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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
募集活動(九ノ池)
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九之池は飲み屋の端で、目立たぬようにちびちびと
酒を呑んでいた。
結成を祝しての乾杯が行われ、九之池を含む総勢18名が各々、
雄叫びを上げて、酒を煽っていた。
何人かのお調子者が酒のなみなみと注がれたジョッキを掲げて、
「我が黒豚傭兵団結成カンパーイ」
と何度も連呼していた。
「我らがリーダーの一声を」
と別の者が吠えた。
何人かの者が
「リーダーってルージェナさんじゃないんだ」
とひそひそと話していた。
九之池は端の方で、「ちっいらざること」と言って、舌打ちをした。
全員の注目を浴びて、九之池は早く何か言わなければと
焦った。
アルコールによる軽い酔いも手伝って、
身体中に汗をびっしりとかいていた。
「まっまーああー、仕事、、、です明後日から。
キョウハ、呑んでください」
九之池は、意味不明なことを小声で
震えながら、何とか言った。
一瞬、場の空気が淀み沈むが、
ルージェナが透き通る声で
「さてさてーみなさん。
リーダーからの一言もありましたので、呑みましょう」
と言い、ジョッキを掲げて、一気に飲み干した。
「おおおっー」
と歓声が至る所から上がり、
各々、手に持つジョッキの酒を飲みほした
九之池は、そんな酒場の狂乱を
冷めた目で見ていた。
そして、早く帰りたいと心の底から思った。
2日ほど前、九之池とルージェナは、
討伐に向かうためのメンバーを探していた。
しかし冒険者ギルドでうろうろするだけで、
一向に声をかけない九之池だった。
品定めをしているのかと九之池の行動を見て、
冒険者たちは思った。
1時間ほどうろうろするだけで、
何の進展もない九之池の行動であった。
ルージェナは、顔見知りの冒険者たちと話を
していたようだった。
九之池は、一時的なチームの結成と考えていたため、
受付に向かい、募集の張り紙を依頼することにした。
「すみません、討伐のメンバーを集めるのに
張り紙を出して欲しいのですけど?
討伐の実務は僕で。
責任者はシリア卿でお願いできます?」
「それは可能ですが、シリア卿からの
書状か何かを見せて頂けませんか?」
と受付が答えた。
「はっ?いや、そのぉないですが、
シリア卿が大公より勅命を受けているのは
知っていますよね?
その件なんですけど、必要?」
と九之池が立て続けに権力者の名前を出した。
しかし、受付は、その圧力に屈せずに飄々と答えた。
「シリア卿の名を記載するには、証書をお見せください。
ルールです。勅命だろうと守るべきことは守って貰います」
「ふーん、そうなんだ。
きみ、後でどうなっても知らないよ」
九之池は勅命や大公の名前を出したことで、
自分が偉くなったと勘違いしてしまったようだった。
受付の女性は、その言葉に怯んだが、九之池を睨みつけた。
受付で睨み合う二人をルージェナが発見すると、
急ぎその場に向かい、
「ちょっ、九之池さん、何をしているんですか!
すみません、すみません」
と受付の女性に頭を下げるルージェナだった。
そして、強引に九之池を引っ張り、自分のいた席に連れてきた。
「おいおい、ルージェナさんよ。
本当に大丈夫かよ。これがリーダーで!
まあ、報酬がいいから構わないけどよ。
ギルドと揉めるのは勘弁してくれ」
と貫禄のある男が九之池を一瞥して、言った。
「普段は確かにちょっと、頼りないですが、大丈夫です。
それにヘーグマンさんも同行しますので。
よければ、お知り合いも紹介して頂けると助かります」
とルージェナが可愛らしい表情でお願いをしていた。
「おうよ!何人か、暇な奴を見繕っておくわ」
と言って、男は席を立った
「ルージェナ、あれ、誰?」
むすっとして尋ねる九之池。
「いえ、よくここのギルドに出入りしている冒険者の方です。
ここの冒険者の古株の方です。
今日の午後には、幾人かの冒険者と
話ができると思いますよ」
と言って、ルージェナは微笑んだ。
「ふーん、まあどうでもいいけどさ。
午後から面接ってことね」
何となく面白くない九之池だった。
午後からの冒険者との面談で16名の参加が決まった。
九之池はへとへとだった。
最後の方は、まともな判断力が働いていない気がしたが、
人数は一先ず集まったことに安心した。
「結局、来た冒険者を全員、採用という形になりましたね。
大所帯ですが、九之池リーダー頑張りましょう」
ルージェナは、あれだけの面談の後にもかかわらず、
まだまだ、元気だった。
「そうそう、そうだねーがんばろー」
と疲れ切った九之池は、それだけを何とか答えた。
