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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編
討伐依頼(九ノ池)
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同じころベルトゥル公国に帰還した九之池は、
時間を持て余していた。
何気なしにシリア卿の屋敷で衣食住を
得て生活をしているが、いつ何時それが無くなるか
流石の九之池でも若干の不安を感じていた。
近年稀にみる大会戦であったが、
ベルトゥル公国に状況は有利に進み、
以前と同じ立ち位置を確保できそうであった。
バルザースとレズェエフの仲裁のため、
国政に携わる貴族たちは、毎日が忙しいようであった。
「ルージェナ、時間もあるし、特にやることないし、
ギルドで仕事でも受けようか?
ランクアップもさせておきたいしね」
と九之池がごろごろしながら、答えた。
「そうですね。エドゥアールさんに確認しておきます。
それとですが、、、そのランクというようなものは
ギルドにありませんよ。
前にも言いましたけど、あるのは、
名声や通り名のようなものだけですよ」
とルージェナがランクにこだわる九之池に言った。
「うーん、ランクがあったほうが
依頼を受ける際の参考になるんだけどね。
ところでルージェナ、僕らの通り名というか
チーム名ってあるの?」
九之池が素朴な疑問を尋ねた。
「えっ?ライセンス証に記載していますよ」
とびっくりしたように答えるルージェナであった。
ふーん、納得して、ライセンス証を確認すると、
そこには、「漆黒の翼を持つ猛き猪」と書かれていた。
「えっ」
と言って、絶句する九之池。
そんな九之池を見て、
「えっ」
と言って、驚くルージェナ。
「いやいやいや、マジっ?
これ、考えたの僕?書き直しあり?」
と九之池。
「はい、真剣に悩んで書いていましたよ。
それと書き直しもありですが、費用が必要です」
とにっこり答えるルージェナ。
「ふうぅぅー、とりあえず、ギルドに行こうか」
と肩を落として、準備を始める九之池だった。
そんな九之池を見て、ルージェナも準備を始めた。
「あっ、こんにちはー漆黒の豚さん」
と若い受付の男性が愛想よく声をかけてきた。
その声が聞こえた周囲の冒険者が
一斉に九之池に注目した。
一時、近隣の魔物や魔獣を狩りに狩ったため、
それなりに冒険者の間では知られた存在であった。
九之池は、内心、豚じゃない
猪だといきり立ったが、強く訂正を
促すほどの度胸もなく、愛想笑いを受付に送り、
依頼掲示板に向かった。
ルージェナも慣れたのか、気にせず、
一心不乱に掲示されている依頼を見ていた。
「うーん、何か多いね。
戦に行く前より、魔獣討伐が増えてないかな?」
と九之池。
「確実に増えています。
先の戦で冒険者が傭兵として、
雇われていたとはいえ、ちょっと不自然ですね」
と首を傾げるルージェナ。
「まー片っ端から、依頼を受けて、稼ぐかな」
と九之池がつぶやき、ルージェナと受付に向かった。
「お久しぶりです。魔獣狩りを受けて頂けますか!
ありがとうございます。
最近、頻発していて、対処に困る地域が
多いんですよね。
豚さんたちに動いてもらえれば、
少しは手が回るようになるかもしれません」
と言って、幾つかの案件を手渡す。
「えっ、一件じゃないの?」
と驚いたように九之池が尋ねた。
ルージェナは、豚と呼ばれたことに
眉を顰めていたが、九之池が否定しないために
口を挟まなかった。
「実績のある方々ですし、
ここは依頼先が近いですし、
そもそも公国もギルドも手が回りませんので、
よろしくお願いします」
と言って、受け付けは頭を下げた。
「あっそうですか。了解しました。
それと、豚でなく猪です」
と九之池が依頼リストを受け取り、最後に皮肉った。
受け付けは微笑みながら、
「ええ、心得ていますが、
今や豚の方で広まっていますので、
ギルドも仕方なしに豚で通すようにしています」
と言った。
いつのまにやら知らぬ所で
通り名が違って広まっているとは思わず、
九之池とルージェナは何とも釈然としない気分で
屋敷に戻った。
時間を持て余していた。
何気なしにシリア卿の屋敷で衣食住を
得て生活をしているが、いつ何時それが無くなるか
流石の九之池でも若干の不安を感じていた。
近年稀にみる大会戦であったが、
ベルトゥル公国に状況は有利に進み、
以前と同じ立ち位置を確保できそうであった。
バルザースとレズェエフの仲裁のため、
国政に携わる貴族たちは、毎日が忙しいようであった。
「ルージェナ、時間もあるし、特にやることないし、
ギルドで仕事でも受けようか?
