各チーム、報告を始めた。
どのチームも報告の内容はほぼ同じだった。
村人は一人も見つからなかった。
争った形跡があり、血のりや腐った肉片はあるが、
死体が一切見つからなかった。
報告を聞いた九之池は、嫌な予感に囚われていた。
落ち着かない様子で周りを見るが、
何の意見も見いだせず、この場所に宿営することにした。
闇が大地を包むと共に生暖かい
纏わりつくような風が時節、拭いていた。
そして、普段より、重苦しい雰囲気が
傭兵団を包んでいた。
「ルージェナ、そのどう思う?
あれかな、もどきかな」
と九之池が恐る恐る食事中に尋ねた。
「考え過ぎのような気がしますが、
もしそうだとしたら、即時、撤退にしますか?
恐らくもどきと交戦すれば、
亡くなる人がでます。それとも」
と言って、リーダーの九之池に判断を仰いだ。
「いやいや、死人が出るのが分かってて、
戦うとか無理っしょ。
それにそうそう、こんな短い期間で
何度ももどきと会敵するとかあり得るのかな。
野盗類なのかなぁ」
答えというより感想を述べて、
方針を定めることを忌避する九之池だった。
「ひとまず、問題の廃村付近で、
斥候を送りましょう」
とルージェナが意見を出すと、
「もどきかどうか、分かるのは僕かぁ。
僕とヘーグマンさんと何名で行くよ。
グレッグさんとルージェナで団を
纏めておく形でよろ」
「でしたら、ヘーグマンさんと私が
交代でお願いします。
冒険者を抑えておくには
ヘーグマンさんの方がいいでしょうから」
九之池は気になり、説明を求めた。
「ええっと、多少の不満があるようですし、
火急の際に有無を言わさずに冒険者を動かすには
私よりヘーグマンさんの方が良いかと。
冒険者は強い人間に従うものですからね」
最初はギクシャクした会話であったが、
いつの間にか二人の会話のテンポにもどっていた。
ルージェナが向かうと、ヘーグマンが
護衛のためについて来た。
「ふむ、ルージェナにしては珍しく感情が
昂っていましたのぉ」
と言って、ヘーグマンが微笑んだ。
「九之池さんは、私をペットかなんかと
勘違いしていませんか?」
といまだにイライラしているルージェナだった。
「ペットとは申し上げませんが、娘のようには
思っていますかと。最近のルージェナの行動は、
娘が親離れする心境で寂しかったのでしょう」
「娘、そう言われましても。
九之池さんは、異性の男性で、
それに死刑になるところを助けてくれた方で。
だから、九之池さんが困るような事柄が
なるべく生じないようにと思って」
とルージェナが下を俯きながら、脈絡なく、
言葉を綴った。
「九之池殿も分かっています。
ただ、ルージェナ、今まであなたが隣に
いるのが当たり前でしたらな。
心配せずともよろしいかと」
ルージェナは頷くと、水袋を取り、
九之池の元に戻った。
探索から戻った団員たちが全員、戻ると、
各チーム、報告を始めた。
どのチームも報告の内容はほぼ同じだった。
村人は一人も見つからなかった。
争った形跡があり、血のりや腐った肉片はあるが、
死体が一切見つからなかった。
報告を聞いた九之池は、嫌な予感に囚われていた。
落ち着かない様子で周りを見るが、
何の意見も見いだせず、この場所に宿営することにした。
闇が大地を包むと共に生暖かい
纏わりつくような風が時節、拭いていた。
そして、普段より、重苦しい雰囲気が
傭兵団を包んでいた。
「ルージェナ、そのどう思う?
あれかな、もどきかな」
と九之池が恐る恐る食事中に尋ねた。
「考え過ぎのような気がしますが、
もしそうだとしたら、即時、撤退にしますか?
恐らくもどきと交戦すれば、
亡くなる人がでます。それとも」
と言って、リーダーの九之池に判断を仰いだ。
「いやいや、死人が出るのが分かってて、
戦うとか無理っしょ。
それにそうそう、こんな短い期間で
何度ももどきと会敵するとかあり得るのかな。
野盗類なのかなぁ」
答えというより感想を述べて、
方針を定めることを忌避する九之池だった。
「ひとまず、問題の廃村付近で、
斥候を送りましょう」
とルージェナが意見を出すと、
「もどきかどうか、分かるのは僕かぁ。
僕とヘーグマンさんと何名で行くよ。
グレッグさんとルージェナで団を
纏めておく形でよろ」
「でしたら、ヘーグマンさんと私が
交代でお願いします。
冒険者を抑えておくには
ヘーグマンさんの方がいいでしょうから」
九之池は気になり、説明を求めた。
「ええっと、多少の不満があるようですし、
火急の際に有無を言わさずに冒険者を動かすには
私よりヘーグマンさんの方が良いかと。
冒険者は強い人間に従うものですからね」
最初はギクシャクした会話であったが、
いつの間にか二人の会話のテンポにもどっていた。
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