普段なら、リーダーという言葉に過剰反応するが
その気力も尽きているようだった。
ルージェナはヘロヘロの九之池の腕を引っ張り、
シリア卿の邸宅まで戻っていった。
酒を呑んでいた。
結成を祝しての乾杯が行われ、九之池を含む総勢18名が各々、
雄叫びを上げて、酒を煽っていた。
何人かのお調子者が酒のなみなみと注がれたジョッキを掲げて、
「我が黒豚傭兵団結成カンパーイ」
と何度も連呼していた。
「我らがリーダーの一声を」
と別の者が吠えた。
何人かの者が
「リーダーってルージェナさんじゃないんだ」
とひそひそと話していた。
九之池は端の方で、「ちっいらざること」と言って、舌打ちをした。
全員の注目を浴びて、九之池は早く何か言わなければと
焦った。
アルコールによる軽い酔いも手伝って、
身体中に汗をびっしりとかいていた。
「まっまーああー、仕事、、、です明後日から。
キョウハ、呑んでください」
九之池は、意味不明なことを小声で
震えながら、何とか言った。
一瞬、場の空気が淀み沈むが、
ルージェナが透き通る声で
「さてさてーみなさん。
リーダーからの一言もありましたので、呑みましょう」
と言い、ジョッキを掲げて、一気に飲み干した。
「おおおっー」
と歓声が至る所から上がり、
各々、手に持つジョッキの酒を飲みほした
九之池は、そんな酒場の狂乱を
冷めた目で見ていた。
そして、早く帰りたいと心の底から思った。
2日ほど前、九之池とルージェナは、
討伐に向かうためのメンバーを探していた。
しかし冒険者ギルドでうろうろするだけで、
一向に声をかけない九之池だった。
品定めをしているのかと九之池の行動を見て、
冒険者たちは思った。
1時間ほどうろうろするだけで、
何の進展もない九之池の行動であった。
ルージェナは、顔見知りの冒険者たちと話を
していたようだった。
九之池は、一時的なチームの結成と考えていたため、
受付に向かい、募集の張り紙を依頼することにした。
「すみません、討伐のメンバーを集めるのに
張り紙を出して欲しいのですけど?
討伐の実務は僕で。
責任者はシリア卿でお願いできます?」
「それは可能ですが、シリア卿からの
書状か何かを見せて頂けませんか?」
と受付が答えた。
「はっ?いや、そのぉないですが、
シリア卿が大公より勅命を受けているのは
知っていますよね?
その件なんですけど、必要?」
と九之池が立て続けに権力者の名前を出した。
しかし、受付は、その圧力に屈せずに飄々と答えた。
「シリア卿の名を記載するには、証書をお見せください。
ルールです。勅命だろうと守るべきことは守って貰います」
「ふーん、そうなんだ。
きみ、後でどうなっても知らないよ」
九之池は勅命や大公の名前を出したことで、
自分が偉くなったと勘違いしてしまったようだった。
受付の女性は、その言葉に怯んだが、九之池を睨みつけた。
受付で睨み合う二人をルージェナが発見すると、
急ぎその場に向かい、
「ちょっ、九之池さん、何をしているんですか!
すみません、すみません」
と受付の女性に頭を下げるルージェナだった。
そして、強引に九之池を引っ張り、自分のいた席に連れてきた。
「おいおい、ルージェナさんよ。
本当に大丈夫かよ。これがリーダーで!
まあ、報酬がいいから構わないけどよ。
ギルドと揉めるのは勘弁してくれ」
と貫禄のある男が九之池を一瞥して、言った。
「普段は確かにちょっと、頼りないですが、大丈夫です。
それにヘーグマンさんも同行しますので。
よければ、お知り合いも紹介して頂けると助かります」
とルージェナが可愛らしい表情でお願いをしていた。
「おうよ!何人か、暇な奴を見繕っておくわ」
と言って、男は席を立った
「ルージェナ、あれ、誰?」
むすっとして尋ねる九之池。
「いえ、よくここのギルドに出入りしている冒険者の方です。
ここの冒険者の古株の方です。
今日の午後には、幾人かの冒険者と
話ができると思いますよ」
と言って、ルージェナは微笑んだ。
「ふーん、まあどうでもいいけどさ。
午後から面接ってことね」
何となく面白くない九之池だった。
午後からの冒険者との面談で16名の参加が決まった。
九之池はへとへとだった。
最後の方は、まともな判断力が働いていない気がしたが、
人数は一先ず集まったことに安心した。
「結局、来た冒険者を全員、採用という形になりましたね。
大所帯ですが、九之池リーダー頑張りましょう」
ルージェナは、あれだけの面談の後にもかかわらず、
まだまだ、元気だった。
「そうそう、そうだねーがんばろー」
と疲れ切った九之池は、それだけを何とか答えた。
普段なら、リーダーという言葉に過剰反応するが
その気力も尽きているようだった。
ルージェナはヘロヘロの九之池の腕を引っ張り、
シリア卿の邸宅まで戻っていった。
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