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森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる

旅の打ち合わせ

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 九之池とルージェナはビルギットの店にいた。
いまだにお尻に違和感があるが、
依頼していた魔術を封印した魔晶、
魔石を受け取るためだった。

「九之池、ほれ、これがあの青い炎の槍を
封印したものだ。扱いには気を付けろよ。
間違えば、味方の方に飛翔するからな」
とビルギットが説明した。

「ビルギットさん。ありがとうございます。
これはルーたんが持っておくので、
まあ、そんなことはないでしょう」
と九之池が説明した。

「へっ?九之池さん、どういうことですか?」
予期せぬ九之池の発言にルージェナは驚きを隠せなかった。

九之池は当たり前のように
「それはそうでしょう。
僕には魔術の素養なんてないし、
どうやって発動させるの?
というよりも多分、あせって、
どっか明後日の方向に飛ばすよ。
それと、魔力が尽きたとき、
絶体絶命のときのために
ルーたんが持っておいて」
と言った。

まだ、ルージェナが何かを言おうとすると、
ビルギットが九之池の意見に賛成した。


「確かにある程度の素養がないと、
これは危険だな。
才籐の持つ石程度なら、扱いを指導できるが、
これはあの魔術を扱い慣れたやつが持つべきだよ」

「ううっ、しかし、、、」
ルージェナがなおも反論しようとした矢先、
九之池がそれを遮った。

「ルーたん、これは決定事項です。
反論は認めません。使い時は任せるよ」
めずらしく、九之池がはっきりと断言した。

「あっありがとうございます、九之池さん。
大切にします」
とルージェナが石を強く握って、伝えた。

「ほれ、このブレスレットに
はめ込んで、持っておけよ。
これはサービスだよ。
一応、若干だが心を守る祈りが込められている。
それと、九之池にはこれだ!ほれ」
と言って、じゃらじゃらと
石の入った袋をビルギットが九之池に放り投げた。

「こっこれは!もしや」
九之池は何となく言ってみた。

「くっくっくっ、ノリがいいのう、お主。
まあ、失敗作の屑石だよ。
一応、効果はあるが、薄い。
例えば、軽減の効果なら、
何となく軽くなったかな程度だよ。
そんなものは店の信用に関わるから、
おいそれと売れないし、譲れない。
まあ、旅路の途中にそれで魔術に触れて、
慣れれば、いいだろう。才籐もそうした。
詳しい発動方法や効果はルージェナに
尋ねるといいだろう」
とビルギットが言った。

「助かります、ビルギットさん。
魔術は間接的でもいいので
どうしても使ってみたかったんですよ」
と九之池は興奮して答えた。

「気にするな、今回の売り上げで、
しばらくは研究と探索に出られるから」
と満面の笑みでビルギットは答えた。

その表情を見て、九之池とルージェナは
顔を見合わせて、やはり、かなりぼられたのではと
と思った。

 ほぼ同時刻、教団本部にて、ヘーグマン、
エドゥアール、メープル、才籐が
キリアまでの旅路に関して話をするために集まっていた。

「ん?おっさんは、どうした?
司祭の料理でグロッキー状態?」
と才籐が尋ねると、

「ふん、あれは、今、魔術屋に
ルージェナと行っている。
どうやら頼んでいた石ができたらしい」
とエドゥアールが説明をした。

「仲の良いことで。
しっかし、なんであの二人は一緒にいるんだ?
ルージェナの実力なら、どこでも通用するような気が
するんだけどねー。
あのおっさんに惚れているとかないだろうし」
と才籐がおどけたように言うと、
エドゥアールが答えた。
「確かにあれに惚れる女性は稀有な存在だろう。
そして、ルージェナはその稀有な存在なのだろう」

「本当かよ。なんかあやしい魔術を使って、
公国があてがってるとかじゃないの?」
と才籐が返した。

「才籐、何てことを!あれほど、
発言には、気を付けなさいと言っているのに」
とメープルが才籐を一喝した。

「確かにあのぐずを見て、ルージェナを見れば、
そう思われても仕方なし。
しかし、そんなことはしていない」
とエドゥアールがなぜか才籐の意見に同意した。

「九之池さんにも召喚されてから、
いろいろと特異な経験をなさっていますから。
まあ、そういうことです」
とヘーグマンがこれ以上の詮索を拒絶した。

「まあ、いいけど、経路はこれでいいとして、
出発日だが、明後日でなく、5日後くらいに
した方が無難だぞ。
司祭の魚料理を食べたんだろう。
ヘーグマンさん、エドゥアールさん、
お尻がひりひりして、痛いだろう」
にやりとして才籐が言った。

「きっ貴様、なぜそんなことがわかる」
エドゥアールは詰問した。

「ふっ、経験者だからな。
あとで塗り薬を渡そうか?
塗っといたほうが無難だぞ。
よく臀部に塗り込め」
と才籐が真剣な面持ちで言った。
エドゥアールは何も言えなかったが、
この黒髪の召喚者も九之池とは
違ったタイプの屑だと心の中で断定した。

「???才籐、それはどういうことですか?」
とメープルが心底、不思議そうに尋ねた。

三者三様の微妙な表情で誰も
メープルに答える者はいなかった。

「こほん、ところで、才籐さん、
あなたにも九之池さんのような強力な力が
封印されているのですか?
そして、あなた方のいた世界では、
多くのものがあのような力を
持っているのですか?」
とヘーグマンが話題を変えた。

「いや、誰もあんな力持っていないよ。
基本的な能力はこっちの世界の住民と
同じかそれ以下かな。
遥か昔に妖怪とかと交わった
末裔の先祖返りじゃね。
それが、召喚されたことで、
発現したんだと思うよ。
俺も大した能力じゃないけど、
この世界に召喚されてから、
異常に危機感知が高くなったしね」
と才籐が説明をした。

「確かに稲生様もこの世界に召喚されて、身体能力が
上がったと言っていましたね」
メープルが補足した。

雑談3割、打ち合わせ7割程度の割合で打ち合わせは進み、
一先ず、最低限のことが決まり、終了した。
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