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森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる
対峙する面々
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九之池は、拝謁後のことを覚えていなかった。
とりあえず、ルージェナに連れられて、シリア邸に戻り、
二日後には、馬車に乗ってキリアに向かって出発した。
九之池は、塞ぎ込んでいたが、
何とか意識は回復していた。
馬車に揺られながら、自己嫌悪に陥り、
そして、不貞腐れて、まともな会話を
拒絶していた。
旅は、合計4名で九之池、
ルージェナ、エドゥアール、そして、
シリア卿に昔から仕える老執事の
合計4名であった。
馭者は主に老執事が行い、
エドゥアールが補助していた。
「まったくあのぐずの醜態のせいで、
とんだとばっちりですね。貴重な時間をやつのために
使うと思うと非常に腹正しい」
と馭者の横で、愚痴を言うエドゥアールだった。
「エドゥアール、あなたには経験が足りません。
それではシリア様を助けることはできまいて。
この旅を通じて、いろいろと勉強してきなさいとの
シリア様のお気持ちを汲みなさい。
妄信しているだけでは、決してお役には立てませぬぞ。
もっと見聞・見識を広げない」
と窘める老執事であった。
「ヘーグマンさんが言うのなら、
まあ、そうなんでしょうが、
後ろのあれは何とかなりませんか?
もう何日なりますか!あの態度は」
「自分自身で立ち上がるしかありません。
いい歳をした方ですから、
そのうち、回復するでしょう」
とヘーグマンは、楽観的に答えた。
「いやいや、ヘーグマンさんは、
奴をまたあまり知らないからそう、
言えるのですよ」
とむきになって答えるエドゥアールだった。
ヘーグマンは無言で微笑み、手綱を握り締め直した。
彼らの会話が聞こえたのか、
九之池は、勝手なことを言いやがってと心の中で罵った。
そもそも九之池の人生において、
逃げ出せば野垂れ死にするような状況はなかった。
仕事や人間関係が嫌になれば、辞めて新しい派遣先を
紹介して貰えば、それで済んでいた。
極めて受け身に人生を過ごしていた。
そのため、少々、この世界の状況は
九之池にとって、過酷であった。
「九之池さん、まずは、ベルトゥル公国から、
バルザース帝国に向かいます。
ここはアンカシオン教が盛んで、
召喚者を讃える方が非常に多い国です。
ちょっと、変わった魔物や魔獣も生息しています。
また、素材を集めましょうね」
とルージェナはやさしく声をかけた。
九之池は彼女を取り巻く事情から、
自分の傍にいるのだろうと
邪推するもその心遣いに感謝できた。
声を出すのも苦しいが、強張る顔で無理に
微笑もうとして、失敗し、何とか頷いた。
ルージェナはその反応に都度、微笑み、
いつも少しずつ頑張りましょうねーと言った。
ベルトゥル公国は、3か国の大国に囲まれており、
陸上交易の中継地点として、それなりに賑わい、
街道の治安維持にも力を入れていた。
街道は商人の往来が多く、野盗の類は
討伐しても尽きることはなかった。
バルザース帝国との国境付近で
夜営をしていると、突然、矢と礫が幾十も
彼らに降りかかってきた。
しかし、それらは、九之池たちはおろか
馬車にすら届くことなく、地面に落ちた。
松明を持った30人ほどの集団は即座に
弓や礫から剣や槍、斧に持ち替えて、
九之池たちの馬車に無言で殺到してきた。
「かなり訓練されていますね。これは、困りましたな」
とその発言とは裏腹にヘーグマンは、余裕を持って、
刃渡り1.5mほどの巨大な剣を両手で構えて、迎え撃った。
刃は、夜の星々の灯りを照り返し、蒼白く輝いていた。
エドゥアールは野盗が殺到してきているにも関わらず、
「おおっ久々に神象兵器にも劣らぬと
言われたこの剣をまた、見られるとは!」
と感動していた。
ルージェナは新たに購入した杖を構えると、
何事か呟いていた。
「エドゥアール、剣に見入っている場合ではありません。
ルージェナな初撃を打ち出したら、行きますよ」
とヘーグマンは言った。
エドゥアールは無言で頷くと、レイピアを構えた。
野盗の群れの中央から、火柱が幾本も立ち上がり、
幾人かの野盗を焼き殺した。即死であろう。
悲鳴も上げずに燃え上がっていた。
直撃を避けた幾人かの野盗が火にくるまれ、
苦悶の呻きをあげていた。
ヘーグマンは、その直後、無言で
野盗の群れに単騎で突っ込んでいった。
ヘーグマンの一振りは、野盗の武器ごと切り裂き、
一振りごとに野盗は切り裂かれていた。
そして、エドゥアールもそれに続いた。
二人が飛び出し、二人が倒し逃した3人ほどが
馬車の付近に近づいて来た。
ルージェナがそのうちの一人に火球を見舞った。
その野盗は炎に包まれ、のたうちまわっていた。
ルージェナは杖を構えて、二人と対峙した。
とりあえず、ルージェナに連れられて、シリア邸に戻り、
二日後には、馬車に乗ってキリアに向かって出発した。
九之池は、塞ぎ込んでいたが、
何とか意識は回復していた。
馬車に揺られながら、自己嫌悪に陥り、
そして、不貞腐れて、まともな会話を
拒絶していた。
旅は、合計4名で九之池、
ルージェナ、エドゥアール、そして、
シリア卿に昔から仕える老執事の
合計4名であった。
馭者は主に老執事が行い、
エドゥアールが補助していた。
「まったくあのぐずの醜態のせいで、
とんだとばっちりですね。貴重な時間をやつのために
使うと思うと非常に腹正しい」
と馭者の横で、愚痴を言うエドゥアールだった。
「エドゥアール、あなたには経験が足りません。
それではシリア様を助けることはできまいて。
この旅を通じて、いろいろと勉強してきなさいとの
シリア様のお気持ちを汲みなさい。
妄信しているだけでは、決してお役には立てませぬぞ。
もっと見聞・見識を広げない」
と窘める老執事であった。
「ヘーグマンさんが言うのなら、
まあ、そうなんでしょうが、
後ろのあれは何とかなりませんか?
