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森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる
説教
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二人の野盗は、剣と槍でルージェナに襲いかかった。
ルージェナは彼らの攻撃を避けた。
九之池は、馬車より外の状況を呆然と眺めていた。
動けない。どうしても動けない。
ここが安全な訳ではないのに動けなかった。
ただただ、眺めているだけだった。
「九之池さん、馬車に隠れください」
と野盗二人と対峙しているルージェナが叫んだ。
ルージェナが一瞬、九之池に目を取られた瞬間、
槍の先端がルージェナの左肩を突き刺した。
「よっしゃー!女、取った!」
と言って狂喜する野盗。
槍の穂先に即効性の毒でも塗ってあったのか、
その場にルージェナは、うずくまってしまった。
そして、そのルージェナのローブを掴み、
力任せに振り回して、地面に叩きつけた。
ルージェナの反応が鈍いと分かると野盗の二人は、
九之池の方に向かってきた。
ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、
九之池の頭の中がその光景を何度も再生していた。
立ち上がると、ころりと馬車より落ちた。
野盗は、九之池を蹴り上げて、反応を確かめた。
蹴られた九之池は、仰向けになった。
九之池の眼は、ルージェナを捉えていた。
「九之池さん、九之池さん、にげて」
絞り出すような声でルージェナが言いい、
そのまま、意識を失った。
その声が聞こえた九之池の中で何かが蠢いた。
そして、肌が鈍い赤銅色に変わりはじめ、
身体中に高い熱がこもり、頭に二本の角が生え始めていた。
九之池は、石を握り、すさまじい速度で、
弾ける様に立ち上がり、手に持った石を振り上げて、
野盗の頭をたたき割った。
もう一人の野盗が剣を振り上げた瞬間、
九之池は、石を投げつけた。
胸にこぶし大の穴が開いた野盗はそのまま、
倒れた。二人とも即死だった。
九之池は、ルージェナに近づき、
そのまま、力尽き、近くに倒れた。
大半の死傷者を出して、野盗の群れは、逃散した。
「やれやれ、暗いですが、あの二人を馬車に乗せて、
この場を離れますかな。
とりあえず、近くの検問所まで走りますかな。
エドゥアール、あの二人の介護を頼みます」
とヘーグマンは、言った。
「この連中はどうしますか?
まだ、息のある奴を連れて、事情を聴きだしますか?」
「無駄です。ここに残された連中は、
もはや回復の見込みはありません。
検問所の兵に事情を話して、
それなりの対応して頂きましょう」
「九之池のほうは、前に何度かこの状況を
見ているから、大丈夫かと思いますが、
こちらの娘の方は厄介ですね」
とルージェナを観察して、エドゥアールが言った。
「麻痺毒でしょう。捕まえて、売るなり、
楽しむなりを考えていたのでしょうな。
検問所で薬師に相談しましょう。
左肩の処置をよろしくお願いします」
と言って、ヘーグマンは、出発の準備を始めた。
翌日の5刻の頃に九之池は検問所の
ベッドで目が覚めた。
隣で苦しそうに寝ているルージェナが眼に入った。
九之池はその姿に眼を背け、頭を抱えていると、
ルージェナが絶え絶えに声をかけてきた。
「九之池さん、ごめんなさい。
また、たすけられちゃった。ごめんなさ」
と言って、苦しそうにまた、眼を閉じた。
九之池はその姿を見ていると、自分の弱さを
見せつけられているようで耐えられなくなり、
この部屋から逃げ出そうとした。
そして、ドアの方に目を向けるとヘーグマンがいた。
「逃げることはかないませぬ。
あなたの能力やひとなりは、我が公国の高官たちに
広く知られています。
公国初の召喚者として多くの高官に観察さているのですよ。
そして、無能で不必要と彼らは判断しています」
「ううっ」
としか九之池は言えなかった。
「大公は彼らの反対を押し切り、
今回の件を進めました。
そしてシリア様は、あなたが他の召喚者と
会うことで刺激を受けて、停滞している公国に
何かをもたらすことを期待しています」
「もしも逃げようとしたり、
期待に沿えなかったら?」
九之池は思い切って聞いてみた。
「私の判断で、あなたを倒します。
昨夜のあの異常な力を発揮されると私でなくば、
倒せないでしょうから。
それは、シリア様より仰せつかっていますので。
その年齢で変わるのは難しいでしょうが、
変わりなさい。
