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森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる

いらいらが募る

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翌朝、九之池は、朝から不機嫌だった。
そして、その不機嫌さを隠そうともせず、
周りを不快にさせていた。

「おっさん、何があったか知らねーけどよ。
ガキじゃないんだから、その態度はやめとけ」
と才籐が九之池の不快な態度を改めるように促した。

「ふん、借金をするような人間が
なに意見してるんだよ。
金を返してみろよ、ガキはおまえだろ」
と九之池は、目線をあわせずに才籐に言った。

「おい、九之池、いい加減にしろ。
これからも旅路を共にするのだぞ。
仲良くしろとは言わないが、
最低限の礼儀は弁えろよな」
とエドゥアールが窘めた。

「ふん、口ばかりで大して役にも立たないおまえが
何を偉そうに指図しているんだよ。無能者が。
たまには強者をたおしてみろよ」
と九之池は、再び目線をあわせずに
才籐とエドゥアールに言った。

エドゥアールは、口をパクパクさせて、
真っ青になっていた。戦闘に関しては、
認めたくはないが、九之池の言っていることに
一理あると感じたからであった。

「気ままに旅をしてみるのもいいかもしれないな。
良くわからない目的でキリアまで行くのも面倒だし、
ここのメンバーで本気になった僕を
止められないでしょう」

「才籐、この男にいくらの借金をしたのですか?」
とメープルが才籐に問うた。

「えっ、まあ、金貨3枚です」
とぼそぼそと目を泳がせて、才籐は言った。

「はぁぁ、少しは成長の跡を示してください。
ビルギットの店ですね。まあ、いいでしょう。
あなたの戦い方にはあれが必要でしょうからね。
ルナリオン様にお伝えして、必要な経費として
認めて頂きます。
では、九之池さん、金貨3枚どうぞ」
と言って、メープルは金貨を九之池へ放り投げた。

「これで、借金は清算を出来ましたね。
次はエドゥアールさんの件ですね。
言うまでもなく人には適材適所がありますから、
あなたには国家間の交渉事は無理でしょう。
棒を振り回すだけが仕事ではありませんよ。
あなたも分かっているでしょう」
と冷たく突き放すように九之池へ言った。

九之池は目を左右に泳がせながら、
相変わらず、目線を合わせずに何かをメープルに言おうとすると、

「話すときは、人の目を見るっ!」
とメープルに一喝された。

「ひっ」
と一言、そして続けた。

「黙れよう。野営の警戒中にこいつら、
着衣を乱れさせて、いやらしいことしながら、
俺の悪口を言って、お楽しみだったんだぞ。
俺のことを批判する前にこいつらを怒れよ。
おかしいだろうよ」
と九之池が我慢できずに話を盛って言った。

「いや、ちょっと、まてまて、おっさん。
おかしいぞ。お楽しみは全くなかったぞ。
そもそもそんなことをしてたら、
司祭の光銀の右腕の拳が落ちてくるわ」
と才籐が言うと、

「ふん、陰口を言っていたのは事実でしょ」
と開き直る九之池に才藤は、
「ってか陰口というか、事実じゃん。
俺の率直な印象を話しただけ。
おっさんだって、向こうの世界じゃ、
絶対に俺と話すことなんてないでしょ」
と言った。

「ふん、どうでもいいわ、そんなこと。
俺が不快になったのは事実でしょう。
ここからは自由気ままな旅を楽しませて貰いますよ」
と九之池が声高らかに宣言した。

この様子をルージェナは心配そうに見つめ、
ヘーグマンは我関せずといった風に見つめていた。

 「ルーたん、どうする?一緒に来る?それとも残る?」
と九之池が声をかけると、

「ふーむ、これは少々困ったことになりましたな。
ルージェナさんは、貴重な我が国の戦力に
成長しつつありますが、反逆の罪は
償っていただきませんと、
我が主が困った立場に追い込まれてしまいます。
九之池殿、自由気ままに旅をするならば、
ここで、ルージェナさんを殺してください。
それが条件です」
とほっほっほっと笑いながら、九之池に提案した。

メープルと才籐は一体、何のことだろうと、
突然のことに驚きを隠せなかった。
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