もう何日なりますか!あの態度は」
「自分自身で立ち上がるしかありません。
いい歳をした方ですから、
そのうち、回復するでしょう」
とヘーグマンは、楽観的に答えた。
「いやいや、ヘーグマンさんは、
奴をまたあまり知らないからそう、
言えるのですよ」
とむきになって答えるエドゥアールだった。
ヘーグマンは無言で微笑み、手綱を握り締め直した。
彼らの会話が聞こえたのか、
九之池は、勝手なことを言いやがってと心の中で罵った。
そもそも九之池の人生において、
逃げ出せば野垂れ死にするような状況はなかった。
仕事や人間関係が嫌になれば、辞めて新しい派遣先を
紹介して貰えば、それで済んでいた。
極めて受け身に人生を過ごしていた。
そのため、少々、この世界の状況は
九之池にとって、過酷であった。
「九之池さん、まずは、ベルトゥル公国から、
バルザース帝国に向かいます。
ここはアンカシオン教が盛んで、
召喚者を讃える方が非常に多い国です。
ちょっと、変わった魔物や魔獣も生息しています。
また、素材を集めましょうね」
とルージェナはやさしく声をかけた。
九之池は彼女を取り巻く事情から、
自分の傍にいるのだろうと
邪推するもその心遣いに感謝できた。
声を出すのも苦しいが、強張る顔で無理に
微笑もうとして、失敗し、何とか頷いた。
ルージェナはその反応に都度、微笑み、
いつも少しずつ頑張りましょうねーと言った。
ベルトゥル公国は、3か国の大国に囲まれており、
陸上交易の中継地点として、それなりに賑わい、
街道の治安維持にも力を入れていた。
街道は商人の往来が多く、野盗の類は
討伐しても尽きることはなかった。
バルザース帝国との国境付近で
夜営をしていると、突然、矢と礫が幾十も
彼らに降りかかってきた。
しかし、それらは、九之池たちはおろか
馬車にすら届くことなく、地面に落ちた。
松明を持った30人ほどの集団は即座に
弓や礫から剣や槍、斧に持ち替えて、
九之池たちの馬車に無言で殺到してきた。
「かなり訓練されていますね。これは、困りましたな」
とその発言とは裏腹にヘーグマンは、余裕を持って、
刃渡り1.5mほどの巨大な剣を両手で構えて、迎え撃った。
刃は、夜の星々の灯りを照り返し、蒼白く輝いていた。
エドゥアールは野盗が殺到してきているにも関わらず、
「おおっ久々に神象兵器にも劣らぬと
言われたこの剣をまた、見られるとは!」
と感動していた。
ルージェナは新たに購入した杖を構えると、
何事か呟いていた。
「エドゥアール、剣に見入っている場合ではありません。
ルージェナな初撃を打ち出したら、行きますよ」
とヘーグマンは言った。
エドゥアールは無言で頷くと、レイピアを構えた。
野盗の群れの中央から、火柱が幾本も立ち上がり、
幾人かの野盗を焼き殺した。即死であろう。
悲鳴も上げずに燃え上がっていた。
直撃を避けた幾人かの野盗が火にくるまれ、
苦悶の呻きをあげていた。
ヘーグマンは、その直後、無言で
野盗の群れに単騎で突っ込んでいった。
ヘーグマンの一振りは、野盗の武器ごと切り裂き、
一振りごとに野盗は切り裂かれていた。
そして、エドゥアールもそれに続いた。
二人が飛び出し、二人が倒し逃した3人ほどが
馬車の付近に近づいて来た。
ルージェナがそのうちの一人に火球を見舞った。
その野盗は炎に包まれ、のたうちまわっていた。
ルージェナは杖を構えて、二人と対峙した。
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