この世界であなたが逃げ出す場所などは
ないのですから」
諭すようにヘーグマンは、九之池に言った。
九之池は、ルージェナを見ながら、頷いた。
ルージェナは彼らの攻撃を避けた。
九之池は、馬車より外の状況を呆然と眺めていた。
動けない。どうしても動けない。
ここが安全な訳ではないのに動けなかった。
ただただ、眺めているだけだった。
「九之池さん、馬車に隠れください」
と野盗二人と対峙しているルージェナが叫んだ。
ルージェナが一瞬、九之池に目を取られた瞬間、
槍の先端がルージェナの左肩を突き刺した。
「よっしゃー!女、取った!」
と言って狂喜する野盗。
槍の穂先に即効性の毒でも塗ってあったのか、
その場にルージェナは、うずくまってしまった。
そして、そのルージェナのローブを掴み、
力任せに振り回して、地面に叩きつけた。
ルージェナの反応が鈍いと分かると野盗の二人は、
九之池の方に向かってきた。
ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、
九之池の頭の中がその光景を何度も再生していた。
立ち上がると、ころりと馬車より落ちた。
野盗は、九之池を蹴り上げて、反応を確かめた。
蹴られた九之池は、仰向けになった。
九之池の眼は、ルージェナを捉えていた。
「九之池さん、九之池さん、にげて」
絞り出すような声でルージェナが言いい、
そのまま、意識を失った。
その声が聞こえた九之池の中で何かが蠢いた。
そして、肌が鈍い赤銅色に変わりはじめ、
身体中に高い熱がこもり、頭に二本の角が生え始めていた。
九之池は、石を握り、すさまじい速度で、
弾ける様に立ち上がり、手に持った石を振り上げて、
野盗の頭をたたき割った。
もう一人の野盗が剣を振り上げた瞬間、
九之池は、石を投げつけた。
胸にこぶし大の穴が開いた野盗はそのまま、
倒れた。二人とも即死だった。
九之池は、ルージェナに近づき、
そのまま、力尽き、近くに倒れた。
大半の死傷者を出して、野盗の群れは、逃散した。
「やれやれ、暗いですが、あの二人を馬車に乗せて、
この場を離れますかな。
とりあえず、近くの検問所まで走りますかな。
エドゥアール、あの二人の介護を頼みます」
とヘーグマンは、言った。
「この連中はどうしますか?
まだ、息のある奴を連れて、事情を聴きだしますか?」
「無駄です。ここに残された連中は、
もはや回復の見込みはありません。
検問所の兵に事情を話して、
それなりの対応して頂きましょう」
「九之池のほうは、前に何度かこの状況を
見ているから、大丈夫かと思いますが、
こちらの娘の方は厄介ですね」
とルージェナを観察して、エドゥアールが言った。
「麻痺毒でしょう。捕まえて、売るなり、
楽しむなりを考えていたのでしょうな。
検問所で薬師に相談しましょう。
左肩の処置をよろしくお願いします」
と言って、ヘーグマンは、出発の準備を始めた。
翌日の5刻の頃に九之池は検問所の
ベッドで目が覚めた。
隣で苦しそうに寝ているルージェナが眼に入った。
九之池はその姿に眼を背け、頭を抱えていると、
ルージェナが絶え絶えに声をかけてきた。
「九之池さん、ごめんなさい。
また、たすけられちゃった。ごめんなさ」
と言って、苦しそうにまた、眼を閉じた。
九之池はその姿を見ていると、自分の弱さを
見せつけられているようで耐えられなくなり、
この部屋から逃げ出そうとした。
そして、ドアの方に目を向けるとヘーグマンがいた。
「逃げることはかないませぬ。
あなたの能力やひとなりは、我が公国の高官たちに
広く知られています。
公国初の召喚者として多くの高官に観察さているのですよ。
そして、無能で不必要と彼らは判断しています」
「ううっ」
としか九之池は言えなかった。
「大公は彼らの反対を押し切り、
今回の件を進めました。
そしてシリア様は、あなたが他の召喚者と
会うことで刺激を受けて、停滞している公国に
何かをもたらすことを期待しています」
「もしも逃げようとしたり、
期待に沿えなかったら?」
九之池は思い切って聞いてみた。
「私の判断で、あなたを倒します。
昨夜のあの異常な力を発揮されると私でなくば、
倒せないでしょうから。
それは、シリア様より仰せつかっていますので。
その年齢で変わるのは難しいでしょうが、
変わりなさい。
この世界であなたが逃げ出す場所などは
ないのですから」
諭すようにヘーグマンは、九之池に言った。
九之池は、ルージェナを見ながら、頷いた。
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