起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見！もふもふ生活開始の気配（原題.真説・森の獣

森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる

同郷の人

「おっおはようございます、
メープル司祭に才藤さん」
と九之池が声をかけた。
続けて、ルージェナも二人に挨拶をした。

「おはようございます、
九之池様、ルージェナさん。
ほら、才籐、挨拶をなさい」
と才籐にも挨拶をすることを
促すメープルであった。

「ぐっ、おはようごっごあいます」
何かに耐えるように挨拶をする才籐であった。

「我々も旅に同行することになりましたが、
ここにはしばらく逗留するとヘーグマンさんから
お聞きになりました。
お二人のお力を拝見したく、
我々の魔獣討伐に同行しませんか？」
とメープルが提案してきた。

「えっと、素材は頂けるのでしょうか？
アンカシオン教の巡回にタダで
お付き合いするのはご遠慮したいのですが」
と如才なくルージェナが九之池の代わりに答えた。

「ええもちろんです。
些少ですが、報酬も出します。
今日は近場になりますので、
今から準備して行けますか？」
とメープルが付け加えた。

「じゃっ今から行きますかなぁ。
ルーたん、ヘーグマンさんと
エドゥアールさんに伝えて、出発だね」
と九之池が賛同した。

「おっさん、キモ。歳考えろよな」
と才籐が突っ込むが、誰も反応せずに
遠征の準備を始めた。

帝都を離れて、しばらく移動すると、
目的地の集落に到着した。
集落の人々は、メープルと才籐を見ると、
仰ぎ見るように彼らに話しかけた。
集落の人々にとって、二人は、召喚者様と
高名な司祭様という立ち位置らしかった。
才籐は彼らの声を自然な態度で受け入れていた。

「へえ、才籐もなかなか、
人気取りはうまいですね。
九之池さんも召喚者ですから、
あのくらいはっ！」
となぜかルージェナが悔しがっていた。

「何かしらの実績があるのでしょうね。
積み重ねた徳というか結果と
アンカシオン教の召喚者とうい立場が
この村では彼の声望を高めているんですよ。
素直にすごいと思いますよ」
と九之池が言った。

「まー九之池さんがそう言うなら。
でもでも九之池さんだって、
あのくらいにはなれますっ」
と力説するルージェナだった。
盗賊襲撃の件から、どう誤解したのか、
最近、ルージェナが自分に
心酔しているようでちょっと怖い九之池だった。

村長曰く、どうも森の魔物の領域から、
村に向かって頻繁に来襲するらしく、
狩人だけでは、対処が困難だとのことだった。
できれば、真因を取り除いて欲しいとの
ことかなと九之池は推察した。

明日より、森の探索と魔物を討伐することになった。

「ルーたん、そろそろ、自分で薬は塗れるね。
布は洗うから、あとで頂戴」
とルージェナに言うと、
「薬は塗れそうですが、布はうまく巻けるか
自信がありません。明日からの探索を
考えるとしっかりと巻いておきたいのですが、
お願いできませんか？」
とルージェナがお願いをしてきた。

「うっうん、薬塗ったら、呼んでね。
部屋の外で待っているから」
と言うと、はいと返事をして、外にでた。

九之池さーんと声が聞こえたので、
部屋に入り、ルージェナの上半身の裸体を
凝視する。
そして、無の境地を発動した。
ルージェナは無表情に慣れたのか、
布のきつい、緩いを伝えるだけで、
怯えることはなくなっていた。
たまに呻き声を出すだけだった。

「ううっ、九之池さん、
少し苦しいです。お願い緩めて」
とうめき声をだしながら、希望を伝える。

部屋の外では、先ほど、ルージェナが
九之池を呼んだことを聞きつけて、
才籐が正義感と興味本位に掻き立てられて、
聞き耳を立てていた。

「あのおっさん、自分の娘くらいの
年齢の女性に何してやがる！
世界が違っても許されないぞ、くそが！」
嫉妬8割、正義感2割で、彼は行動を起こした。

九之池を締めあげようとドアを
勢いよく開けると、布を無表情で
巻く九之池と驚きに悲鳴を
上げるルージェナがいた。

　才籐は、ルージェナの透き通るような
白い肌に劣情や感動を感じるより、
九之池の感情の全く感じさせない雰囲気に
恐怖を感じ、ルージェナと同じくらいの
大きな悲鳴を上げてしまった。

九之池は全く二つの悲鳴に動じず、
布を巻く作業を進めていた。