起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

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森の獣 3章 諸国動乱の刻。暗躍する者たち編

暇な人(才籐、九ノ池)

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ベルトゥル公国軍にて、九之池は
戦場にあるにもかかわらず、だらけていた。
軍特有の規律が彼を律すると思いきや、
軍全体が弛緩した雰囲気に包まれていた。
激突した両軍に多数の戦死者をだし、
痛み分けに終わったとの情報が軍を支配し、
大雨による行軍の遅れの理由、
ベルトゥル公国に有利な事柄が続いて、
戦が終了したようだった。

「あー暇すぎ。戦ってこんなもんなんだ」
と実際に戦場に立つことのなかった
九之池がのほほんと言った。

「九之池さん、ベルトゥル公国は
この大国間を結ぶ行路に位置する小国ですよ。
強みは、外交と謀略ですよ。
軍は、建前で動かすだけで、あっても局地戦くらいです。
内戦の方が多いかもしれません」
とルージェナが九之池に説明をした。

「じゃーこれから、あの迷惑な二か国の
仲裁に入る訳?バランスをとるってことかな」

「そういうことになりますね。
近年稀にみる大会戦だったから、
かなりのお金が動くと思いますよ」
とルージェナが補足説明をした。

九之池は説明を聞きながら、
流石は元大貴族だっただけに詳しいなあと思った。
まあ、才籐さんが出征している訳ないよなと思い、
眠くなったのか、馬車でごろりと横になり、眠りに落ちた。
「ちょっ九之池さん、寝るにはまだ、早すぎです。
また、夜中、寝られなくなりますよ」
と慌てて、九之池を起こすルージェナだった。

肥沃な大地に腐臭を残し、痛み分けに
終わった両軍は、ベルトゥル公国の仲裁を
受け入れて、撤収を開始していた。
交渉の席は、ベルトゥル公国の公都にて
行われる予定であった。
戦の規模によらず、公国が建国されて以来の
伝統であった。

「しっかし、良く分からないな。
第三国で戦後の交渉をするってのも。
結局、領土の増減も左程なく、
金で解決するってことじゃ
何が目的かよくわからないな」
と才籐がヴェンツに診察をして貰いながら、
感想を述べた。

「肥えるのは、王侯貴族のみです。
そして、彼等は、財源が乏しくなると、
戦を起こし、ベルトゥル公国から、
金を受け取るのですよ。いわゆる出来レースです。
しかし、今回の戦は、違います。
あまりにも戦死者が多く、動員された兵力も
普段とまるで違います」
とヴェンツが説明をした。
続けて、才籐の左脚について、診察結果を伝えた。

「結論から申し上げますと、
特に何も見受けられませんが、
帝都に戻ってから、毒や呪いの魔術に
詳しい方に見て貰った方が得策でしょうね。
魔法のレベルであったら、
その痕跡を見つけるのは難しいですから」
何かひっかかるものがヴェンツにあるのか、
そう才籐に助言した。

「了解っ。ビルギットにでも相談するかな」

「彼女なら、問題ないでしょうね。
お値段は高額になりそうですが、
お薦めします」
とヴェンツも賛同した。

「サンキューな!
これから、従者に会ってくるわ」
と才籐は言い残し、ノーブルに会いに向かった。

「おいおい、冗談だろ。いないのかよ」
才籐は、輜重隊にいた兵員にノーブルの所在を
尋ねたが、誰もが首を傾げて、知らない、
分からないと答えた。

その後、才籐は、あちこちを探すが、
彼のいた痕跡すら見つける事が出来なかった。
戦いに巻き込まれて、死んでいないことを
祈りつつ、帝都へ撤収した。
 道中、たまにチクリチクリチクリと
太腿に針を刺されるような痛みが走るが、
何も異常が見当たらず、才籐は放置した。
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