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森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる

逃走

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 魔人は全く動かなかった。
そして、お互いに無言であった。

「えっと、それは動くのかな?待った方がいい?」
沈黙に耐えられなくなった九之池が
人間もどきに尋ねた。

「いや、失敗」
珍しく、目の前の人間もどきが短く答えた。

 次の瞬間、魔人は真っ二つになっていた。
ヘーグマンが魔人を一閃した。

「ふむ、終わりましたぞ。では、あの人間を拘束して、
事情を伺いましょう」
とヘーグマンが九之池たちに言った。

「そっそうですね。それの方が良さそうですね。
才藤さんかルージェナ、ロープ持っていますか?」
と九之池は、同意した。

 九ノ池はロープをルージェナから受け取り、
才籐と恐る恐るロープを掛けようと近づいた。
いつの間にか、人間もどきは、ぶつぶつと呟いていたが、
何を言っているのか二人には理解できなかった。

「魂の強度、、、が、足りない、いくら重ね、、
無駄のよ、だな、、、使う、、、人間ん、、
格、魔、   それと、、、召、、者、
ここ、は、、手、入ら、い。
集めた魂は、無駄、、っ、か」

 二人はロープで縛り、立たせようとすると、
はじめて、縛られたことに気づいたようだった。
そして、何事か警告してきた。

「もうここで人間を捕獲して、実験する必要は
なくなりましたので、ここから退去します。
ここの片づけは、あなたがたでお願いします。
ふむ、ロープが邪魔です。
解くのも面倒でしょうから、腐食させましょう。
集めた素体は、いかように使って頂いても結構です。
では、さようなら」
と言って、一度、手を合わせて、ぶつぶつを唱えると、
その人間もどきの後方の壁一面、上、下、後方から、
腐った死体が溢れ出てきた。

 それと同時にヘーグマンが人間もどきを
上下左右に切り裂いた。
 切り裂かれた肉体はあふれ出る死体に飲み込まれ、
見えなくなった。

 九之池、才籐、ルージェナは、あまりの情景に
身動きが出来なくなっていた。
 最深部は、腐臭が漂い、臭いと腐食した肉で
充満されそうな勢いだった。

「ハッ」
と腹の底から声を出したような低い大きい声が
一瞬、洞窟を支配した。

 その声で、三人は、我に返って、
ヘーグマンの指示を聞いた。
「後方を振り向かず、全力で洞窟を脱しなさい」

 三人は、頷き、全速力で洞窟の入り口に向かった。

 最後尾をヘーグマンが走りながら、
たまに大剣を振っていた。
その都度、ぐしゃりぐしゃりぐしゃりと何かが潰れる音が
洞窟内にこだました。

 最後尾のヘーグマンが洞窟の外にでると、すかさず、
ルージェナに
「炎です。炎の魔術を魔力が尽きるまで洞窟内に放ちなさい。
九之池さんと才籐さんは体力が続く限り洞窟内に燃えるものを
放り投げなさい。急ぎなさい、あれは外に出して
いいものではありません」
と矢継ぎ早に指示を出した。

 ルージェナはすぐに実行に移し、魔力の回復する魔石を
幾つか握り締めて、魔術を展開した。
 ヘーグマンも言い終えると直ぐに周りに
落ちている枯れ木や枯れ葉を集めて、洞窟の方へ
放り投げ始めた。

 才籐は、枯れ木を集めるのがめんどくさいのか、
そこら辺の木々を斬り、生木を放り投げ始めていた。
そのためか洞窟から外へ、
煙、火の粉が舞い上がっていた。
九之池は、言われた通りに
せっせと枯れ木を放り投げていた。

 どのくらいの時間をそうしていたのだろうか、
ルージェナはその場にへたり込み、九之池と才籐は
汗だくでその場に座り込んでいた。

 ヘーグマンは、その様子を見て、
「下がりなさい。ここは出ることも入ることも
してはなりません」
と言って、気合一閃、大剣を振り切ると、
洞窟の入り口付近が崩落して、
入り口を塞いでしまった。

「一体、何だったんだ、あれは?」
九之池は息を切らしながら、
当たり障りのない感想を述べたが、
それに答える者は誰もいなかった。
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