ランクアップもさせておきたいしね」
と九之池がごろごろしながら、答えた。
「そうですね。エドゥアールさんに確認しておきます。
それとですが、、、そのランクというようなものは
ギルドにありませんよ。
前にも言いましたけど、あるのは、
名声や通り名のようなものだけですよ」
とルージェナがランクにこだわる九之池に言った。
「うーん、ランクがあったほうが
依頼を受ける際の参考になるんだけどね。
ところでルージェナ、僕らの通り名というか
チーム名ってあるの?」
九之池が素朴な疑問を尋ねた。
「えっ?ライセンス証に記載していますよ」
とびっくりしたように答えるルージェナであった。
ふーん、納得して、ライセンス証を確認すると、
そこには、「漆黒の翼を持つ猛き猪」と書かれていた。
「えっ」
と言って、絶句する九之池。
そんな九之池を見て、
「えっ」
と言って、驚くルージェナ。
「いやいやいや、マジっ?
これ、考えたの僕?書き直しあり?」
と九之池。
「はい、真剣に悩んで書いていましたよ。
それと書き直しもありですが、費用が必要です」
とにっこり答えるルージェナ。
「ふうぅぅー、とりあえず、ギルドに行こうか」
と肩を落として、準備を始める九之池だった。
そんな九之池を見て、ルージェナも準備を始めた。
「あっ、こんにちはー漆黒の豚さん」
と若い受付の男性が愛想よく声をかけてきた。
その声が聞こえた周囲の冒険者が
一斉に九之池に注目した。
一時、近隣の魔物や魔獣を狩りに狩ったため、
それなりに冒険者の間では知られた存在であった。
九之池は、内心、豚じゃない
猪だといきり立ったが、強く訂正を
促すほどの度胸もなく、愛想笑いを受付に送り、
依頼掲示板に向かった。
ルージェナも慣れたのか、気にせず、
一心不乱に掲示されている依頼を見ていた。
「うーん、何か多いね。
戦に行く前より、魔獣討伐が増えてないかな?」
と九之池。
「確実に増えています。
先の戦で冒険者が傭兵として、
雇われていたとはいえ、ちょっと不自然ですね」
と首を傾げるルージェナ。
「まー片っ端から、依頼を受けて、稼ぐかな」
と九之池がつぶやき、ルージェナと受付に向かった。
「お久しぶりです。魔獣狩りを受けて頂けますか!
ありがとうございます。
最近、頻発していて、対処に困る地域が
多いんですよね。
豚さんたちに動いてもらえれば、
少しは手が回るようになるかもしれません」
と言って、幾つかの案件を手渡す。
「えっ、一件じゃないの?」
と驚いたように九之池が尋ねた。
ルージェナは、豚と呼ばれたことに
眉を顰めていたが、九之池が否定しないために
口を挟まなかった。
「実績のある方々ですし、
ここは依頼先が近いですし、
そもそも公国もギルドも手が回りませんので、
よろしくお願いします」
と言って、受け付けは頭を下げた。
「あっそうですか。了解しました。
それと、豚でなく猪です」
と九之池が依頼リストを受け取り、最後に皮肉った。
受け付けは微笑みながら、
「ええ、心得ていますが、
今や豚の方で広まっていますので、
ギルドも仕方なしに豚で通すようにしています」
と言った。
いつのまにやら知らぬ所で
通り名が違って広まっているとは思わず、
九之池とルージェナは何とも釈然としない気分で
屋敷に戻った。
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