起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた

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森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる

久々のシリア邸

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1週間ほどして、シリア卿から
了解の旨の連絡が来た。

「ちっ、明日にその娘を連れて、公都に戻る」
と言い、エドゥアールは叩きつけるように扉を閉めていった。

「うーん、なぜ、王都とか皇都、帝都と
言わないのかな。微妙な言い回しだよね」
九ノ池はエドゥアールの態度に慣れたせいか、
気にも止めずにルーたんに話しかけた。

「それはですね、周辺諸国が強力で
気を使っているかです。
周りの国より一段、立ち位置を
低く見せるための涙ぐましい努力ですよ」
と説明をルージェナがした。

 九之池は、連日、この世界の理に
ついてルージェナから教授して貰っていた。
勘の鈍い九之池は、何度もルージェナを
呆れさせたり、怒らせていたが、
それなりにこの世界について、知ることができた。

 ルージェナは憂鬱な表情を見せるだけで、
シリア邸への道中は何事もなく過ぎた。
ルージェナの表情を盗み見るだけで、
何もできない九ノ池であった。

 シリア卿の邸宅に到着すると、
エドゥアールがさも嬉しそうに
「あーこれで、やっとこの男から解放される」
と言った。

「くくっ、そうはいきませんよ。
僕があなたを今後の世話役として、
是非ともと、シリア卿に依頼しますので。
これからも楽しく一緒に過ごしましょう」
と九之池もさも嬉しそうに言った。

「きっ貴様、そんなことしたら、
ただではすまさんぞ。絶対にやめろ」

「くくくっ、それが人に物を頼む態度ですかねぇ」

「くそ、絶対にやめて頂けませんか」
悔しそうにエドゥアールが頭を下げた。

「九之池さん、そんな気もないのですから、
そろそろ、お終いにしないと、
シリア卿の面会に遅れますよ」
とルージェナがフォローした。

「それもそうだ!さて、このくらいにして、
執務室に向かいますかね」
真っ青な顔でにらみつけるエドゥアールを残して、
九之池とルージェナは執務室に向かった。

「これは、随分とましな顔つきになりましたな。
そして、ダルフォンソ本家のご息女ではありませんか」

ルージェナは黙って、シリア卿を睨みつけた。

「えっと、二人は知り合い?」
剣呑な雰囲気の二人の間に九ノ池は割って入った。

「貴族という階級に属していた上に
大罪を犯した一族ですからな。
それより、九之池君、君は、実に面白い」
心底愉快そうにシリア卿は笑った。

 君ときたか、君と!多少のイラつきを
感じるもひとまずは黙って聞くことにした。

「そこのご息女を君が必ず殺すんだ。
病死も事故死、自然死も許されない。
その契約で大公から、了解を得た。
もし、反故にした場合は、
それ相応の罰を受けてもらう。
そして、魔術印による契約をして貰う。
まったく、実におもしろい。
どこまでやれるか楽しませてもらうよ」

  九之池はシリア卿に促されるままに
書面の内容に目を通して、自分の血でサインをした。
保険契約や取扱説明書にありがちな事細かな内容に
あまり目を通さずに九ノ池はサインをした。
何か言いたげな表情で九之池を見るルージェナに
「ルーたん、大丈夫です。
特におかしな内容は書かれてないから」
と言った。

「まあ、その娘は然るべき魔道具があれば、
それなりの力を示すだろうから、
殺すまで戦力にするなり、性の処理にするなり、
自由にしてよろしい」

 今後のことをシリア卿に尋ねると、
特に決まっていないとのことで、
自由にしてよいとのことだった。

「愚鈍そうなあの男ではどうにも使い勝手が悪いな。
縛られていた力をもってすれば、キリア王朝に
いた獣の討伐でもさせたのだが。
どうやら、召喚者によって、数年前に
討伐されたようだ。残念なことよ」
彼らが部屋を出た後にシリア卿がそうつぶやいた。

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