上 下
147 / 256
森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる

プルプル

しおりを挟む
「昭和から平成を経て、令和を
過ごしましたが、才籐さんは?」
と務めて明るく言った。

「おいおい、ほぼ同じじぇねーか!
俺は平成生まれで令和の時にこっちに来る羽目に。
ってか人をねじ切るってなんだよ」
と才籐が噛みついた。

「意識はありませんでしたが、
そういうこともあったようです」
と改めて務めて明るく言ったが、
どうもうまくいっていないようで、
卑屈な笑いに受け取られたようだった。

「どんだけ卑屈なんだよ。
まあ、いいけど。殺しちまったか!
もう、戻ることは諦めて、こっちの世界に
なじんだ方が良さそうだな。
あの国には人殺しなんて、ほとんどいないしな」
と才籐の言葉を九之池は聞いて、
人殺しという言葉に声が詰まった。

才籐はさらに続けて、言った。
「おっさん、これからどうするんだ?
見た感じ、あの時代の技術をこの世界で
再現できるような才能や経験もなさそうだけど?」

九之池は話題が変わったことにほっとして、
「ひとまず、キリア王朝にいる召喚者の方に
会うつもりです」
と言った。

「あいつに会うのか!多分、むかつくぞ。
がちでむかつくぞ。すかした野郎だからな。
ちょっとこっちの世界で成功したくらいで、
調子に乗んなっての」
と才籐がまだ、見ぬ英雄を罵った。
そして、その直後、彼の脳天に白銀の腕が
メープル司祭より振り下ろされた。

大司教がほほっと笑いながら、
「このメープル司祭は森の獣の討伐の際に
その英雄に協力したのですじゃ。
そのため、彼のことを詳しく知りたいならば、
才籐より、メープルに伺うのが良いかと」

「けっ、ふられた恨みと奴の嫁への
罵詈雑言しか聞けないけどな」
と痛みを堪えながら、才籐が言った。

「稲生様は、非常な人格者です。
才籐がこのように話せるようになったのも
少なからず、彼のお力添えがあったからです。
最初は毎日のように泣きはらして、大変でした」
と澄ました顔でとんでもない情報をさらす
鬼のような司祭であった。

「なっ泣いてなんかないし、
へっ変なこと言う司祭様だなぁ」
明らかに動揺する才籐であった。

「さてさて、大司教様、今後の旅路に
アンカシオン教のご加護を
期待してもよろしいのでしょうか?」
とヘーグマンが尋ねた。

「ほっほっほぉ、召喚者様の御心のままに。
のちほど、具体的にメープル司祭と
お話しして頂きましょうな」
と言って、メープル司祭に面会を
終了するよう目配せをした。

「召喚者たる九之池様に俗事で
手を煩わせるわけにはいきませんね。
では、ヘーグマンさんとエドゥアールさんに
後程、打ち合わせをお願いします」
と体よく打ち合わせできそうなメンバーを
メープル司祭は選択した。

「くくっ、まあ、このおっさんじゃ
打ち合わせになんねーもんな」
と才籐がげらげら笑った。

無言でメープルの右腕が才籐を打ち据えた。
そして、言った。
「では、一旦、ご退出願いましょうか?
宿泊施設はこちらでご紹介します」

「これは、助かります」
如才なくエドゥアールが答えた。

大司祭を除く面々で正門に行き、
別れの挨拶を交わした。

「おっさん、死ぬなよ。
あの世界のことを話せるのは、
あんたと奴だけだから」
と去り際に寂しそうに才籐は
言い残して、去った。

九之池たちは一旦、宿泊施設に向かい、
少し休息し、ヘーグマンとエドゥアールが
打ち合わせに向かい、九之池とルージェナは
施設でまったりと過ごした。

次の日、なぜか彼とメープル司祭が
馬で九之池たちの馬車と一緒に
同行することになっていた。
宿泊施設の前で改めて会った才籐は、
なぜか顔を真っ赤にして俯いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...