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森の獣 外伝"森の獣外伝 メープル司祭の奮闘記。ああっ、早く帰りたい"
査問会
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バルザース帝国アンカシオン教本部にて、
10人ほどの前でメープルは、事の結末を報告していた。
「ふむう、召喚者を二名、失ったのは事実か」
高位に位置する者であろう一人がそう呟いた。
「失ったものは、仕方あるまい。
今現在、帝王は、キリア王朝と同じような方法で
召喚しようと躍起になっておるのう。
ところでメープル司祭、キリアの召喚者は
どのような能力を持っていたか?」
別の一人が答えた。
「身体能力が人より若干、優れているようです。
特に特異な能力に秀でてはいません。
ただし、獣を討伐する戦術の立案には、
目を見張るものがありました。
それゆえに知恵や知識は豊富であるかと。
また、黒髪に黒い瞳、茶色がかった肌、
人が傷つくのを極端に嫌がる様は、
かの老公と同じ世界の出身ではと考えられます」
メープルは、粛々と答えた。
「ふん、かの御仁と同郷か。
ひとかどの人物であれば、
是非とも迎え入れたいものよのぉ。
とりあえず、ここまで。解散」
中央に鎮座する女性が言うと、各々、席を立った。
先ほどの女性にメープルは、
自室に来るように促され、その女性の後に続いた。
彼女の執務室にて、
「ルナリオン様、ご用件とは何でございましょうか?」
とメープルは尋ねた。
「メープル司祭、稲生とやらの召喚者は、
実際のところどうなのだ?本音を聞きたい」
嘘は通用せぬ、そんな迫力を彼女から感じた。
バルザース帝国の大司教を束ねる
教区長だけにその迫力は、有無を言わせぬものがあった。
「先ほど、申し上げた通りでございます。
彼より優秀な戦士、魔術師といった召喚者様は、
いくらでもこの世界におりましょう。
ですが、あのように魅力的な方は、
なかなかお会いでいません。
私は、仕えるべき価値をあのお方に見出しました。
そして、あのお方に仕えることを誓いました。
早くキリアに戻ることを希望いたします」
メープルは、真剣な眼差しで答えた。
ルナリオン・デリアは、頭を抱えて、答えた。
「いいかメープル。恋と信仰は別物だよ。
先ほどの報告を聴いていて、もしやと思ったが、
確信に変わったよ。
よいか、メープル、召喚者は、信仰の対象であり、
それ以上でも以下としても接してはならぬ。
司祭たる者が1人に思い入れることは
禁じているであろう。教義を損なうなよ」
「なら、司祭の立場を返上いたします。
その身をもって、稲生様に仕えます」
デリアは更に頭を抱えて、諭した。
「メープル、頭を冷やせ。君にそんな行動を
取られると、非常に困る。
それこそ、稲生とやらが特別視されるだろう」
「しかし、こうしている間にもリンが
ちょっかいを出すかもしれません」
とメープルはデリアに食いつく。
「はあぁぁーこれは重症だな。
まあいい、少し休め。今後の話はそれからだ。
それより、右腕はなんとかしよう。
それと話は変わるが、ノルドは亡くなったのだな、
それとメリアムは、旅に出たのだな。それは確かか?」
「はい、ノルド様は、亡くなられました。
理由は、分りかねますが、メリアム様は、
放浪の旅に出るとのことです」
メープルは、聞かれた理由が解らずとも答えた。
「そうかそうか、メリアムのやつめ、
いまだに許せぬか。
ノルドがおらぬと暴走するやもしれぬ。
少し手を貸すかな。メープル、下がってよい。
2日後の5刻にまた、来るように」
釈然としないメープルであったが、
彼女の執務室を後にした。
10人ほどの前でメープルは、事の結末を報告していた。
「ふむう、召喚者を二名、失ったのは事実か」
高位に位置する者であろう一人がそう呟いた。
「失ったものは、仕方あるまい。
今現在、帝王は、キリア王朝と同じような方法で
召喚しようと躍起になっておるのう。
ところでメープル司祭、キリアの召喚者は
どのような能力を持っていたか?」
別の一人が答えた。
「身体能力が人より若干、優れているようです。
特に特異な能力に秀でてはいません。
ただし、獣を討伐する戦術の立案には、
目を見張るものがありました。
それゆえに知恵や知識は豊富であるかと。
また、黒髪に黒い瞳、茶色がかった肌、
人が傷つくのを極端に嫌がる様は、
かの老公と同じ世界の出身ではと考えられます」
メープルは、粛々と答えた。
「ふん、かの御仁と同郷か。
ひとかどの人物であれば、
是非とも迎え入れたいものよのぉ。
とりあえず、ここまで。解散」
中央に鎮座する女性が言うと、各々、席を立った。
先ほどの女性にメープルは、
自室に来るように促され、その女性の後に続いた。
彼女の執務室にて、
「ルナリオン様、ご用件とは何でございましょうか?」
とメープルは尋ねた。
「メープル司祭、稲生とやらの召喚者は、
実際のところどうなのだ?本音を聞きたい」
嘘は通用せぬ、そんな迫力を彼女から感じた。
バルザース帝国の大司教を束ねる
教区長だけにその迫力は、有無を言わせぬものがあった。
「先ほど、申し上げた通りでございます。
彼より優秀な戦士、魔術師といった召喚者様は、
いくらでもこの世界におりましょう。
ですが、あのように魅力的な方は、
なかなかお会いでいません。
私は、仕えるべき価値をあのお方に見出しました。
そして、あのお方に仕えることを誓いました。
早くキリアに戻ることを希望いたします」
メープルは、真剣な眼差しで答えた。
ルナリオン・デリアは、頭を抱えて、答えた。
「いいかメープル。恋と信仰は別物だよ。
先ほどの報告を聴いていて、もしやと思ったが、
確信に変わったよ。
よいか、メープル、召喚者は、信仰の対象であり、
それ以上でも以下としても接してはならぬ。
司祭たる者が1人に思い入れることは
禁じているであろう。教義を損なうなよ」
「なら、司祭の立場を返上いたします。
その身をもって、稲生様に仕えます」
デリアは更に頭を抱えて、諭した。
「メープル、頭を冷やせ。君にそんな行動を
取られると、非常に困る。
それこそ、稲生とやらが特別視されるだろう」
「しかし、こうしている間にもリンが
ちょっかいを出すかもしれません」
とメープルはデリアに食いつく。
「はあぁぁーこれは重症だな。
まあいい、少し休め。今後の話はそれからだ。
それより、右腕はなんとかしよう。
それと話は変わるが、ノルドは亡くなったのだな、
それとメリアムは、旅に出たのだな。それは確かか?」
「はい、ノルド様は、亡くなられました。
理由は、分りかねますが、メリアム様は、
放浪の旅に出るとのことです」
メープルは、聞かれた理由が解らずとも答えた。
「そうかそうか、メリアムのやつめ、
いまだに許せぬか。
ノルドがおらぬと暴走するやもしれぬ。
少し手を貸すかな。メープル、下がってよい。
2日後の5刻にまた、来るように」
釈然としないメープルであったが、
彼女の執務室を後にした。
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