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森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる
気絶
しおりを挟む「いやいや、ちょっと、待って、なんでそうなるの?
いつ殺すかは、僕次第って話じゃんよう」
と九之池は、驚いたように言った。
「いえ、そうはいきません。
そこの犯罪者の所在が把握できないなら、
それは逃亡と見なされるかと」
とヘーグマンは殊更、九之池を煽るように言った。
「るっ、ルーたん、ルージェナを
犯罪者呼ばわりするなぁ!
巻き込まれただけじゃんよう」
と九之池が叫び、ヘーグマンに襲い掛かった。
ヘーグマンはひらりと躱し、九之池へ更に話しかけた。
「あの城であなたが殺害した面々はみな、
巻き込まれた方々ですよ。あなたが殺害しました。
彼女だけ特別にすることはできませんよ」
殊更、殺害という言葉を強調するヘーグマンの言葉に
九之池は、何も反論できず、同じ言葉を繰り返すだけだった。
「くそっ、くそっ、くそがぁ」
九之池の叫びが街道にこだまのように何度も響いた。
顔を涙と鼻水で濡らしならが、
叫び続けた九之池であったが、体力の限界か
心の限界かそののまま、地べたに蹲ってしまった。
「おい、おっさん、大丈夫か?」
と才籐が近づこうとすると、
無言で、ルージェナがそれを制して、
九之池に近づいた。
「九之池さん、九之池さん、大丈夫です。
誰が裏切ろうとも誰を裏切ろうとも
私はついて行きますから」
と言って、ゆっくりと背中をさすった。
「すみません、ヘーグマンさん、九之池さんを
馬車に運んで頂けないでしょうか?
荷台の方で私が介抱します」
と言って、ルージェナはぺこりと頭を下げた。
ヘーグマンは頷き、だらりと弛緩している九之池を
馬車の後方へ乗せた。
才籐は何か言いたげだったが、すまんと一言、
残して、馬に乗った。
メープルも同様に馬に乗り才籐の後を追った。
ヘーグマンとエドゥアールは馭者の席に着き、
馬車を出発させた。
「すみません、こんな事態を巻き起こすとは
思いもよりませんでした」
とヘーグマンにエドゥアールが頭を下げた。
「ふーむ、エドゥアール。九之池殿は色々と考えを
改めなければなりませんが、それには少々、
歳を取り過ぎているからか、時間がかかります。
若者に待つというのは苦痛かもしれませんが、
短兵急にそれを求めても彼の場合は駄目でしょう」
と諭すようにヘーグマンが言った。
「はっはあ。シリア卿は彼の内面に一体、
何を期待したのでしょうか?
召喚者とは言え、私にはさっぱりわかりません」
とエドゥアールが率直な意見をヘーグマンに求めた。
「魔術師としての研究対象が第一でしょうけど、
彼のうちに潜む化け物を利用して、
今の国の閉塞した状況に一石を
投じたいのでしょうね。
まあ、あの性格ですと、困りものなので、
今回の旅は、彼の成長を促すためのものですよ。
そして、シリア卿は、少なくともこの旅で
あなたにも何かしらの成長を
期待しているのは確かでしょう」
ヘーグマンは普段の温厚な表情でなく、
真剣そのものでエドゥアールの問いに答えた。
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