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森の獣 1章 稲生編

後始末2

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「リン、メープルさんが目を覚ましました。
何か食事を用意したいのですが?」
執務室で業務中のリンへお願いした。
「ふむ、稲生はあの神官に甘いなぁ。
まあ、いいけど。あれが今の状態ならいいかなぁ」
リンは、若干、不満げだが、
何かを思案しているようであった。

稲生は、あれとは、以前頂いた昆虫の事と思い、
体力回復には致し方なしと思い、改めてお願いした。
「じゃあ、用意するから、一緒に厨房に来てくれ」
稲生とリンは連れ立って厨房に向かった。

その途中、リンは
「バルザース帝国の生き残りは、
獣の討伐に参加できるだろうか?」
と尋ねてきた。

「多分、無理でしょうね。獣の恐怖が
心傷になっているかと。
例え、一緒に向かったとしても獣を前にして、
恐慌をきたすでしょうね。それはマイナスになります」
と答える稲生。

「となると情報を取れるだけ取ったら、
バルザース帝国にお帰り願うかな」

「そうですね。正式な外交ルートが
絡んでいますから、それが一番、
適切な処置かと思います」

「稲生は、こうして話していると優秀なのだがな。
召喚者には、異能な能力だけでは
計り知れない知性や経験があるんだね。
稲生は、前世界では、国政や軍に
携わる優秀な人物だったに違いないな」
と壮大な勘違いをしているリンであった。

「いえ、単なる契約社員でしたよ。
日々の楽しみも特になく、
何となく生活していました。
あまり、話すと待遇が悪くなりそうなので
ご勘弁を」
稲生は、買い被られても困ると思い、
簡潔に伝えた。
そうしているうちに厨房につき、調理を始めるリン。

「契約社員?なんだそれは。
まあ、その国の役職のなにかなのだろうな。
稲生は、あのその、あれだ、
将来を共にする女性や恋仲の人はいたのか?」
リンは、虫をゴリゴリ擂り潰しながら、
遠慮がちに聞いてきた。

稲生は、その光景をなるべく
見ないようにして即答した。
「いえ、全くいません。
あまり、出会いに恵まれていなかったもので。
ところでリン、以前、私が食べた物も
これと同じ物ですか?」

リンは、擂り潰した虫を
煮立った紫色の液体の入った鍋に投入した。
「多少、昆虫の種類は違うが、
ほぼ同じだ。稲生も食べるか?」

稲生は、その光景をなるべく見ないようにして、
またしても即答した。

「いえ、今は大丈夫です」

「そうか、私は、一旦、執務室へ戻るので、
食事は、稲生が運んでくれ。
その方が喜ぶだろう。弱っているからといって、
襲いかかるようなことはするなよ」
リンは、食器類を準備すると、
念押して、執務室に戻っていった。

稲生は、軽く一礼をすると、食事を
メープルの元へ運んで行った。
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